某月某日

俺の名前は○○。
俺より強い奴に会いに行く。

拳法と言えば中国。

4000年の歴史を粉砕してやるぜ。

……断じて、お金がないから、泳いで行ける場所という理由じゃないぞ

そう、鍛錬だ、鍛錬。


某月某日

日本海を泳ぎきり、やっと中国に着いた。

しかし、中国ってのは凄いな。

人が空を飛んでいたり、ホウキに跨って飛んでいるんだよ。

あれが有名な、舞空術とタオパイパイ流――柱を投げて空を飛んで行く――飛行法か。

中国に渡って早くも、こんなものが見れるとは、オラわくわくしてきたぞ。


某月某日

「大きな川だ……これが有名な長江か……」

世界に響き渡る、有名な川を間近で見れて俺は今猛烈に感動している。

「ん……あれは……」

対岸にひっそりと佇む、真っ赤な建物。

「あの日の丸を連想するような赤さ……あれが日本領事館か」

そういえば、中国に渡ることに夢中で、うっかりパスポートを持ってきてないな。

「さすがに密入国は不味いな……発行してもらうか」

そうと決まれば話は早い。

「この距離なら……行ける」

俺は湖の上を走り、日本領事館を目指す。


某月某日

やはりここは中国だった。

「いや~、長いこと門番をしていましたけど、あなたみたいな人は初めてですよ。湖の上を走ってくるなんて」

数日前、空を飛んでいた連中が、巫女に魔女とあまりにも中国っぽくないので少し不安に思っていたけが、

「あの……話聞いてますか?ここは関係者以外立ち入り禁止でして」

チャイナ服に人民帽を被る女の子。

この格好、間違いない。ここは中国だ。

日本語が話せるのは、きっと日本領事館勤務だからだろう。

「大丈夫だ、問題ない。」

だって日本人だから。

「なにが大丈夫なんですか?通行証、ある訳ないですよね。」

「だから……」

「それじゃ不法侵入者として対処します」

バッと構えるチャイナ娘。

日本人だから問題ないはずだが……むぅ、この構え、なかなかやるな。
誤解を解くのは簡単だが、せっかく向こうから勝負を挑んで来たんだ。
本場の拳法を味わって見るのも悪くないな。

「その勝負受けてたとう」

「分かりました。ではスペルカードは何枚で、ぐっ……」

「油断大敵。……と言うか、勝負を受けたって言ったのに、なんでベラベラと喋り続けてんだ?」

崩れ落ちる彼女を尻目に、パスポートを更新するために、日本領事館の中に入っていった。

朱鷺子/9スレ/353に派生ネタ


某月某日

こんなに頭にきたのは何時ぐらいだろう。

不意をつかれたとはいえ一撃で私を倒した相手が、

「あの侵入者でしたら、私達が追っ払っておきましたよ」

えっへんと胸をはる妖精メイド達。

撃退したのが、咲夜さんや、パチュリー様だったら、まだ救いはあった。

しかし侵入者は妖精メイド、しかも一匹も倒せずに逃げ去ったとのこと。

この事実が美鈴の心に深く深く傷を付けた。

これが弾幕勝負ならば、まだ言い訳が出来た。

しかし素手での勝負とあっては……

認めない。絶対に認めてなるものか。

私を負かした男がそんな雑魚なんて認めない。

「ねぇ……あなた、あの男はどこに逃げて行ったの」

自分でも驚くほどの平坦な声。

その声がどう目の前の妖精メイドに聞こえたのか、彼女は怯えながら、

「あっ……あっち……あっちです」

と人里の方を指差した。

「ありがとう。ついでにレミリア様に伝えといてください。用事が、重要な用事が出来ましたので、暫く職を休ませて頂くと」

返事を聞かずに美鈴は駆け出した。

後に残された妖精メイドは恐怖あまり、彼女の言葉半分しか覚えていなかった。


某月某日

寝ても覚めてもあの男が頭から離れない。

捕まえたら……ドウシテクレヨウカ……


某月某日

ついにあの男を見つけた。

「エネルギー波にしたって限度があるだろ!もっと謙虚に出してくれ」

夢にまでみたそいつは、野良妖精の放つ弾幕に追い立てられていた。

その光景を見て――無性に腹がたった。
「その男はわたしの獲物だ!手を出すな!」

視界が赤く染まるほど頭に血が登り、気付いたら、空を舞い、妖精達を蹴り飛ばしていた。

「いや、すまない助かったよ。って、警備員さんか。やっぱり強かったんだな」
「…………やっぱりってなんですか。わたしはあなたに一撃で沈められたんですよ」

「あれは不意打ちもあったし……っ!?」
「……私の不意打ちはたやすく捌けるんですね……なら、これならどうです――」

とろけるような笑顔を浮かべて、美鈴は男に襲いかかっていった。


某月某日

「けほけほ……ここみたいね」

「大丈夫ですかパチュリー様?」

「大丈夫それよりも、美鈴を」

「……かしこまりました。それにしても……」

パチュリーの容態を心配しつつも、少し離れたところで戦う美鈴に目を向ける。


「互角とはね……あの男やるわね……」

件の侵入者と美鈴が持てる体術の限りを尽くして火花を散らす。

これが弾幕勝負ならば、ルールに乗っ取り、助太刀をすることが出来ない。

しかしあの男は美鈴と格闘戦を演じている。

ならば適用されるルールなどなく、咲夜はナイフを、パチュリーは攻撃呪文の詠唱に入る。

……

嫌な予感がして、必要以上に間合いを取る。

案の定、先ほどまでいた場所にナイフとエネルギー波が突き刺さる。

「……援軍か」

やはり、領事館の警備員さんを倒したのが不味かったのか。

内心舌打ちをして、

「手は出さないでください!出したら、二人とも容赦しません!」

目の前の警備員が援軍に向かって怒鳴りつける。

「あなたもです。目線をわたしから反らさないでください。あなたはわたしを見てれば良いんです」
昏く笑い、澱んだ瞳でこちらを見据える。

そのおぞましさに、思わず体が止まってしまい……

「やっと隙をだしましたね」

ヤバいと思ったときには、腹部に強烈な衝撃。

体がくの字に折れ曲がり、間髪入れずに足払いが掛けられ。

倒れ込み、馬乗りに乗られ、顔面に拳が寸止めに打ち込まれた。

「わたしの勝ちですね」

「ああ、俺の負けだ」

「そうです。あなたの負けです。そして、やっと捕まえました…… 」

「捕まったなぁ~出来たら強制送還だけは……」

「ドウシテ」

「へっ?」

「ド ウ シ テ ク レ ヨ ウ カ――」

……
























「それから、それからどうしたの?」

「それからかい?負けた格闘家の○○は、門番のお姉さんに連れて行かれて……………………………………………………………………………門番のお姉さんと結婚をして、幸せに暮らしているとさ。めでたし、めでたし」
「……パパ、なんか凄い間がなかった」

「子供がそんな小さな事を気にしちゃだめだぞ」

「なら、私が聞いたら問題ないですよね」

「あっ、ママ」


「そう言えばあなた、この間、椛さんと戦ったそうですね。あのメスイヌ、また今度戦いましょうって伝えといてくださいって。いけしゃーしゃーとわたしに言ってきたんですよ。尻尾をブンブンと振って……その事についても聞きたいですね」

「いや、それは……」

「ねぇ、ママはパパと少しお話をしなければ行けないから、良い子だからパチュリー様の所で絵本を読んで待っていてね」

にこりと笑いながら――瞳は一切笑っていないが――告げる。

「うっうん。それじゃ絵本を読んでくるね」

駆け出した。

それから間もなく、背後から、パパの悲鳴が聞こえてきたけど、一切無視して、図書館に駆け込んだ。

扉を開けて中に入ると、

「ふふふ……やっと捕まえたら。もう逃がさないわ。353さん」

大きな魔法陣の中に鎖で雁字搦めに縛られた男の人と、恍惚の笑みを浮かべる小悪魔さん。

「……」

バタンと扉を閉めて回れ右。

「……お昼寝しよ」

母譲りの特技を思い出して、どこか悲鳴の聞こえないところで夢の世界に旅立とうと、駆けだして行った。


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最終更新:2011年05月06日 02:34