うたた寝してたら、こんな夢を見た。
「ねー、ママー。『きせいじじつ』ってなぁに?」
今年で3歳になる娘が、黒一色の尻尾をパタパタと振りながら、お母さんに質問して来ました。
この歳になると、見聞きしたこと疑問に思った事をすぐに身近な大人に質問してきます。
しかし、中には即答できかねるような質問もあるわけで。
「あらあら……この子ったら。どこでそんな言葉を覚えて来たのかしら……」
お母さんは、苦笑しながら、娘の黒髪を優しく撫でまわします。
ちなみに、髪や尻尾の色が、白狼天狗であるお母さんと違うのは、お父さんが人間だからです。
「パパにね、どうしてママと結婚したのって聞いたら、『きせいじじつ』を無理矢理作られたからって言ってたの」
頭を撫で撫でされ、娘は気持ち良さそうに目を細めながら言いました。
「あらあら、そうなの……ウフフ……あら、旦那様。丁度いい所に」
そこへ、丁度良くお父さんが現れました。
どうやら、どこかへ出掛けようとしていたようです。
「ど、どうしたんだ、椛」
「ええ、ちょっと。娘の教育の事で少し……あなたは少し、外で遊んで来なさい?」
「は、はーい」
娘は、子供の鋭敏な本能で、今の母親に逆らってはいけないと直感的に感じたのか、元気の良い返事を残し、すっ飛んで家から出て行きました。
「さて、旦那様……?」
「な、な、なんだ、椛……? ちょ、ちょっと、や、やめ……アッ―!?」
「た、ただいま~……」
数時間後。
おそるおそるといった感じで、遊びに行っていた娘が戻ってきました。
「お帰りなさい」
「お、おかえり……」
出迎えたのは、妙につやつやしているお母さんと、げっそりとやつれているお父さんでした。
娘は一体何があったのだろう、と首をかしげましたが、次のお母さんの言葉で、そんな疑問はきれいさっぱり忘れてしまうのでした。
「喜びなさい。あなたに弟か妹が出来るわよ」
「本当!? わーい!!」
大はしゃぎする娘を、お母さんは嬉しそうに、お父さんは疲れたように眺めていました。
その後、お母さんに『きせいじじつ』について質問すると、弟か妹が出来ると学習した娘は、遊び仲間の射命丸さんや河城さんや姫海棠さんの子たちにも、その事を教えてあげましたとさ。
最終更新:2011年03月24日 01:44