悩んだがとりあえず投下。
小さい頃から、毎日ずっと牛乳を飲んでいた。
歳を重ねるごとに飲む量は減っていたが二十の今でも毎日、牛乳瓶一本くらい飲まないとやる気や調子が出ない。
幻想郷に迷い込んだ当初は住む所や仕事と生活が大変でしばらく飲んでなかったが、最近は漸く軌道に乗り安心したら口が寂しくなったので、また飲むことにした。
まだ人里の全てがわからないから幻想郷に住むにあたりお世話になっている慧音さんに「酪農している農家を知りませんか?」と聞いて理由を言うと
慧音「そうか、牛乳を飲むのは健康にいいからな。わかった、毎朝届けるように私が頼んでおこう。」
〇〇「いや、自分でやりますし代金の話もありますから農家さんの場所を…。」
慧音「いいから私に任せておけ、な?」
そう慧音さんに凄まさるように説得され、翌日から戸の側に手頃の木箱に代金を入れておいていたら瓶一本入れておくとのことを夕方に慧音さんが伝えに来た。代金も良心的な値段で安心した。
翌朝、小屋の戸の前に置いた代金を入れた木箱を見ると確かに牛乳が入った一本の瓶があった。
早速、蓋を開け飲んでみると中々濃厚で美味しく、それから毎日飲むと調子もよくなり特に月に二日くらい最も美味しい牛乳が届く時があり博麗神社での宴会に誘われて飲み過ぎて二日酔いの時には最高の酔い醒ましになった。
そのことを慧音さんに言うと満面の笑みで「そうか、それはよかった。」と頷いていた。
仕事が休みのある日、里の茶屋の軒先にある竹簀で知り合いと将棋を射していると「こんにちは〇〇さん」と声が聞こえ振り返ると烏天狗の射命丸文さんが居た。
〇〇「こんにちは文さん。」
文「早速ですが〇〇さん、調子がいいみたいですが何か秘訣でもあるんですか?」
〇〇「調子がいいのは確かですが秘訣?秘訣ねぇ…特に無いですが強いて言うなら牛乳を毎日飲んでいることかな?」
文「へぇ~、牛乳を?」
〇〇「そうだよ、農家の人に慧音さんが話をつけてくれて毎日飲めるんだよ。」
文「へぇ…慧音さんが農家に話を…。」
話をしている最中に文さんの表情が一瞬だけ曇ったがすぐに戻った。
文「ありがとうございました、〇〇さん。」
そう言うと文さんは飛んで行った。
翌朝、いつもように戸の側の木箱から牛乳を取ろうとすると牛乳瓶と一緒に卵が一つ入っていた。
〇〇「おまけかな?まだあったかいし産みたてだな。有り難い朝飯に食べよう。」
牛乳を飲み干し、卵は朝飯に食べたがこれまた驚くほど濃厚だった。
その日だけかと思っていたが卵は次の日も、また次の日と入っているのが何日も続いた。
流石に貴重な卵を牛乳のおまけに毎日入れてもらうのも農家の方に悪いから、明日は早く起きて農家の方にお礼と卵の代金を支払うことにしよう。
翌朝、いつもより早く起き牛乳が届くのを小屋の中で待っていると足音が聞こえてきたから急いで履き物を履き、戸を開けると慧音さんと文さんが睨み合っていて、濁った目と歪んだ笑顔で僕の方を見て言った。
慧音「〇〇…、牛乳を飲むのは健康にいいが卵の取り過ぎはよくないぞ?剰えカラスの卵なんかな。」
文「あやややや…、言いますねぇ~。いつ食中毒をおこしそうか分からない牛乳を飲むよりましだと思いますが。」
そう言うと二人は再び睨み合う。
訳が分からず佇んでいると二人がまた僕の方を見た。
「「〇〇(さん)、すぐにこの邪魔者を消して美味しい朝ごはんを準備してあげる。その時、一緒にいつもの【牛乳・卵】を出すから(ので)待っててね?」」
そう言う彼女達のさっきとは打って変わった爽やかな笑顔に悪寒がして、気がつけば二人は上空で弾幕勝負を始めていた。
僕が口にしていたのは一体……?
最終更新:2023年11月27日 21:42