実は、私が幻想郷最強の妖怪だって言ったら、みなさんどう思います?
それなら何で紅魔館の門番なんてやってるんだ、ですか
まったくです
最強の者がそんな序盤に出るはずがない、その通りですよ
けれど現に門番を続けています
つまり、私って欲がないんですよね
妖怪の頂点に上り詰めたいなんて考えたこともないですし、なりたくもありません
気苦労が多そうじゃないですか、そういうのって
それなら紅魔館の門番としてのんびり過ごしていたいんですよ
だって昔から言うでしょ? 脳ある鷹は黄金の指を隠すって
あれ、違いましたっけ?
○○「違いすぎる! 女の子がそんなこと言っちゃ駄目だ!」
美鈴「な、何か間違ってました!?」
もうひとつの門番を続けていたい理由が彼、○○さん
外の世界から迷い込んできたらしいんですけど、そのまま紅魔館に居ついちゃった変わり者です
普通だったらどうにかして元の世界に帰ろうとするものなんですけどね
それに、ここに来た時に持っていた銃器(本物じゃなくて、エアガンというらしいです)の扱いに長けていたので
そのまま門番隊に回されました
この銃、巫女や魔法使いには歯が立ちませんけど、妖精や毛玉を追い払うときには結構重宝するんですよ
それから彼が私の部下になって仕事を教えたり、こっそり仕事を抜け出して遊びに行ったりしていたんです
そんなこんなで半年くらい経ったとき、私の靴箱に彼からの手紙が入ってたんです
古典的のベッタベタな手法ですね
内容は、大きな紙に墨で大きく「好きだ」と書いてありました
今思い出すと笑っちゃいますけど、その時はびっくりして声が出ませんでしたよ
内容を理解するのに1分、それが告白だと理解するのに3分、嬉しさがこみ上げてくるまでに7分かかりました
嫌だったとかそういうわけじゃないですよ
ただ、私が告白されたってことが信じられなかったんです
返事はそのまま彼の部屋に飛び込んでしましたよ
もちろんOKです
その後、ですか?
え~と………その日の夜のことは、ご想像にお任せしておきますね
まあとにかく、私と○○さんは恋人同士になったんです
○○「美鈴、どしたんだ? さっきから何かブツブツ言ってたみたいだけど」
美鈴「気にしないでください。状況説明ですよ」
○○「?」
彼が動くとガチャンガチャン音がするので、たとえ館の裏側からでも分かります
仕事中はいつも背負ってるコンテナの武具がまた増えたんでしょうか
確か中身はエアガンのライフル、マシンガン、18mm空気大砲、ネットガン
それに
パチュリー様特製の六連装マジックミサイルランチャーだったと思いますけど
○○「それより交代の時間だぞ。美鈴は帰って休め。しばらくは俺が見張ってるから」
美鈴「体力ならまだまだ有り余ってますよ。それより、お腹すきません?」
○○「そういや、少し減ったなぁ」
美鈴「小耳に挟んだんですけど、近くの村で今日から美味しいと噂の点心屋が開店したらしいですよ」
○○「……[我等 一身上ノ都合ニヨリ 戦線ヲ離脱セン]っと。置手紙はこれでいいな」
美鈴「さすが○○さん、話が分かります!」
咲夜「ええ、本当に息が合ってるわね。妬ましいくらい」
よりにもよってこんなところを咲夜さんに見つかるなんて、このままじゃナイフでハリネズミの刑ですね
しかも妬みパワーも手伝って、ナイフも当社比1.5倍といったところでしょうか
でも、これから私達は楽しいデートなんです
それを阻むなら、ちょっと痛い目にあってもらいますからね、咲夜さん
美鈴「えっと、寅の方角の……」
咲夜「後ろに下がって逃げるの? ○○は置いてけぼり?」
美鈴「107度……」
○○「いえ、それはないでしょう」
咲夜「どうして?」
美鈴「4分!」
○○「だって俺達は決めたんですよ」
美鈴「これから一緒に美味しい点心を食べようって」
咲夜「なにを言ってん」
最後まで言わずに、咲夜さんが気絶しちゃいました
足元には分厚い百科事典
きっと屋上かどこかで虫干しでもしていたのが落っこちてきたんでしょう
美鈴「ねえ、小悪魔さん」
??「こぁっ!?」
○○「誰なのか聞くまでもない叫び声だな。でも、ありがとなー」
美鈴「ありがとうございますー。それじゃ行きましょうか、○○さん!」
○○「おー! 美味い点心が俺を呼んでるぜー!」
あ、今のですか?
これは○○さんにしか話してないことなんですけど……わかりました、幻想郷のみんなには内緒ですよ?
地下の竜脈ってわかりますよね
……え、わからないですか?
え~と、簡単に説明しますと……運気の流れが地下を通ってるんです
まあ本来はそれだけじゃないんですけど、簡単に言うとそういうことです
その流れを、私の「気を使う程度の能力」で見ます
操る? それは無理です
あまりにも対象が強大なんですよ
お嬢様でも無理だと思いますよ
運命を操る能力 それそのものを強い運気は飲み込んでしまいますから
自然災害に体一つで挑むようなものですね
それでも竜脈の流れを見て、流れの強い方角を見つけます
そしてそこに移動すれば、あとはもう勝手に相手が自滅してくれるって寸法ですよ
その場所にいる限り私には幸運しかないんですからね
これが冒頭で言った最強の所以です
竜脈の上の私を倒すことは、絶対に、できないんです
でも安心してください
私は別にこの能力を多用する気なんてありませんよ
ただ私は○○さんとの日々を、変わらない毎日を望んでるだけなんですから
だからそれを邪魔しようとすることと、私達の命の危機以外には使う気はありません
博霊神社? マヨヒガ?
ええ。あそこは帰ろうと言う意思のない○○さんを無理やり帰そうとしてたんです
だから、本気で頑張って竜脈をせき止めたんですよ
私の持っていたマジックアイテム、一週間は立ち上がれないほどの疲労
それでも竜脈を2時間塞ぐのが限界でした
でもそれで十分です
だってその2時間の間は、運気がゼロになるんですから
運に完全に見放されたモノが、2時間も存在していられるわけがありませんし ね
最終更新:2011年03月24日 20:38