明るい病みは書けないのでぽちぽち。
一人違う毛色でなんかごめんね。
「いってきます、椛」
「いってらっしゃい、あなた」
愛する人の声を受け、今日も仕事へと向かう。
手には愛妻弁当をひっさげ、気分は幸せそのものだ。
付き合い始めからの約束で、中身はあけるまで秘密となっているが、
大体いつも俺が好きなメニューばかりだから問題はない。
「~♪」
まだ見ぬ昼休みに想いを馳せつつ、職場へと向かうことにした。
愛しい人の姿が見えなくなるまで手を振り見送る。
曲がり角に消える直前、私に向かって大きく手を振る彼。
これも付き合い始めから変わらない。
結婚した今となっても、近所からおしどり夫婦と呼ばれる所以。
「さ、お洗濯しなくちゃ」
我が家へと引き返しながら、力を発現させる。
視界の半分は目の前の景色。
もう半分は――彼の動向。
彼が私を差し置いて他の女になびくことなど露程にもありはしないと断言できる。
では何故?と問われたら答えは簡単。
――障害になりうるものを"露払い"する為だ。
例えば彼が時々私に贈る花束を買う、花屋の娘。
彼は惚気ながら花選びに勤しむので気付いてはいないだろうけれど、
あいつはいつも彼に色目をつかっているのだ。
いずれ始末しないといけない。
他にも甘味処の店長や、蕎麦屋の売り子……敵は多い。
私は犬走――じゃなかった、△△椛。
愛しい○○さんの妻であり、恋人であり。
門番である。
最終更新:2011年05月06日 03:07