神隠しの物語・再 ◆ACfa2i33Dc
昔**の国(後の**県)の村に住む若者が、山菜を採る為に山へと入った時にこんな事があった。
若者が山を分け入る内に、見た事もない豪華な屋敷に行き遭った。
この山の事は隅々まで知っている筈の若者が知らない屋敷に、いぶかしみながら周囲を探ってみたが、人の気配がまるでない。
中を覗いてみたところ、居間の囲炉裏は赤々と炭火が起こっていた。
ますます怪しんで中へと入り、屋敷の中を見て回ったが、人の姿はどこにもない。
だと言うのに、屋敷の中はまるで直前まで人が住んでいたかのようで、座敷には食事の準備まで整えられていた。
まるで神隠しのようだと思った若者は恐ろしくなり、一目散に屋敷から逃げ出し、どこをどう走ったかもわからないまま、ようやく見知った道へと着く事ができた。
村へと帰った若者は村人に山奥の屋敷について聞いて回ったが、誰も知っている者はいなかった。
若者はそれからも何度も山奥へと入ったが、あの屋敷も神隠しにあったかのように、ついに見つける事はできなかったということだ。
――**県の民話
妖怪らしい妖怪と言えば、まず八雲紫の名前が挙げられるだろう。
この妖怪は、根源に関わる能力の危険さもさる事ながら、神出鬼没で性格も人情に欠け、行動原理が人間とまるで異なっている事等、まず相手にしたくない妖怪である。
姿は特に人間と変わりはない。派手な服装を好み、大きな日傘を使う。
主な活動時間は夜で、昼間は寝ている。典型的な妖怪である。
また、冬は冬眠していると言われるが、本人の談だけで実際は何処に棲んでいるのか確認取れていないので、真偽の程は定かではない。
古くは、幻想郷縁起阿一著の妖怪録にも、それらしい妖怪が登場している。その時代にあった姿で現れるという。
――稗田阿求『幻想郷縁起』より抜粋
*
桜が散っていた。
ビルの合間を縫って吹いた風に乗って花弁が散り、宙を舞う。
ざわ、
と桜の香を乗せた風が、東京の街を吹き渡っていく。
全ての者が足早に通り過ぎ、見る者のない東京の片隅で繰り広げられる一種幻想的な光景。
その桜の樹の根元に、空目恭一は凭れ掛かっていた。
「想定外だ。そもそも、想定も何もあった展開ではないが」
「ご不満かしら?」
「当然だ」
空目の周囲に、人の姿はない。
……だというのに、その言葉に答える声があった。
声はおそらくは成人した女性のもので、その女性の持つであろう蠱惑的な雰囲気を声だけでも感じ取る事ができる。
しかしそれと同時に、その声だけで『まともな存在ではない』と理解できてしまうのだった。
「聖杯戦争。魅力的な話だとは思えなくて、魔王陛下?」
「一言で言えば胡散臭い。存在そのものが疑わしい」
くすくすと笑う女性の声の聴こえる方へと顔を向けて、空目は鬱陶しげに言葉を放つ。
「“聖杯”。聖書における“主の血を受けた器”の事だ。
“聖杯伝説”は中世西ヨーロッパを中心に、世界中に存在する。騎士物語の定番のモチーフだ。
だが、“聖杯戦争”……あるいは、それに類似した物語は聞いた事がない」
「ですから信憑性がない……と、そういうわけかしら?」
「無論俺がこうしてここにいる以上、何らかの超常的な現象が起きているのには否定の余地がないだろう。ただし、それが“聖杯”であるかは大いに疑問符が付く。
聖杯戦争そのものは“聖杯を手に入れる為の苦難”をモチーフにしているのかもしれないが、しかしそれが目的ならば競争式であれど殺し合いである必要性はない。
“閉鎖空間における殺し合い”である事に意味があるとするならば。その最も安直なモチーフは、“蟲毒”だ」
「私達は、誰かに壷に放り込まれた蟲であると?」
「その可能性はあるという事だ。どの道聖杯が本物であるとして、今ではもう興味もないがな」
「あら、淡白。クールに見えて、こんなところに連れて来られて怒り心頭なのかしら?」
「勘違いをするな。不満を持ってはいるが、怒ってはいない。
更に言えば、俺が不満なのはこのような場所に連れて来られた事ではない。俺といる“神隠し”が、お前である事だ」
空目がそう言った時、気配が
くすり、
と笑った。……そして次の瞬間、目の前の空間が『割れた』。
まるで、空間の『隙間』を開いて世界の裏側を開いてしまったかのように。
そして、その『隙間』の向こうには、一人の女性の姿が見えていた。派手な衣装に、大きな日傘。ある種の人間離れした、金髪の美貌。年頃は少女にも、あるいは老婆にも見える。
「あら、フラれてしまいましたわ」
その女性は先程までの声と同じように、くすくすと笑いながらそう言った。
妖艶な笑みだった。それがこの世のものではないと知りながら、それでも惹かれてしまう者がいるような、そんな笑みだった。
「当然の話だ。あれは俺の所有物だ、勝手に持っていかれる謂れはない。そもそも、お前に俺の道案内はできないだろう」
「くふ、それは道理ね」
そんな笑みを浮かべる女性に、空目はにべもなく拒絶に近い言葉を言い放つ。女性はしかし、残念そうな素振りもしなかった。
「幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話ですわ」
「“神隠し”に誘われ、“隠れ里”に辿り着く、か。あまりにもそのままだな」
「あなたは道案内がいるから不要かしら?」
「何にしろ、その道案内を探さなければならん」
そう言うと、空目はむくりと起き上がった。
痩身に纏った黒いコートが、風に靡く。
「こうなった以上、お前にも手伝ってもらう。いいな? アサシン」
「仰せのままに、魔王陛下」
空目恭一と、八雲紫。
『神隠しの被害者』と、『神隠しの主犯』。
彼らが求めるのは、『神隠し』。
――枯草に鉄錆の混じった匂いが鼻に届いた気がして、空目は鼻をすん、と動かした。
【クラス】アサシン
【真名】八雲紫@東方Project
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具?
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
気配遮断:A++
『神隠し』。
自身の気配を消す。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
ただしスキル『神隠しの主犯』との組み合わせで、特定の行動に限り気配遮断のランクを保ったまま行動できる。
【保有スキル】
神隠しの主犯:A++
幻想郷で神隠しと呼ばれる現象を境界を操作して起こす犯人。
神ではなく、妖怪少女の仕業。
宝具である『境界を操る程度の能力』を使用する時に限って、気配遮断の効果を持続させたまま行動する事ができる。
妖怪:A
人間に畏れられ、人間に退治される存在。
与えられる物理ダメージを低減し、その代わり精神干渉を受けた場合ダメージ化する。
また、ある種の信仰を集める存在である事から、Eランク相当の『神性』スキルの効果を内包する。
飛行:C
空を飛ぶ能力。
ふわふわと浮遊するように飛翔する。
【宝具】
『境界を操る程度の能力』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:?人
八雲紫の持つ、『「境界」と名の付くものならほぼ何でも支配下に置く事が出来る』程度の能力。
本来は『全ての事象を根底から覆す能力』、『論理的創造と破壊の能力』であるらしいが、アサシンはマスターにより『神隠し』の面を強く現界させられているため、『空間の境界を操ってスキマを作る』という用途にしか使用できない。
このスキマの中は一種の亜空間のようになっており、多数の目が見える。これは外の世界の「欲望が渦巻いている様子」と言うイメージの表れ。また道路標識などの漂流物が漂っている事もあるが、これも「外の世界の役に立たない物」としてのイメージから来るもの。
これにより離れた空間を繋げる事が可能。
『神隠奇譚(ネクロ・ファンタジア)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:? 最大補足:?人
アサシンの持つ『神隠し』という特性が、マスターである『神隠しの被害者』空目恭一により偏向され、希釈され、そして尖鋭化した事により発生した宝具。
『アサシンの真名を知っている犠牲者』を、『異界』へと連れ去る。
この『異界』はアサシンによって作成される限定的な陣地であり、『赤い空』をした現世と同じ場所に同じ状態で重なり合って存在している。
脱出はアサシンと同じように空間を操る術か、あるいは結界破りの術がない限り不可能である。
『真名を知っている者に害を与える』という、聖杯戦争の常識の逆を行く道具。
【weapon】
『なし』
ただし、前述したスキマの中に漂う物体を武器として扱う事ができる。
【人物背景】
神隠しの主犯。スキマ妖怪。
本来のクラスはキャスター。このため式神や自在に扱える結界のスキルを失っている。
【サーヴァントとしての願い】
女性には秘密があるものですわ。
【マスター】空目恭一@Missing
【参加方法】不明。
【マスターとしての願い】ない。
【weapon】ない。
強いて言うならば豊富な知識。
【能力・技能】
“異界”の匂いを覚えている嗅覚。
【人物背景】
神隠しの被害者。
【方針】
あやめを探す。
最終更新:2015年01月20日 05:18