俺は俺の部屋の前で戸を叩きながら甘い声を出している病んだ豊穣神の事を思う。
何であんなに病んでしまったんだろう。前は普通に芋の臭いをホコホコさせている恵みの神様だったのに。
最近では、部屋に帰る度に俺の部屋は焼き芋屋と化している。
しかも、病みが進む具合に臭いが濃くなっているような気がする。

正直、こうして毎日ストーキングされると頭がおかしくなりそうだ。
ストーカー被害によるノイローゼで自殺した店の先輩の気持ちが、今更ながら理解出来た。

考えろ、どうにかして俺から彼女を遠ざけないと。
彼女とは別方面に俺の精神が病んでしまう……。

…………そうだ、彼女を傷付け、突き放すしかない! これこそ逆転の発想だ。
こうすれば彼女だって、自分が如何に嫌な男に執着してたか理解してくれる筈。
と言うよりも、一刻も早く突き放さないと俺がどうにかなりそうだ。

俺はこの郷に唯一持ち込めた外界の品物、高級スーツと銀縁眼鏡、革靴を押し入れから引っ張り出した。

丹念に髪を梳き、オールバックに纏める。
もう着る事はないと諦めつつも、手入れを欠かさなかったオーダーメイドのスーツを着込んだ。
ポケットに入っただった香水を一吹き、銀縁眼鏡をかけてクールな笑みを浮かべてみる。

……よし、悪っぽいホスト完成。
いざ、前に店で見かけた悪い野郎の真似事をしてみようか。




妖怪の山にある穣子の家に乗り込んだ俺は、食事中の卓袱台の上を蹴り1つで薙ぎ払った。
暫し意味も無く暴れ、室内を破壊し尽くし、何事かと出て来た静葉を蟹ばさみで蹴り倒した上で締め墜とした。
家を破壊するわ姉を失神させるわの暴挙を働いた俺を、穣子はポカンと口を開けて見ていた。
目と口を開いている彼女に対し、片足をどっかりとテーブルの上に乗せ、不敵な笑みを浮かべる。

「おい芋女、お前に頼みがある」

俺は必殺の言葉を放つ。
これが穣子を自分から遠ざける会心の一撃である事を確信して。
何せ、これは俺が知る限り史上最低最悪のプロポーズの言葉なのだから!




「穣子……お前さえよければ俺の生涯の肉便器にしてやってもいいぞ……いや、なれ!!」



「はいっ!」





俺の眼鏡が、ずるりと床に落ちた。





その日、俺の部屋に俺専用の便器が設置された。
俺は毎日その芋臭い(ry



~幻想郷の抑止力が発動しました~

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最終更新:2011年02月11日 21:45