香霖堂繁盛記
「頂戴な」
「ああ、いらっしゃい」
日傘を折り畳んだ幽香が、入店してくる。
彼女は雑誌が山になっている一角に近付くと、手早く内容をパラパラと確認し始めた。
暫しの間「このプレイはこの間……」「ちょっと恥ずかしいけど頑張って見ましょう」等と呟きが漏れた後。
「これ、全部ね」
ドサリと雑誌の山が店主の前に積み上げられる。それら全てがエロ本だった。
店主は彼女を見る。彼女の瞳は愛欲と執着に満ちていた。
今まで愛を知らなかった存在が愛を知ると、この上なく貪欲に、渇望的になる。
男女の関係で、肉欲は男を女に括り付ける原初的な手段だなと思いつつ、店主は最近雇った青年に袋詰めを頼んだ。
ただし、合意の上であればね、とも考えながら。
「ごきげんよう、少々捜し物があるのですが……」
紅魔館のメイドがやって来て、メモにある品々が無いか聞いてきた。
どうやら、逗留中の客が慰めに欲しいとの事。
どれがあるか、どれが無いかとメモを見ながら店主は思った。
どれだけ長い間逗留してるのかね、と。後、メモ一文字目を立て読みすると「タスケテ」になった。
ごめん、僕にはどうにも出来ない。品物で外界を偲んでくれ、と品物を青年に集めさせた。
「すみません、暫く匿ってください! 家を壊されてしまったんですっ。金子払いますからお願いっ!!」
久し振りに訪れた外来人の○○君がやって来た。
どうやら誰かに追われてやって来たらしい。
「○○さーん、私と一緒に春しましょー」「○○……私と春爛漫人生送ろ……」
「○○、私と一緒に芋と愛を植えましょうよ」「○○、紅葉する前にお布団で私と高揚するのよ」
「○○、早く私と氷室に篭もりましょう。冷凍睡眠で冬まで一眠りよ」「○○ー、虫の知らせサービス、私のダイレクトメッセージが溜まり過ぎなんで受け取ってー!」
ドアが今にも破れそうだ。もう、正直布団被って寝ていたい。
「□□君が応対するからちょっと待っててくれ!」
「霖之助さんっ!」
素早く住居部分まで退避、みがわr……勤務交代の為□□君の部屋に入る。
「□□君っ」「て、てんちょ……た、助け」
襖を閉めた。僕は何も見てない。
最近、□□君にちょっかいをかけていた隙間妖怪と亡霊姫が全裸で□□君と布団の中で頂上決戦してたなんて。
僕は見てない。気分が悪いので今日は休店しようそうしよう。
店のドアが破れる音と○○君の悲鳴、2つ向こうの襖から聞こえる湿っぽい音を無視しつつ僕は布団を被った。
最終更新:2011年05月06日 03:43