庭の隅に少し大きめの何も生えていない植木鉢があった。
○○「あれ?こんなの置いてたかな?」誰かの置き忘れかと思い人里の花屋に尋ねに行った。
しかし、誰一人として持ち主だという者は現れなかった。
○○「誰の物か見当もつかないしどうしようかな?君はどうしてほしい?」
無意識に植木鉢に話しかけていた。あれから水をあげて様子を見ていたが何も変化はなかった。
中に種は入っていたのだが一向に芽が出なかった。
○○「そうだ、太陽の畑に持って行けばこの種も芽を出すだろ!」
○○は意気揚々と太陽の畑に駆けていった。
一面の向日葵の丘。人里から少し離れた場所に太陽の畑はある。
乱れた呼吸を整えながら風見幽香を目で探す。
幽香とは幻想郷で初めて会った妖怪だ、少し?暴力的だが心優しく相談にのってくれる。
幽香「あら、○○じゃない。何か用なの?」不意に後ろから声がかかった。
○○「うわっ!!幽香、脅かさないでくれよ。」
幽香「ふふっ、ごめんなさい。」
友達とはいえ幽香は妖怪だ、人間とは違い、生きている時間も能力も桁違いだ。
友人である幽香に襲われて殺されることだけはされたくない。
○○「はー、ビックリした。」
幽香「ビックリしすぎよ。それより要件はなにかしら?」
○○「実は植木鉢を見てほしいんだ。」持ってきた植木鉢を取り出す。
幽香は一瞬神妙な顔つきになったがまた元の表情に戻った。
幽香「種が死んでるわね。種は薔薇の種よ。」
○○「触ってもいないのに判るのか?」幽香の花に対する能力は何度見ても驚愕ものだ。
幽香「伊達に何年も花の世話なんかしてないわよ。」胸を張って威張っている幽香は幼い子供に見えた。
○○「それより種が死んでいるってホントに?」
幽香「私の診断に間違いがあったことは?」不気味な笑みで迫ってくる。
○○「いえっ...ありません...。」
幽香「種は取り替えて新しいものに替えなさい。ちょうど向日葵の種ならあるわ。」
ポケットから小さい袋に入った向日葵の種を手渡された。
○○「貰ってっもいいの?」
幽香「貰ってもいいわよ。ただし、今度枯らしたらタダじゃおかないわよ。」
幽香の後ろに般若が見えた様な気がした。
○○「分かった、大事に育てるよ。」○○は、いそいそと人里へ帰って行った。
一人になった幽香は歪んだ笑みを浮かべながら○○の去った方向を見つめた。
向日葵の花言葉は、〈私の眼はあなただけを見つめる〉
幽香(やっと○○の家に分身を送り込めたわ。これで四六時中○○の事を監視できる。)
計画が成功した幽香は高らかな笑い声を太陽の畑に響かせた。
最終更新:2011年04月24日 21:34