河童印の狂愛治療薬『糠甲羅・玖餡侘夢』。
開発者の川城
にとりを始め、数組の男女カップルを招いて試飲会が行われました。
重度の偏愛と依存性を克服する為、女性の方々が試飲した所女性陣が暴走。
その場で相方を押し倒したり大声で泣き叫んだり自害を試みたりと大惨劇になったようです。
どうやら成分の配合率に問題があり、効果が逆に出てしまった模様。
取材に訪れていた天狗達によって女性陣は取り押さえられ被害は最小限に抑えられましたが、試飲会自体は大失敗。
尚、河童側からは謝罪のコメントと共にお詫びとして胡瓜と尻子玉の詰め合わせセットが送られたそうです。
以上、文々。新聞でした。
576の続き
「やっぱり失敗しちゃったみたいねぇ……」
彼女はそう言うと深々と溜息を吐いた。
「天狗の方でも同じ様な薬を作ってみたら大変な事になってしまったみたい」
具体的にどうかと尋ねると、彼女は頬を元々赤かった頬を更に赤く染めて言った。
「貴方と同じ外来人とお付き合いのあった天狗の半数、お腹が大きくなってしまったって」
……つまり、河童と同じ逆効果って訳で。こっちは性欲が飛んだみたいだけど。
「はぁ、結局特効薬は無いって事かなぁ」
「そう言うことねぇ」
言いながら彼女は自分にもたれ掛かったままスンスン鼻を鳴らしている。
情事を終えた後の自分と彼女の混ざった体臭が堪らなく好きらしい。
「ねぇ、永琳さん」
「なぁに?」
人肌を痛めず、尚かつフィットする事で拘束を解きにくくしてある手錠を見詰めながら呟く。
「永琳さんなら、どうにか出来るんじゃない? 蘇生薬や蓬莱の薬なんて作れる位なんだし」
神代の時代から存在し、月の医療技術を修めた彼女であれば特効薬を作れるのではないか?
「永琳さんだって、ついついやりすぎてしまったり暴走するのは怖いんでしょ?」
「うーん、そうなんだけどねぇ……」
やべ、顔を赤らめながら考え込む仕草が凄く可愛いと思う。
此処が永遠亭の主すら知らない隔離室で、もう何ヶ月も拘束されたまま監禁生活を送ってなきゃ。
こうして訪れる度に搾り取られ、自分の異常性を認識しつつも止められない様を見せられてなきゃ惚れてたと思う。
「……やっぱ、作れませんか」
「うん、それ、無理。多分、治ったら貴方の事を再び愛せるか解らないし」
「……そうなのかー」
「だったら、このままでもいいかなぁって。あ、大丈夫。もう少し自重出来るようにするから」
抜けるような粘着質な音が聞こえた後、彼女が俺の脇に寄り添ってくる。
ああ、俺も病んできたのかなぁ。昔はこの執着の凄まじさに怯えすら抱いてたのに。
どうしてこう、寄り添って上目遣いされて心地よさすら感じてしまうんだか。
「……取り敢えず、拘束具無しの生活からお願いします」
「はい、善処します……取り敢えず、お休み」
「お休みなさい」
今だ、病んだ愛の特効薬は見つからず。
最終更新:2011年05月06日 03:22