私には娘がいる。血はつながっていない、というか種族すら違うのだ。
今から10年ぐらい前に拾った妖怪の子で、山菜取りに行った時に偶然出会った。
出会ったというのは少し違うが、私は瀕死の状態で倒れているその子を助け、いろいろあって私の娘になったのだ。
私の娘の名は 風見 幽香 というらしい。
最初の1年は親になったばかりで何をすればわからず四苦八苦していたが、次第に慣れていった。
初めは余所余所しかった我が子とも、徐々に打ち解けていき今ではすっかり中の良い親子である。
幽香は中々の甘えん坊でやんちゃな子だ。
妖怪である幽香は身体能力が高く、村の番長的な存在にもなっていた。年下の女の子からはお姉さまといわれて慕われていたようだ。
一緒に風呂にも入ったし、寝るときも一緒だった。ご飯も一緒に作ったり、本を読んであげたり、お昼寝をしたり。
そんな幸せな毎日は本当にあっという間に過ぎていった。
幽香を娘にして10年が経とうとしていた。10年という歳月は少女をあっという間に女性に変えていった……。
幽香は最近村の花屋で仕事をやるようにまでなっていた。もう幽香は十分一人でやっていけるだろう。
子供の成長にうれしいと思う反面、寂しいと思う気持ちが沸いてきたが、親とは得てしてそういうものかと無理やり納得した。
そんなある日○○にお見合いの話が舞い込んできた。どうやら近所の甘味屋の娘さんがお相手らしい、それなりに懇意にしている良い友人の1人だ。
若いときから幽香の親をしてきて、青春を過ごせなかった○○を不憫に思って友人が持ってきてくれた話らしい。
確かに幽香のこともあって、他のことを考える余裕もなくずっと幽香のためだけに過ごしてきた。
決してその日々が嫌だったわけではなく、むしろ幸せであったがやはり生涯の伴侶は欲しいと思っていた。
自分もそろそろ人生下り坂に入るところである、この話は自分にも悪くないと考えその話を快諾したのだった。
家に帰ってきたら我が娘は湯を浴びていた、幽香がでたら私も入ろうと思い今朝届いていた「文々。新聞」を読むことにした。
「ふむ……守矢神社の巫女ご乱心か……神社の地下から男性1名救助。 犯人である巫女は「この幻想郷では常識に囚われてはいけないのです!」と言っていると……最近は物騒だねぇ」
新聞に目を通していると後ろから物音が聞こえる、どうやら幽香が上がったようだ。
「ねぇお父さん……今日は私に伝えることが何かないかしら?」
我が娘である幽香があぐらをかいている私の背中に寄りかかってきた。湯上り直前だからだろうか、少し体温が高く背中が心地よい。
「私が幽香に……? 何かあったかな……?」
多分お見合いの話だろうと気づいたが、まだ顔を合わせるだけのことだからわざわざ幽香に伝える必要もないと思い黙っておく。
しかしその反応が不服だったのか、後ろから手を伸ばしてきた。
幽香は寄りかかったまま右手を私の下あごに添え、左手は私の左頬をゆっくり撫でる。
幽香の白魚のような指が顔の輪郭に沿うようにゆっくりと…まるで愛しいものに触れるような緩慢さでツツーーと撫でていく。
右の耳まで移動した指先はまず耳の裏をスゥッと撫でていき、耳たぶをプニプニとしばらく弄び、ソッと耳の中に進入してくる。
耳の内側を人差し指が蹂躙していく、脳髄に響くかのようにザザザッ…と音が伝わりその感覚に体が震える。
そこに熱い吐息がぶつかり、その心地よさに目を細める。幽香が唇を近づけているからだろう。
フゥッーと耳朶を吹き抜ける生暖かい空気がふっと止む、いつのまにか指先の感触もなくなっており、ホッと息を吐く。
突然生暖かい感触を耳朶に感じた。その感触に思わず背筋がビクッとなってしまう。
その感触はヌメヌメしていて、なんとも言えぬ気持ちよさがあった。
幽香は耳朶を咥え、あむあむと甘噛を繰り返す。ヌメッとした舌が触れる度、背筋に電気が走る。
流石にこれは冗談ではすまないと思った私は、無理やり幽香を引き剥がした。
幽香はその反動で尻餅をついてしまったが、今はそれを悪いと思うこともできない。心臓が言うことを聞かず、ばくばくと鳴り続けている。
「もう……酷いわねお父さん。 もっと優しく扱って欲しいものね」
立ち上がった幽香は服についた埃を手で払い落とし、服を直す。
私は未だ平常心に戻ることができず頭の中で素数を数える。
いたずらをされたことなら何度かあり、娘の軽い悪戯だと今までは流してきた。
だが先ほどの行為は危なかった。もう少しで飲まれるぎりぎりの危うさ。
最近うちの娘はこういう行為が多くなっており、段々とエスカレートしている感がある。
よし、今後は注意していこうと新たに決意し気持ちを持ち直し、
「よ…よし! お父さんはお風呂に入ってくるよ!」
準備しておいた着替えを片手で掴み取り、我が家の風呂場へ逃げ込んだのだった。
私は風見幽香、妖怪である。小さいときに○○に拾われ娘として暮らしてきた。
○○の娘であることは幸せなことだが、私は○○のことを親としてだけではなく1人の男性としても見ている。
この気持ちはいつからなのか正直覚えていない、いつのまにかそういう気持ちを持っていたのだ。
最近では時折起こる衝動が抑えられなくなってきている、○○が欲しい…という思いだ。
私はその衝動に逆らわずそのまま行動に移すようになった。
ともかく私は○○を愛してる、私だけのものにしたい、他の誰かになんて絶対に渡したくないって思ってる。
もちろん○○に近づく雌豚共は排除してきた。以前○○に近づいてきた豚は私の向日葵たちの栄養にしてやった。
○○には私さえいれば良い、私だけを見ていて欲しい、私も○○さえいれば他はなにもいらない。
「だから……こんな(お見合い)のはいらない……」
気がついたら手のひらから血が流れていた。どうやら強く握り締めすぎて皮膚を突き破ってしまったらしい。
流れる血を舌で舐め取り、これが○○のだったらと想像してしまい、体の奥が熱くなる。
「あ……今日も○○に種を植えなきゃね、もう少しで……ずーっと一緒よ……○○」
幽香は向日葵のような笑顔を咲かせ、○○のいるところへ歩いていった。
最終更新:2011年04月24日 22:21