村はずれに作られた異様に頑丈な校舎で慧音は嘆息していた。
彼女の前にいる十数人の子供達。
それは何れも幼い少女であったが、一部を除いた全員に共通点があった。
つまり、全員が半妖であることだ。
各々が母親譲りの妖力や法力を持ち、わいわいと騒いだり弾幕を打っていたりする。
なんでこうなったかと慧音は回想する。
言うまでもなくそれは第一次幻想郷ベビーブームが原因である。
外来長屋に住む好みの男をホイホイとかっさらい、夜なべしてギシギシアンアンとしてれば子供が出来るって寸法。
その結果が慧音の前でやんちゃしまくっている子供達。
半神半人から半幽半人、クォーターバンパイア、竜種の力を引く子供、天人、鬼、普通に人間だけど異様に法力が強い少女。
よくもまぁ励んだモノだと慧音は呆れながらも授業を続ける……が、正直命がけである。
弾はビュンビュン飛んでくるわ、授業は聞かないわ、まるで某神社の宴会状態。
弾逸らしの呪いが書かれた教科書で飛んできた光弾を弾きつつ、慧音は叫ぶ。
「こらー! 授業を始めるぞー!!」
そんな苦労続きの彼女であるが、助手の○○がやって来ると顔が和らぐ。
外界でゼミナールの教師をやっていた彼は、自分が居ない間里の寺子屋での教師を務めてくれている好青年だ。
どこかほんわかしている彼は何故か、
「センセー」
「○○ー」
「あたしだー」
「けっこんしてくれー」
生徒達に大人気だった。やって来るともうすっかり包囲されてしまう。
見る分には微笑ましい光景とも言えるが……。
「せんせーはこーきなるアタシがケンゾクにするんだ」
「せんせーのこんやくしゃはあたしれしゅ!」
「せんせーをてんかいにつれてっててんじんになっていっしょにあくしずおとしをするのっ」
「せんせー、じんじゃにきてくれたらごりやくすごいよー!!」
「せんせー、おかーさんがさいせんほしいって」
「ぜったいあたしがおとすんだもん、あと10ねんごにはめろめろにしてあげるんだからっ」
「そうそう、けーねせんせーみたいなとしまにはわたさないもんっ」
慧音のこめかみに青筋が何本も走り、瞳孔の輝きが淀んでいるような気がするが……気のせいだろう。
無論、この後慧音が○○に対して強攻策に入ろうとし、子供達との死闘を繰り広げる事になるのだがそれはまた別の話。
最終更新:2011年03月04日 02:20