エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc
――シーン.1
薄暗い部屋だった。
蝋燭の揺れる炎に、室内の全てが照らされている。
魔法陣が、異教の祭器が、魔術の礼装が、炎によって浮かび上がっていた。
そして部屋に唯一設えられた窓からは、不気味な程に明るい紅い月が、空に浮かんでいるのがはっきりと見えている。
紅い月。
現在では単なる光学現象と捉えられるそれは、しかし古来は『異界の月』――現世からここではない場所を覗く窓であった。
「私はベルゼブブ。
全てが貴方と表裏一体……お忘れなきよう。――なんてね?」
その紅い月を背負って、一人の少女が佇んでいた。
紺色のブレザー――おそらく、何処かの高校の制服だろう――その上に、異国風のポンチョを羽織った少女だ。
艶のある銀の髪、輝く緋色の瞳、人形のように整った美貌。
一見すれば、衆目を魅了する美少女である。
だが、二目と見ればそのような印象は消え失せる。その少女には、現実味が、人間としてのにおいが皆無だった。
――異界の美貌であった。
そして、その少女に相対する女性もまた、異界の美貌の持ち主であった。
奇しくも少女と同じく銀髪、煌めく金の瞳。
エレベーターガールのような蒼い衣装も、その美貌と奇妙な調和を作り出していた。
彼女の名はエリザベス。ベルベットルームの住人――だった。今は、そうではない。
「ベルゼブブ……ですか?」
「ご不満ならベルゼブブでもベル・フライでも飛田鈴でも、好きに呼んだらどうかしら。
貴女が一番馴染みのある名前で名乗ってあげただけだしね。
で……わざわざ呼び出して、用事は何かしら? 今は気分がいいし、Talk(お話)くらいはしてあげてもいいわよ?」
彼女の問いかけに、自らをベルゼブブ――『蝿の魔王』と名乗った少女は軽く笑みながら答える。
生きるモノ全てを嘲るような、或いは玩具を眺めるような、そんな笑みだった。
しかしそれを気にかけた様子もなく、彼女は少女に問うた。
「貴女が噂の“願いを叶える紅い月”という事でよろしいのでございましょうか」
噂。
それは最近街でよく聞かれる、よくある類の都市伝説だった。
『願いを持った人間だけが、特別な紅い月を見ることができる』
『その紅い月を見た人間は、月へと運ばれ、そして願いを叶える事ができる』
なんという事はない、殆どの人間は一笑に付すような御伽噺だ。
しかしエリザベスは、その御伽噺に目を付けた。
『月』、そして『願いを叶える』。彼女はこの二つの符合に望みを賭け、そして、儀式に臨んだ。
「違うわ。この『紅い月』は私の世界の月であって、『通り道』ではないもの。
けれど、その『通り道』を作ってあげる事はできる。望むなら、今すぐにでもね」
そして、その賭けは正しかった。
『紅い月』は、『願いを叶える月』へと至る道筋であり、また望みを抱く者を選り分ける選別者だった。
「では、その通り道を作って頂いてよろしいでしょうか」
「ええ、いいわよ」
エリザベスの要求に、少女は即答する。
数瞬の間。
その後に、エリザベスは言葉を続けた。
「悪魔という物は取引に代価を要求すると聞きましたが、代価の方は要求されないのでしょうか?」
彼女の疑問も尤もである。
悪魔とは呼び出した者を誘惑し、堕落させる者だ。それが取引に代償を要求しないなど、不気味にも程がある。
「言ったでしょ? 今の私は気分がいいのよ」
――当然、少女はそれ以上を答えない。
何らかの企みがあるのか、もしくは本当に『気分がいいだけ』か。
或いは、こうして選択肢を突き付ける事も魔王の愉悦の内であるのか。
しかしどれであるにしろ、彼女の選択肢はそもそも一つしかない。
「わかりました。では、道をお願い致します」
元より、それだけが望みなのだから。
「……ふふ。なら、その紅い月を見つめなさい。その向こう側に、紛いモノの月が――そして、紛い物の街が見えるでしょう」
少女に促されて、エリザベスは窓の外の紅い月を見つめ――そして、その向こうに浮かぶ偽りの街を見た。
――『彼女達』が現れる時に浮かぶ『紅い月』は、『彼女達』が封印された異世界の月だという。
ならば。そこからまた更に別の異世界へと飛ぶ事も、お膳立てによっては不可能ではない。
――空に浮かんだ紅き月<しるし>の導きは時空<とき>を越え、異界の夜へとエリザベスを飛び込ませていった。
↓↓↓
――シーン.2
次にエリザベスが目を覚ました時には、彼女は既に桜の花弁舞い散る校庭に佇んでいた。
「聖杯戦争、でございますか」
『聖杯戦争』の
ルールは、既に彼女の頭の中に入っている。
「不可思議ですが、そういうものなのでしょう」
いきなりの異常事態にも、彼女は平静そのものだ。
元より、奇跡の願望機の奪い合いである。
何が起きても不思議ではないと、エリザベスは最初から合点していた。
「……はて。私のサーヴァントはどちらでしょうか」
次に彼女は周囲を見渡して、自らのサーヴァントの姿が見えない事に気が付いた。
聖杯戦争は、マスターとそのサーヴァントが戦う争いの筈である。
だというのに、エリザベスのサーヴァントはその姿を見せていない。
「それも不可思議ですが……ここは、学校でしょうか?」
『輝明学園』。
周囲の様子から読み取るに、ここはそのような名前の学校らしい。
「学校に来たのは、あの方に案内してもらって以来ですね……おや?」
不意に違和を感じて、エリザベスは空を見上げた。
彼女にもはっきりとわかる、大きな『力』が動いている。
「これがサーヴァント、というものでしょうか……しかし、これは」
言うが早いか。
彼女のサーヴァントは空の上から落ちて――いや、『下がって』きた。
↓↓↓
――シーン.3
「ぬぅぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
エリザベスの頭上に、唐突に影が差した。
影は、人の形をしていた。
「あらあらまあまあ」
驚きの声と共に、エリザベスはその場から飛び退がる。
一瞬前まで彼女が立っていた場所に、1m近い砂煙が立った。
「おやおや」
「おやおや、じゃねーよっ!」
口に手を当てて驚きのリアクションを見せるエリザベスに抗議するように、男が砂煙の中から飛び出した。
砂煙の高さから見て相当な高さから落ちた筈だが、その姿は無傷そのものだ。
纏ったコートにも、砂埃一つついてはいなかった。
「おや、無事でございましたか」
「そりゃまぁ、ウィザードには月衣<カグヤ>があるし、そもそもサーヴァントだから単純な物理攻撃じゃ傷付かないしな……ってそうじゃねーよ!
人が落ちてきたのをさくっとスルーするんじゃねぇ! せめて心配くらいはしろよ!」
「それはまあ、置いておきまして」
「置くんじゃねぇよ!?」
食って掛かってくる男をいなしながら、エリザベスは質問する。
「あなたが私のサーヴァントという事でよろしいのでしょうか?」
「ん……ああ。そうだよ、セイバーのサーヴァントだ。
……何が悲しくていきなりマスターにぞんざいに扱われなきゃいけねぇんだ、アンゼロットを思い出すぜ」
男――エリザベスのサーヴァント、セイバーは、おそらくは彼の生前の知人の名前をぼやきながら、何処からか己の『宝具』を取り出す。
――それは、2m超の諸刃の大剣であった。刃には何らかの魔術的な意匠を伴ったルーンが刻まれており、片手でそのような大剣を振り回す姿は、確かに『英霊』に相応しい、と見てもおかしくはない。
「……ほう」
エリザベスも、その姿には思わず息を呑んだ。
――正確には、その魔剣に含まれた因果に目を惹かれた。
「神殺しの剣、というわけですね。実際に見たのは初めてです」
「……わかるのか?」
「なんとなくでございますが。そのような剣を持っているのならば、私のペルソナ全書から……あら?」
エリザベスはそこで言葉を切ると、ぱたぱたと自らの身体を検める。
普段から彼女が持ち歩く、一種のシンボルと言ってもいい全書は、そこには見当たらなかった。
「いけません。ペルソナ全書をどこかに落としたようです」
「……おい、それ大丈夫なのかよ」
声にどこか不安げな色を滲ませながら、セイバーはエリザベスに問うた。
今のエリザベスの状態は、魔剣を落とした魔剣使いのようなものだ。
その辛さは、セイバーにも身に染みてわかっている。
「問題と言えば問題ですが、しかし願いを叶える為ならばこの程度は乗り越えなければならないでしょう」
「……そりゃそうだが。でも、願いを叶えるって言っても別のやり方もあるんじゃないのか?」
セイバーが、やんわりと『戦う以外の方法を探すべきではないか』と提案した。
これはマスターを慮ってのみの一言ではない。
『紅い月』。それはセイバーにとっては、『敵』の浮かべる闇の印である。
それが浮かび続けるこの『月』は、このセイバーにとっては『不気味』、あるいは『警戒』の対象だった。
偶然の一致だと思いたいが、この聖杯戦争が『彼女達』の遠大な計画の一部ではない、という証拠はないのだ。
この聖杯戦争のルールに従って殺しあうのは、正直――彼の良心においても――あまりやりたくはなかった。
「いいえ。これが唯一の望みでございます」
そのセイバーの提案を、エリザベスは遠回しに、しかしはっきりと拒絶した。
彼女は既に、どのようなリスクを置いてさえ、この『聖杯戦争』に願いを託す事を選択している故に。
「……あんたの願いって、なんだよ」
「とある方を救う為でございます」
そう。“彼”。
“月”に封じられた死そのものに抗い――全てを賭して封印した、とあるペルソナ使い。
如何なる手段を用いても、彼の魂を救う事。
それが今のエリザベスの“意義”であり――それ以外に、意義はない。
「……そうかよ」
そして、その決意を察して、セイバーは嘆息した。
――セイバーとて、歴戦の英雄である。
戦友との別離は、一度や二度では数えられない。
その中でも、“星”を止める為に戦い、そして使命を果たして消えたある勇者の事は、今でも記憶に残っている。
そして彼は、
「わかったよ。あんたと一緒に戦ってやるさ」
英雄故に、自らのマスターを見捨てられないのだ。
「ありがとうございます。……ところで、あなたのお名前……真名の方をお伺いしてよろしいでしょうか」
「あれ? そういや、言ってなかったか……柊蓮司だ。よろしく頼むぜ、マスター」
名乗りながら、セイバーは己のマスターに手を差し出した。
――ここに契約は成立した。
彼女達はこれより、夜の闇纏いて魔都を行く。
↓↓↓
「……しかし私、弟を持った事はありますが、従者を持ったのは初めてでございます」
「弟と従者を同列に扱うんじゃねーよ! 弟をなんだと思ってんだっ!」
――The World is Critical.
NightWizard.
【クラス】セイバー
【真名】柊蓮司@ナイトウィザード
【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷C+ 魔力D 幸運E 宝具B
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
セイバーのクラスのサーヴァントでこそあるが、活躍した時代が現代に近すぎるため対魔力のランクはそこまで高くない。
騎乗:C
魔法使い<ウィザード>としての“箒”への騎乗能力。
己の箒へと騎乗している間、敏捷ステータスを1ランクアップさせる。
――なお生前の経歴から“宇宙戦艦への搭乗能力”を所持しているが、セイバーはそんな物は持っていないし、そして宝具に追加されるような事もない。
【保有スキル】
魔剣使い:A+
たった一つの魔器を相棒とし、その力を全て引き出す能力を持つ。
魔剣を所持している限り、全てのST判定で成功率を上昇させる。
ただし魔剣を失った場合、全てのステータスが1ランクダウンする。
魔力放出(プラーナ):B
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
セイバーの場合、「プラーナ」と呼ばれる生命エネルギーを放出する。
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
下がる男:A+
学年、レベル、年齢など、あらゆる物が下げられた逸話に基づくマイナススキル。
ステータスの低下等「下がる」判定の対象となった場合、判定無しでそのバッドステータスを受けてしまう。
もはや一種の呪いの域。というか、実際に「柊力」というパワーとして観測された事すらある。
【宝具】
『裏切りの飛龍(ワイヴァーン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1人
セイバーの無二の相棒たる「魔剣」。
元の形状はバスタードソードであったが、幾多の戦いを経て現在は科学と錬金術を取り込んだ「箒<ウィッチブレード>」として鍛え直されている。
外見は二メートル長の大剣だが箒としての騎乗機能も備えており、騎乗したままの高速突撃が可能。
500年前に“碧き月の神子”を殺害するのに用いられた(正確には神子が自害するのに用いられた)という曰くが付いており、その際のいきさつから「神の如き力や運命を持った存在を絶ち切る」という力を付与されている。
この逸話から、【神性・あるいはそれに準ずる能力を持つ存在の再生・復活能力を無効化する】という能力を持つ。
『三千世界の剣』
ランク:- 種別:対人魔剣 レンジ:1~15 最大補足:15人
数多の自らの魔剣の同一存在を並行世界から呼び出し、一斉攻撃を行うこのセイバーの絶技。
本来宝具ではないが、「並行世界より自らの宝具の同一存在を呼び出す」という第二魔法に近い特性を持つ。
【weapon】
『裏切りの魔剣(ワイヴァーン)』
『月衣(カグヤ)』
全てのウィザード・侵魔が持つ一種の個人用結界。
「常識を遮る能力(常識内の法則による攻撃を全て遮り、宇宙空間などでの活動も可能となる)」・「月衣の隙間に物を格納する能力」の二つを持つが、どちらの能力もサーヴァントとして召喚されている現状ではたいして役に立たない。(サーヴァントに単なる物理攻撃が通じないのは当然だし、余計な品を持たない限りサーヴァントは武器ごと霊体化できる)
本来ならこれに加えて「月匣」という対界結界を展開する事が可能だが、セイバーというクラス適正に準じてその機能はオミットされている。
【人物背景】
「ファー・ジ・アース」と呼ばれるパラレルワールドの地球を守護する魔法使い<ウィザード>の一人。(『ナイトウィザード』の世界では常軌を逸した特殊能力を持つ人物は職業魔術師でなくともウィザードと称される)
幾度となく世界の危機を救った歴戦の勇士であり、ウィザードの世界では有名人の一人である。……色々な意味で。
高校生時代の様々な事件の顛末(3年生から1年生に学年が下がった、レベルが下げられた、年齢を下げられて少年化した)から「下がる男」とも呼ばれており、半ば不名誉なあだ名として定着してしまっている。
また度重なる任務で高校の単位が非常に危うく、通学中に拉致される光景は一時期の定番のパターンと化していた。
ただし、それでも自分の事を不幸となど思っていないと本人は言う。
最終的に高校を卒業する事に成功したが、周囲には殆ど信じられておらず都市伝説扱いされている。
総じて散々な目に遭う事も多いが、目の前の世界の危機や人間を見捨てる事のできない快男児である。
余談だが、柊京子という姉がおり、姉には頭が上がらないらしい。
【サーヴァントとしての願い】
なし。できれば地下迷宮に飛び散った自分の卒業証書を取り戻したいが、そんな事の為に聖杯を使ってもなぁと思っている。
【マスター】エリザベス@ペルソナ3
【マスターとしての願い】
彼(主人公@ペルソナ3)を救い出す。
【weapon】
『ペルソナ全書』
心の海より出でしペルソナを記録し、管理する為にエリザベスが所持する本。
彼女との戦いの際には強力な武器としても使われる。攻撃属性は打撃。
……その筈なのだが、どういうわけだかなくしている。
【能力・技能】
『ペルソナ能力』
ペルソナ全書を用いて、記録されたペルソナを召喚する事ができる。
ただし、ペルソナ全書をなくしているため使用できない。
【人物背景】
主人公のみが行けるベルベットルームで働く謎のエレベーターガール。
力を管理するものという役職(?)らしい。
主人公のペルソナ使いとしての素養が高い事を認め、本編5月以降、数々の個人的な依頼を頼んでくるようになる。
どうも外の世界に強い興味があるようで、その内容は「○○の名物を取って来て」等珍妙なものも多い。
主人公に対して強い興味と執着を持っており、「P4U」においてはベルベットルームを留守にし主人公を助けようとしている、と語られている。
余談だが、テオドアという弟がおり、弟を振り回しているらしい。
【方針】
如何なる手段を用いても願いを叶える。戦いであっても、それ以外でも。
最終更新:2015年01月12日 01:18