欲しい物を手に入れるのに手段もクソも無い。
私は何をやっても許されるし、むしろ非道でもそういう手段をとるべきなのだ。
じゃないと、心を繋ぎとめておけないから。
だから○○の運命に手を出したのはすぐだった。
それから自然と○○が紅魔館を訪れる回数が増えて、私と話す機会も増えた。
なに、終着点は既に決まっているのだ、
焦らずともゆっくりと関係を作っていけばいい。
毎日の紅茶の時間が楽しくなった。
ただ、
次第に、○○がフランのいる地下室に行くことが多くなった。
不愉快だ。
そんな事をしても無駄なのに、
フランは貴方に振り向かないのに、
私しか貴方を愛する人はいないのに。
「咲夜、今日のフランの晩御飯は私が持っていくわ」
「え・・・お嬢様、妹様は・・・」
「良いから、私の言うことが聞けないっての?」
「いえ・・・わかりました」
咲夜は一瞬困ったような表情をして消えた。
直後にはトレイに乗った夕飯が用意されていた。
咲夜にはきつく言っておいたから着いてくる事は無いだろう。
私は地下室に向かわず・・・食事をトイレに流した。
暫く食事を抜いてやろう。
メイドや咲夜はどうとでも騙せるだろう。
ただ一つ怖いのは、
正体の分からない、黒い影が私を後ろから見ていた事。
運命が見えない、弾幕も通らないそれは、まるで幻みたいで、
不信感を煽りそうで咲夜に相談する事もできなかった。
○○がフランの元に訪れるのは止まなかった。
私は地下室を封鎖した。
咲夜は黙っていた。
私の気持ちを察してくれたのだろうか。
フランが○○を好きになる訳無いのだから、
向こうが扉を閉ざしたと言えば○○は地下に行かないだろう。
後は、パチェも美鈴も、司書も、
私が何を考えているか既に知っているから、
○○を受け入れたりする事は無いだろう。
ただ、
黒い影は少しずつ私に近づいてきた。
だからといってどうにかなるものではないが、
四六時中何者かに監視されるような感覚は苦痛だ。
強い違和感から日中に深く眠る事も出来ず、
閉ざした地下へ毎日訪れる○○を見るのが辛かった。
フランの運命が見えない。
直接弄ってやろうと思ったのに、
○○と絶縁させてやろうと思ったのに、
あいつはいつも私の邪魔をする。
○○は私の物になるのに、
私から○○を奪うなんて、もう我慢出来なかった。
「お嬢様、お止め下さい」
咲夜と、黒い影が行く手を遮る。
「これ以上は、壊れてしまいます」
館が?そんなものは直せばいい。
フランが?元より壊すつもりだ。
○○が?私の物にさえなれば元通りになる運命にしてやる。
「どけ」
「・・・お断りします」
「どけって言ってるのよ!」
幾ら時を止めて細工をした所で、
避ける事が出来ない弾幕構成からは逃げ切れない。
だって、禁じ手だもの。
あくまで相手を倒す為の、魔法の延長線上にある物だもの。
被弾しきれずに咲夜は地に着いた。
影は黙って私を見つめていた。
地下室は静まり返っている。
話し声くらい響く構造なのに、
何をしている、
私の○○に何をしているんだ、
もしも汚していたのなら、簡単に殺しはしない。
もうお前は、妹じゃない。
扉の先には、誰もいない地下室が広がっていた。
「あ、あぁ・・・・・・」
探さなきゃ、○○を探して、
フランを殺さなきゃ、どこか、
どこだ、どこに、なんで、
なんで居ないの?
黒い影は悲しそうな表情を浮かべていた。
ああ、あれは、私だったんだ。
私は気づいていたんだ、本当は。
○○とフランは、とっくに外の世界に行ってしまった事を。
「・・・・・あは」
存在しない物の運命なんて見える訳が無いのに、
いっそ壊れてしまおうと自らの運命をたどってみても、
後にも先にも、ただただ空虚で。
正気を失っていく事を客観的に理解していた。
「咲夜、ごめん・・・」
道化でいる事があまりに苦しくて、
私は、何も、
感じる事に疲れてしまった。
最近、○○がフランの所に通っている。
○○は私と結ばれる運命なのに・・・・・・
最終更新:2010年08月27日 00:07