キュッっと彼女が手を握るとその先にあった柱が崩れ落ちた。
「おー相変わらず凄いな」
吸血鬼が住む紅魔館地下。人間にとっては危機的な状況だが○○はのんきに目の前の光景を見ていた。
その光景は彼にとって既に日常の一部となっていた。
気がついたら幻想郷にいて、紅魔館に拉致され、地下に放り込まれあっさり死ぬ予定だったが、彼は生きていた。
それも地下に幽閉されている吸血鬼、フランドール・スカーレットの気まぐれであった。
普通ならば壊れるまで遊び倒してしまうのが彼女の日常であったが、○○を見た瞬間なんとなく殺さないでおこう、そう思い生かしておいた。
結果としてその選択は彼女にとって喜ばしいものとなった。
「えへへ~凄いでしょ~」
先程ののんきな感想に彼女ははにかみながら答えて○○に抱きついた。
「きっとフランちゃんに壊せないものなんてないんだろうね」
そう冗談めかしながら彼女の頭を撫でる。
最初彼女は彼を怖がらせるために能力を使ったが彼は怖がらずにただ感心した。
今まで恐れられたり怖がられたりしたことしかない彼女にその反応は新鮮で心地よかった。
二人っきりの地下、互いに距離は直ぐに縮んだ。
彼女が能力を使うたびに彼は感心し、頭を撫でたり抱き上げたりした。彼女はそうして貰えるのが嬉しかった。
なので彼女は命一杯能力を使い広い地下室を破壊して回った。
そうこうしているうちに四六時中破壊音に悩まされてか館が心配になったのか姉の
レミリアが降りてきて彼女に注意をした。
レミリアが去った後、彼は彼女の姉だと知るとこんな事を言った。
「やっぱりお姉さんも強いんだろうね」
彼にとっては何気なしに言った言葉であるが、彼女にとっては彼を姉に取られるかもしれないという危機感を抱いた言葉であった。
その後、彼が寝静まったあと彼女は地下室から抜け出し姉のもとへ向かった、立ちはだかる者は全て蹴散らしながら。
夜明け前、威容を誇っていた紅魔館は崩れ落ち、見る影もなくなっていた。
これだけ壊したんだもの、もしかしたら抱っこだけじゃなくてキスをされちゃうかも。そんな事を考えながら彼女は踊るような足取りで地下への階段を下りていった。
最終更新:2010年08月27日 00:16