愛知縣教育會編『愛知縣郷土篇』第一篇第一課「恵まれた風土」

『愛知縣郷土篇』第一篇第一課「恵まれた風土」

出典:愛知縣教育會編『愛知県郷土篇』(1940年)

  • 我が愛知縣は、尾張三河の兩國から成り、東は靜岡縣に、北東は長野縣に、北及び西は岐阜縣に、西の一部は三重縣に境し、南は太平洋及び伊勢海に臨み、中部日本に於ける産業交通の中樞地である。面積五百萬平方粁、人口約三百萬を算し、縣廳は名古屋市に在り、名古屋一宮瀬戸半田(以上尾張國)・豐橋岡崎(以上三河國)の六市及び愛知東春日井西春日井丹羽葉栗中島海部知多(以上尾張國)・碧海幡豆額田西加茂東加茂北設樂南設樂寳飯渥美八名(以上三河國)の十八郡を管してゐる。
  • その地勢は、尾張と三河とは趣を異にし、尾張は全面積の十分の四が山地で十分の六が平野であるが、三河は十分の八が山地で平野は十分の二に過ぎない。尾張にありては、北東から三河の國境にそつて丘陵が起伏して南に走り、知多半島となり、三河灣と伊勢海とを分つてゐる。西南は木曾川庄内川の流域で、一望遮ぎるものもない所謂尾張平野であつて、濃尾平野の一部を成してゐる。
  • 三河は、北部にありては、美濃・信濃の山脈連亙して、北設樂郡碁盤石山千百九十九米を本縣の最高として一千米以上の山岳をなすものも少くないが、峻峰屏立する嶮は稀であつて、爲に交通の利便を害されることは少い。その脈は起伏し、矢作川大平川豐川がその間の水を集めて三河灣に注ぎ、碧海・幡豆・寳飯地方の平野をつくつてゐる。
  • 本縣は、南方の沿海地方には濱木綿の如き熱帶性植物を生ずる所もあり、北部山地には落葉松の如き寒帶性の植物を見る所もあるが、氣候概して温暖であり、風穏かに水澄み、地味亦肥沃で、加ふるに水陸交通の便よく、この恵まれた風土は、古来幾多の歴史上著名な人物を出し、且又各種の産業に適し、その發達著しきものがある。
最終更新:2008年12月14日 19:27
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