「んっ、今日も届いてるな」
自分、○○が外の世界からこの異世界、幻想郷へと来て結構経つ、
現在は妖怪の多く居る山の中で生活しており、いつの間にか人間だけではなく妖怪や天狗たちの協力などを受け何不自由無く生活していた。
そして、ある時あの新聞の勧誘が来たのだ "花果子念報" それが彼女の発刊していた新聞だった。
彼女の新聞はそれこそ、「二番煎じ」「ネタが古い」などと言われているらしいが、自分は記事の新鮮さなどよりもあの新聞の質素さと明確さに惹かれた。
やはり外の世界に居た頃に読んでいた新聞の様で懐かしく感じられたのだろう。
それにしても今日も彼女の姿を見ることは出来なかった。
新聞の礼を言うにも、数ヶ月ぐらい前から朝起きると新聞だけが玄関に置いてあるだけなのだ。
今度、自ら彼女の家へ行っていつもの新聞のお礼でもするとしよう。
それにしても、最近しっかり戸締りしている筈の窓などが勝手に開いたりしている事が多いけど何故だろう
――――――
「どっ…どうも○○さん…」
「あっ、文さん」
「…あの時の新聞が現像出来ましたので、渡しにきました……」
「ああ、あの時のですか。わざわざどうもです」
彼女は射命丸文という、自分と同じ山に住む鴉天狗である。
一度 "文々。新聞" という彼女の新聞の勧誘を受けたものの、その時には彼女の花果子念報を購読していたため、あえて断った。
それから、色々なことでよく彼女に助けてもらったり、協力してもらっている。
ちなみに、あの時の写真とは、文さんと行った宴会での写真で、自分も彼女も結構酔っていたため、内容はほとんど覚えていない。
「そ、それじゃ、私はもう行きますね…」
「はい、ありがとうございます」
…なんか様子がおかしかったな……
ま、それは置いといて、一体どんな写真だろうか
――――――
はは…今日の○○の寝顔も可愛いかったなぁ……
もう…貼るスペースが無い…
しょうがないな…そこら辺に置いておこ……
ん?新しい写真?私以外に○○の写真を撮ってる人なんているの?
……………!?
えっ?えっなんで?
なんで文と○○が写ってるの?
こんな楽しそうに腕を組んで…これじゃまるで……
………
え なんで なんで
あいつと まるまるが
キスナンテシテルノ?
……はは、そうかあの女の事だしね。○○は誑かされたんだよ。だからこんな…
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサ
――――――
今日も彼女の姿は無く、新聞だけが届いていた。
そして、今日の記事は自分の住んでいる妖怪の山にて、昨夜に起きた事件についてだった。
自分は、その記事を読み、俺は唖然とした。
「射命丸文、何者かに襲撃される」
彼女の新聞にはそう書かれており、内容は題名の通りで、文さんが何者かに襲撃された。
翼は所々引き千切られ、腕・足は無残に折られ、顔や腹部は何度も殴られたような痕があり、
近くに住んでいた白狼天狗に見つかった時には見るも無残な光景だったという。
…何故文さんが襲われたのだろう…確かに彼女は恨まれやすい性格だが、さすがの彼女でも限度ぐらいは分かってた筈だ。
新聞には強い恨みを持った者の犯行ではないかと書かれていたが、やはり自分は何故か引っかかるのだ。
彼女への礼も兼ねて、事件について詳しく聞くとしよう
――――――
「……うるさいわよ!こんな時に!一体誰…」
「あ…間が悪かったかな…?」
「えっ、ちょ…ま…○○……?」
「えっと…いつもの新聞の礼をしたくて…それで…」
「うあっ!えっ!ちょ!ちょっと待ってて!部屋の中片付けるからっ!」
「えっ…はた…」バタン!
…凄い慌て様だったな…やはり間が悪かったのだろうか
~数分後~
・・・・来ないな…
さすがに遅い…ちょっとお邪魔するか……
家の中は人気は無く、奥にある彼女の作業台に様々な物が置かれていただけだった。
その時、台の上に写真のような物が置かれているのを発見した。
「これは…俺の写真…!?」
その写真は明らかに自分の顔写真だった。しかし、その写真は自分の寝顔の様で、もちろん撮られた覚えは無い。
よく台の上を見ると自分の写真で埋め尽くされていた。
寝ている時の写真、
人里へ出かけた時の写真、
家で寛いでいる時の写真、
そして、その中には顔を黒く塗り潰された”誰かの”写真もいくつかあった。
「なんなんだ一体…なんで俺の写真が…」
その時、横の方を見ると異様な雰囲気が感じられる部屋があることに気がついた。
―そして自分は何の迷いも無く、その部屋を開けた――
以上、誤字。
異常だ、本当に異常な光景だった。
あまりにも異常すぎて驚きの声も出なかった。
上を見れば天井が自分の写真で埋め尽くされ、
前、右、左を見れば壁一面が自分の写真で埋め尽くされ、
下を見れば床一面が自分の写真で埋め尽くされ所々写真で山が出来ていた。
「………」
「遂に…見つかっちゃった……」
「!?」
突然の声で慌てて振り向くと、虚ろな瞳で自分を見つめるはたての姿があった。
「はっ…はたて…これは一体「好きだったの」」
「えっ」
「ただ…貴方のことが好きだったの……」
「好き…?」
「うん、好きだったの」
「何故…?これじゃ…まるで気の違った人じゃないか……」
「仕方ないじゃない…只でさえ読んでくれる人が少ない新聞だっていうのに、いつも読んでくれるのは貴方だけなんだもの…」
「…」
「最初は貴方を見てるだけで元気になれた、嬉しかった、でも、私はどんどんあなたに依存してたのよ」
「この写真…」
「そう、その結果がこれなの。もうあなたの顔が一日一度でも見れないともう生きていけない気がして…
そのせいで貴方に近づくアホ鳥をちょっと黙らせちゃったけど」
「まさか!文さんは…!」
「そうよ…ちょっとカッとなっちゃった。それでもしっかり加減して我慢したのよ?」
「でも…全部ばれちゃったね」
「はた…」
はたてが自分に抱きつき温かい体温に包まれる。
「こんなに我慢したけど…もう見てるだけじゃ我慢出来なくなっちゃった…だから……
―――もうガマンしなくてもイイヨネ?
最終更新:2023年01月29日 00:58