幻想郷の実力者の多くは女性が占めている。スキマ妖怪、亡霊の姫から神までと多岐に渡る。
実力者にて畏敬の存在。その彼女達が異変の標的とは博霊の巫女も予想出来なかっただろう。彼女達を
「妖怪」として見ている限りは。あるいは―――女性として見ていれば何らかの対応は出来たのかも知れない。

それは年増達が求める、理想の伴侶の物語。世間体と欲望に取り憑かれた女達が起こした異変であった。


「―紫様、きっと良い男性が見つかります。だから部屋から出て来てください…」
スキマ妖怪は憔悴していた。自身を受け止められる異性が見付からない現実を認められなかった。

「妖夢、貴方はまだ若いわ。若いうちは大丈夫。でも、ね。千年も亡霊をやっていると
寂しさぐらい感じるわ」亡霊の姫は死人だけの屋敷で、生の暖かさに憧れていた。

「妹紅、私だってな…人里の者に必要とされてはいるが…」
「人が慧音を頼り過ぎてるから何時の間にか高嶺の花になっちゃって、誰も寄ってこないってこと
でしょ。飲むたびにその話はもう…」人里の半獣は距離感に悩まされていて。

「もう独り身は嫌だ…夫が欲しい!子供も欲しい!過程なしで家庭が欲しいのよ!私は!」
「あーうー…もっかい結婚したいな…」
神奈子様…諏訪子様…」
山の二柱は飢えていた。嘗ての暖かな時間に。

 各地の大妖怪が寂しさ故に理想の伴侶を想い描いた。その幾たびの想いから、○○という男が幻想郷に
迷い込んだのはつい先日のことだった。

―――八雲紫の考えは、強い妖怪は孤独にあるというものだ。人にも妖怪にも恐れられるのは、近くに誰も居ないのと
同じこと。幻想郷に住む者はそのイメージが定着しているが、外来人なら―――?


[東方婿不足]


幻想郷の人里にある小屋の縁側でお茶を飲みながら暖かい陽射しに日向ぼっこしする一人の青年が居た。

青年の名前は〇〇
ちょうど一年前に幻想郷に迷い込み、ここは自分が居た世界とは違う所や妖怪が居るのを驚きながらも大らかな性格と高い順応能力で暮らしていた。

それは、その〇〇が言ったある一言だった。

〇〇「あ~…結婚したい。……俺、一人で何言ってるんだろ……。だいたい俺に結婚はなぁ…。」
何気なく独り言を呟きお茶をまた啜る。

同時刻ーー。

胡散臭い笑みが特徴だが幻想郷の管理人である八雲紫の邸であるマヨヒガの一部屋の襖がスパーンッ!と勢いよく開かた。

紫「藍!今日から家族が一人増えるわ。私は今から迎えに行くから部屋の掃除と食事の準備をしてなさい。」

藍「紫様!どうなさいましたか?は…はい、畏まりました。」

紫「引きこんであげるわ、〇〇。」

冥界にある死者の魂が一時、逗留する白玉楼。
そこの主である亡霊姫の西行寺幽々子は従者に向かい『生き生きした』表情で言った。

幽々子「妖夢、ちょっと出かけて来るわ。」

妖夢「幽々子様、どちらへ?」

幽々子「ふふふ、運命の花を見つけた蝶は青空を舞うのよ?」

妖夢「???」


人里にある里の守護者で寺子屋で教鞭を執っている上白沢慧音は何かを感じ授業を早々と終わらせた。

慧音「少し早いが今日はここまでにしよう。私も用があるからな。妹紅、すまないが子供達を送って行ってくれ。」

妹紅「え?今日に限って何でまた?」

慧音「いいから、な?な?」

妹紅「わかった、わかったからそんなに押すな。」

子供達「「「慧音先生、さようならーー。」」」

慧音「あぁ、気をつけて帰りなさい。…さてと、これから私達の歴史の『個人授業』だぞ?〇〇。」


妖怪の山にある守矢神社。そこの巫女で現人神である東風谷早苗は今日も人里へ信仰を集めに行こうと準備していると二柱の神に呼びとめられた。

神奈子「あ~…早苗、今日は私達が人里へ信仰を集めに行くよ。」

早苗「え?神奈子様と諏訪子様で、ですか?いえ私が行っても…。」

神奈子「いいから!今日は私達が行くから早苗は留守番お願い!!」

諏訪子「あーうー、100人分の信仰かそれ以上のをお土産に帰って来るからさ。」

早苗「は…はい。」

幻想郷の実力者である妖怪や神の各々が己の従者や知人に言伝を残し向かうのは、青年〇〇の小屋。

博麗神社の宴会で知り合い、分け隔てなく接する〇〇に全員が好意を持ち、持ち過ぎるあまりに己の能力や式などを駆使し〇〇の好みの食べ物や趣味などの言動を見て【監視】いた。

そして今日〇〇の独り言を聞きつけ、思い立ち行動を開始したのだった。

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最終更新:2024年10月27日 22:43