○○は魔法の森の雑貨店に拾われた外来人。
博識なのと手先が器用な為、店主からは重宝されていた。
とある日、如何にも暇を持て余して我が儘そうな天人が店にやって来た。
どうやら、最近幻想郷のあちこちを観光して回っている途中だという。
「へぇ、これは何?」「ああ、それは……」
○○は気紛れで気儘な質問等にも丁寧に答えた。
天人は暫く話した後満足げに帰っていった。
天人はそれから何日か毎にやって来て○○と話していった。
天人は、いたく○○の事を気に入った様子だった。
そして、半月が過ぎた頃。
「○○、買い物をするから手伝いなさい」
興味津々に店内を見回すだけで何も買わなかった天人が、初めて買い物をすると言い出したのだ。
「そうか。それで何が欲しいんだ?」「決まってるじゃない」
ニヤリと歪んだ笑みを浮かべる天人と、何時の間にか来ていた竜宮の使いに後ろから羽交い締めされる○○。
なぜか柔らかい物体を背中に必要以上の圧力で押し付けられていたのは天人には秘密である。
「それは、あんたよ○○」
「え、うちは人身売買はやってな―――」
後ろから走った軽微な電流によって、○○の意識は刈り取られた。
数時間後、買い物から帰ってきた店主は、○○が居ない事に気付いた。
そして、番台の上に積まれた金子の小山と、領収証の写しが置いてあるのにも気付いた。
○○の部屋を確認したが、彼の私物は後から来た天女達によって全て持ち去られていた。
店主は軽く頷くと、素早く番台へと引き返し金子の山がどれくらいあるか勘定し始めた。
「……ふむ、これでまた暫くは優雅な放蕩経営が出来るね」
手早く金子を勘定し、秘密の金庫に保管した店主は何事も無かったかの様に番台に座り、本を読み始めた。
「また、十年ぐらいしたら誰か来てくれないかなぁ」
―――世知辛い世の中、そうそう気の良い親切なんて無いという事かもしれない。
最終更新:2011年03月24日 21:28