「あなた…そろそろ、自分の限界を感じてるんじゃないかしら?」

「ええ勿論」

永遠亭の一室…一組の男女が、椅子に座り向かい合っている

「彼女と一緒に生活することは、しばらくやめた方がいいわ…ただでさえ「それはできません」…」

八意永琳の宣告を男は遮る

「…私の薬でも限界はある、それこそ、強烈な副作用、激痛に体中が襲われる代わりに驚異的な核汚染耐性を得る…そんな、劇薬同然の薬ですらもう、抑えられないわ」

「…でも、私は彼女の側にいなければなりません、副作用には慣れました」

妖怪が痛みのあまり廃人になるような激痛の薬を、彼は十年間服用し続けてきた

「でも、このままじゃ貴方が死んでしまうわ、彼女はきっとそれに耐えられない」

男、○○は、地霊殿にて十数年、霊烏路空と同棲を続けた
彼女自身が発する放射能に体を蝕まれ続けながら…

「…空は、人里で迫害され地底に追いやられた俺をかくまってくれました。私を受け入れてくれた空や、地霊殿の住人に私は感謝しています」

彼は、いったん言葉を区切り、目頭を押さえる

「そんな彼女から離れるなど、私にはできません、彼女は、私が料理を褒めると笑います、抱きしめると笑います、撫でると笑います…私は彼女がたまらなく愛おしい、それにね」

男は顔を上げた、瞳には凶器が映る

「彼女そのものが、今の私の体には染み着いている…汚染されてもいい、むしろ彼女に汚染されるなら死に至ろうが望むところだ」

月の賢者は気づく
あの烏が一方的に男を病的なまでに愛していると思っていたがとんでもない
男の方も病的だ、むしろ烏よりすべてを知っていて尚、彼女の隣を歩むのだから

「薬の副作用が強くなっても構いません、彼女と少しでも永くいられるようにしてください」
「はぁ…わかったわ、次くるまでには作っとく」

「ありがとうございます」

男は席を立ち、部屋を出ていく
愛しの彼女と働いてためた金子で、彼女へのみやげと、外来人の援助でもするのだろう

「…歪んでるよ、あなたも、この世界も」



「ただいま、空」
「おかえり○○、きょうはバレンタインデーだよね!」
「ええ、よく覚えてましたね」
「今年もチョコ作ったの!たべて!」
「私も空にチョコ買ってきちゃいましたよ、渡しあいっこしましょうか、ハッピーバレンタイン」
「うん!ありがとう○○!」

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最終更新:2011年03月04日 00:39