最後の盗み編
■紅魔館 大図書館
「それじゃあ借りてくぜ!」
「待ちなさい魔理沙ーーーー!!」
何時もの様に本を盗んでいく魔理沙、それと阻止しようとして失敗する
パチュリー
以前ならここで終る筈だったが最近は違った
「おい魔理沙!」
「あっ○○‥‥‥来てたのかよ」
「奥の方にいたんだよ」
大図書館を出ようとした魔理沙だったが、○○の声を聞きて動きを止めた
「ダメじゃないか本を盗んだら」
「い、いや‥‥借りるだけだって」
「そう言って返した事ないだろ」
「うっ」
魔理沙は先程までの威勢のよさが消え、親に叱られる子供みたいになってしまった
「本をパチュリーに返すんだ魔理沙」
「わ、判ったよ」
○○に言われ、魔理沙は躊躇いも無く文句も無くパチュリーに本を返した
「今回も助かったわ○○、もし貴方が居なかったら魔理沙にまた本を盗まれる所だったわ」
「何時も本を読ませて貰ってるからね」
「ちぇっ」
魔理沙は本を盗め‥‥いや借りれなかった事より、○○とパチュリーが
いい雰囲気なのが面白くなかった
2ヶ月前に○○が幻想入りして、初めて○○と知り合ったのは魔理沙だったのだが
今ではパチュリーの方が○○と仲がよかった
いやパチュリーだけではない、○○は霊夢達ともパチュリーと同じくらい仲がよかった
だから霊夢達ともいい雰囲気になる○○を見た時も魔理沙は不愉快な気分になっていた
○○を愛していた魔理沙にとって当然の反応だろう
霊夢達とまだ○○は恋仲にはなっていない様だったが
魔理沙が何もしなければ、○○が誰かと恋仲になるのは時間の問題かもしれなかった
(このままじゃマズイぜ、何とかしなきゃあな‥‥‥)
○○とパチュリーを見つめながら魔理沙はそう考えていた
2日後 魔理沙の家
魔理沙に呼ばれた○○は彼女の家に来ていた
「よく来てくれたぜ‥‥○○」
「ああ」
2人っきりで会話をするのは久しぶりなので魔理沙は嬉しそうだった
(こ、こうなりゃ先手必勝だぜ)
○○と霊夢達が恋仲になる前に他の誰かが告白する前に自分が○○に告白する
それが魔理沙の考えだした結論だった
「それで話ってなんだい?」
何もしらない○○は魔理沙に尋ねた、そして魔理沙は
「あのさ私‥‥○○の事が好きなんだ‥‥私を○○の彼女にして欲しいんだ」
「えっ」
そんな答えが返ってくるとは思っていなかった○○は驚いた
「私‥‥○○の言う事だったら何でも聞くよ‥‥‥」
「食事だって作るし、掃除もするし、洗濯だってするし、仕事も手伝うよ」
「お、お風呂だって一緒に入ってもいいし‥‥そ、その‥‥何時でも抱かせてあげるから‥‥‥」
「お願いだよ‥‥私を○○の彼女にしてくれよ‥‥して下さい」
魔理沙は沢山の言葉を口にしたが、それに対しての○○の言葉は
「ごめん、魔理沙を彼女には出来ない」
それだけだった
「あ‥‥あああ‥‥‥」
魔理沙は○○が何故そんな返答をしたのか判らなかった
だから理由が知りたかった
「ど、どうしてだよ○○!!」
「人の物を盗んでばかりの魔理沙を彼女になんか出来ないよ」
「そ、それは‥‥借りてるだけで‥‥‥」
「俺が止めた時は返してたけど、それ以外の物は全く返してないじゃないか!!」
魔理沙は○○に窃盗を目撃された時は止めて返していたが
○○がいない時は普通に窃盗をしていた
無論○○は魔理沙に窃盗を止めるように、今まで盗んだ物を返す様に言ったが
魔理沙は聞き入れなかった
「これからは何もしないって!借りてた物も返すからさ!!」
何とか○○の彼女にして貰おうと魔理沙は必死だった
「悪いけど信用出来ないよ!今までだってこの事は何回も言ったのに聞かなかったじゃないか!!」
「そ、そんな‥‥‥」
魔理沙の必死さは○○には伝わらなかった
「俺、帰るよ」
「待ってくれよ!○○ーーーー!!」
○○は待たなかった、そして帰っていった
「そんな‥‥そんな‥‥○○ーーーーーー!!」
魔理沙はただ1人、涙を流しながら絶叫した
5日後 魔理沙の家
あれから5日経つが、魔理沙は家から出ようとはしなかった
アリスや
にとりが尋ねては来たが相手にはしなかった
「○○‥‥○○‥‥○○‥‥○○‥‥○○‥‥‥」
魔理沙は○○の名を呟くばかりだった
(私はダメだった‥‥だったら霊夢達はどうだろう‥‥いい雰囲気だったし)
(よく考えたら‥‥私とあんないい雰囲気になった事はなかったなあ)
(○○の彼女になるのは誰だろう、誰だろう、誰だろう、誰だろう、誰だろう
誰だろう、誰だろう、誰だろう、誰だろう誰だろう、誰だろう、誰だろう
誰だろう、誰だろう、誰だろう、誰だろう誰だろう、誰だろう、誰だろう
誰だろう、誰だろう、誰だろう、誰だろう誰だろう、誰だろう、誰だろう)
(誰かって‥‥私に決まってるじゃないか‥‥私以外なんて‥‥‥)
魔理沙は○○を諦める事は出来なかった、そして正気じゃなかった
(物を盗んでばかり私を彼女には出来ないって‥‥じゃあやめてやるよ‥‥‥)
(でも最後に盗ませて貰うぜ‥‥あれを盗まないと‥‥盗みをやめるのは無理だしなあ‥‥‥)
今まで『死ぬまで借りる』というのが口癖だった魔理沙が初めて『盗む』を口にした
死んでも返さない、盗むつもりなのだ
1週間後 博麗神社
博麗神社では、もう何回目ともなる宴会が開かれていた
今回の主催者は魔理沙だった
「これだけの酒を用意するなんて、魔理沙ってばやるじゃない」
魔理沙の用意していた酒に霊夢はご機嫌だった
「それで主催者の魔理沙は‥‥‥」
「急用で来れなくなったって」
「そうか‥‥‥」
霊夢に魔理沙の事を尋ねたのは○○だった
魔理沙の告白を断ってから○○は魔理沙とは会っていなかった
「そう言えば、永遠亭の人達も来ていませんねお嬢様」
「まあ、あいつらは参加しない事が多いし不思議な事じゃないわ」
レミリアと咲夜が話した通り、永遠亭のメンバーは参加していなかった
だいたいの理由が輝夜のゲームが原因で、主人を置いて参加する訳にはいかなかったのだ
「永遠亭の人達か、幻想郷に来てまだ会った事なかったな」
「そんな事より飲みましょうよ」
「○○、私が注いであげるわ光栄に思いなさい」
「レミィ、抜け駆けは許さないわよ」
「私も注いであげるわ、17歳の美少女に注いでもらえるなんて幸せ者ね」
霊夢がレミリアがパチュリーが紫が○○に酒を注ごうと近寄ってくる
彼女達だけではない、○○に好意を持っている者は魔理沙を除いて全員がこの宴会に参加している
宴会参加者全員が○○に酒を注ぐだろう、そしてそれ以上に彼女達は酒が無くなるまで飲み
全員が飲み過ぎて寝てしまう、これは何時もの事だった
2時間後 博麗神社
酒もつまみも全て無くなり宴会参加者全員がその場で眠っていた、立っている者は誰も居なかった
「何時も通り全員が眠っているな」
宴会に参加しなかった魔理沙が既に終了した宴会の場に現れた
「確かに盗ませてもらったぜ」
「行こうか○○」
○○を抱えて魔理沙はその場から消えた
2週間後 魔理沙の家
「帰ったぞ○○」
「お帰りなさい魔理沙さん」
用事を終え帰宅した魔理沙を○○が迎える
「魔理沙って呼び捨てでいいって」
「そんな魔理沙さんは命の恩人で、この家に住ませてもらってますし」
「そんな事、気にすんなって」
2週間前、宴会を主催する前に魔理沙は永琳からある薬を入手した
もちろんタダではなく薬の調合に使える珍しいキノコ数本との交換だったが
宴会で出た酒にはその薬が入っていた、薬の効果は一定期間の記憶消去である
効果が表れるのには少し時間が掛かる薬だが、あれだけの酒を飲めば3ヶ月間の記憶は消えているだろう
永遠亭のメンバーがあの時の宴会に参加しなかった本当の理由はこれだった
2ヶ月半前に幻想入りした○○の事を宴会参加者全員が忘れてしまい
○○自身も幻想郷での生活全てを忘れてしまった事になる
○○に振られた魔理沙は最初からやりなおす為に、恋敵達を何とかする為に
○○を含めた宴会参加者全員の3ヶ月間の記憶を魔理沙は盗んだのだ
「2週間前に森で倒れている○○を見つけた時は驚いたぜ」
「幻想郷という場所に飛ばされた事を知った俺の方が驚きましたよ」
「そうだったな」
2週間前までは○○に好意を持つ者が沢山いたが、今は魔理沙1人だけである
魔理沙の恋敵は誰もいない、みんな○○の事を忘れてしまったのだから
「借りてた物を全て返し終えたし、しばらくは家にいる時間が増えるぜ」
「それはよかったです魔理沙さん」
「だから呼び捨てで呼んでくれって」
魔理沙はパチュリー達から死ぬまで借りる筈だった物を全て返した
3ヶ月間の記憶を失っている○○は今の魔理沙の事を窃盗犯だとは思っておらず
返却期間が来たので借りていた物を返した約束を守る人だと思っていた
約束を破って借りていた物を返さない連中は沢山いるだろう、それをしない魔理沙を○○は尊敬していた
これで魔理沙が盗んだ物は3ヶ月間の記憶だけとなった、○○の事は盗んだとは思っていないようだった
3ヶ月間の記憶を失った○○とも、このままいけば恋仲になれるだろう
魔理沙が盗みをやめるには○○を手に入れる必要があった
○○さえ居れば、本も道具も他の物な何もいらないと考えていたからである
(○○さえ居てくれたら私は何もいらないぜ‥‥何も‥‥何も‥‥何も‥‥‥)
(はははははは‥‥はははははは‥‥‥)
魔理沙は心の中で笑っていた、ずっと‥‥‥
感想
最終更新:2019年02月09日 08:18