〇〇「お、ここか。」

半年前に幻想郷へ迷い込んだ外来人の青年〇〇。
彼は知り合った人里の人々や幻想郷の重鎮である女性達に薦められた蕎麦屋『幻想庵』の前に来ていた。

やれ、そば粉が違う。やれ、コシが違う。やれ、汁が違う。などの評判があり本日来た次第だが時刻は昼前、軒先には暫しの行列が。

〇〇「やっぱり、人気の店なんだな。」
そう呟くと列に並ぶ〇〇。そんな彼を見つめる複数の目。
(((〇〇ったら、昼間から積極的ね。)))


しばらくして、店へ入れた〇〇。
店主や店員らの元気のいい「いらっしゃっいませー!!」という声が響く店内はごった返していた。
なんとか座れた〇〇は盛蕎麦を頼み待っていた。
するとー、

店員「お客さん、すみませんが相席をお願いしてもいいですか?」

〇〇「あぁ、構いませんよ。繁忙時ですからね。」

店員「ありがとうございます。お客さん、どうぞ。」

慧音「おや?〇〇じゃないか、偶然だな。」

〇〇「あ、慧音さん。こんにちは。」

慧音「こんにちは。それにしても昼時だから混んでいるな…どうだ〇〇?この店の店主と私は懇意だし幸い〇〇の頼んだ品は来てないみたいだから一緒に二階の座敷でゆっくりと食べないか?」

〇〇「え?いいんですか?」

慧音「もちろんだ。さ、一緒に…」

店員「あの~、そちらのお客さん。」
会話の途中で店員が入って来た。

店員「あちらの方達から二階の座敷で是非一緒との申し出が…。」

店員が言った先を見ると、そこには。

〇〇「あれ?幽々子さん。それに妖夢さん。」

幽々子「偶然ねぇ〇〇?どうかしら、二階で私達と一緒に食べる?食べるわよね?」
そう言って〇〇に腕を組む幽々子。

妖夢「幽々子様、先に私は二階で準備をしてきます。」

そう言って店員に案内され階段を登って行く妖夢。
目が…いや、顔が何か身震いする笑顔だったのは気のせいだろうと〇〇を思い現状にツッコんだ。


〇〇「あの…幽々子さん?誘いは有り難いんでs 慧音「はしたないぞ、西行寺!!」

昼間だが、今にもワーハクタクになりそうな慧音が〇〇を幽々子から引っ張り返した。

慧音「〇〇は私と『食べる』んだ!!大体、大食漢の貴様とは落ち着いて食事はできんからな。」

幽々子「あらあら、食後の運動は〇〇に任せて食前の運動はワーハクタクにお願いしようかしら?」

一触即発な雰囲気に店内もどよめく。
一番近くに居る〇〇も不安を隠せないが、会話に引っ掛かる言葉があるのを気がついた。

〇〇(いや…慧音さん『食べる』って言葉、妙に強調してません!?幽々子さん、ナニする気ですか!?)
そう考えていると、急に浮遊感を憶えた〇〇の足元に隙間が出来ていた。


〇〇「え?いや、ちょっと!?」
隙間に落ち、気がつくと何処かの座敷に座っていた〇〇。
そして、その向かいには…。

〇〇「紫さん!?」

紫「はぁ~い、貴方のゆかりんよ〇〇?」
幻想郷の管理人である八雲紫が居た。

〇〇「あの…紫さん、ここは?」

紫「ここは蕎麦屋の二階よ。あの二人が睨み合っている内に私も店主に頼んで借りたのよ。今、藍に結界を張らしているからゆっくりと食べれるわよ?」

〇〇「そ、そうですか。よかった…いや、良くないか?」

そう言う〇〇に紫が扇子を動かし、頼んでいた盛蕎麦が出て来た。

紫「さ、召し上がれ。」

そう食事を促す紫の笑顔が怖く素直に蕎麦を食べる〇〇。
しかし、評判なだけあって確かにコシや汁が今まで食べた蕎麦とは比べ物にはならないくらい美味い。

〇〇「流石は山紫水明の幻想郷の蕎麦屋ですね。美味しいです…よ。って、あの紫さん?食べないんですか蕎麦?」

〇〇の向かいで両手で頬杖をつき、じっと見つめる紫。

紫「食べるわよ?『コシ』や『汁』がいいのよね?」
そう言って濁った目と歪んだ笑顔で〇〇に迫る紫。
その時ー、

慧音・幽々子・妖夢「「〇〇【さん】ーー!!」」

そう叫び突っ込んで来た先程まで睨み合っていた連中。

藍「申し訳ありません、紫様。結界が破られました。」

紫「もう!しっかりしなさい藍!!」

慧音「そこまでだ、〇〇は私が!!」

幽々子・妖夢「「いいえ、私達が!!」」

紫・藍「「一番先にこの蕎麦屋を薦めた私達が!!」」


〇〇「あの、すみません!!ここは蕎麦屋ですよね!?『そう言う』所じゃないですよね!?」

睨み合う重鎮達に〇〇がそう言うと

全員「「「「あぁ、そうか。〇〇は知らないのね?大丈夫、ゆっくりと教えてあ・げ・る。(はぁと)」」」」

重鎮の女性達が〇〇に『コシ』や『汁』が違う蕎麦屋を薦めた理由を体で理解した〇〇だった。

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最終更新:2011年05月10日 22:13