幻想郷から帰還した○○が、ネットや2chで警告を書いた。
○○地方に閉ざされた結界に覆われた世界がある。
そこには異常愛で充ち満ちた女達が居る。
俺は何とか逃げ出せたけど、同じように這入り込んだ奴の殆どは奴らに囚われた。
絶対に近付くな、もし入ってしまったら神社を目指せ。
誰とも接触するな、特に女とは。
そして巫女が外の世界に戻りたいかを聞いたらはいと応えろ。
反応は勿論散々だった。
馬鹿にされるかキ○○イ扱い、厨二扱いを受けた。
○○は溜息を付く。
恐らく警告は聞き入れられないだろう。
自分が命がけで流した情報など、数日で人々は忘れ去ってしまうのだ。
……知らず知らず行われている神隠しの対象に、自分が選ばれるまでは。
そして、○○は瓶を開け中に入ってた錠剤を口に入れようとした。
彼女が来る前に、自ら死を受け容れようとしたのだ。
こちらに帰ってきた時は歓喜の涙を流したものだ。
だが、日々強まってくる気配。
取り戻した筈の日常に浸蝕してくる異常。
ああ、恐らくは、無駄だったのだ。
例え結界の外に逃げ出そうとも、自分は彼女から逃げ出せないと。
錠剤は口に入らなかった。
身体から力が抜け、自室の床へと崩れ落ちる。
身体から、力だけでなく生を構成するものが抜け落ちていく。
追い着かれてしまった……。
もはや舌を噛むことすら出来ない○○の目の前を、美しい輝きを纏った紫色の蝶が過ぎった。
白い手が、○○の顔を包み込む。
ああ、と○○は薄れいく意識の中で嘆く。
貴女がそんな風に病まなければ、俺があの郷の異常に染まれれば。
普通に、貴女を好きになったのかもしれないのに。
彼女は微笑んだ。
「大丈夫よ○○、私達にはもはや永遠の刻があるのだから。早く帰りましょう。妖夢がお茶を淹れて待っているわ」
そして現世から、人が1人消えた。
最終更新:2011年03月25日 23:27