鷲巣巌&セイバー ◆UUn.BEaX4M
燃える……燃える……国が燃える――――――
燃える……燃える……俺が燃える――――――
男が、女が、老人が、子供が、木材が、鉄が、国土が。生物と無機物が一緒くたに焼ける臭いが絶えず鼻腔を刺激し、熱波が肌を伝っていく。
頭が、胴体が、いや、全身が好き勝手に炎に喰らわれていく。もはや感じ取れるのはただただ熱さと僅かながらに肉の焼ける臭いだけ。
二人の男は目の前の業火をその目に焼き付けていた。
一人は昭和の世にて燃え上がる帝都を見つめ、もう一人は新時代となる明治が始まろうかという時に自らを焼く火を目にする。
男たちは、半世紀以上もの年月を隔てているにもかかわらず、赤黒い炎が起こす熱と臭いに同種の高揚感を味わっていた。
■ ■ ■
びゅうびゅうと絶え間なく夜風の吹く高層ビルの屋上に、一人の男が突如として出現した。
語るまでもないが、彼は今回の聖杯戦争に呼び出されたサーヴァントの一柱である。
彼のクラスを示す腰に差す刀や、藍染めの着流しも目立つが、何よりも全身に広がる火傷を包帯でぐるぐる巻きにして覆い隠した姿が嫌でも注目を集めそうな男だった。
「よお、あんたが俺のますたーかい?」
前方で自分に背を向けて立っている男にセイバー――志々雄真実は無造作に話しかけた。
敬意の欠片もない口調だが、この男は端から誰かへの敬意など持ち合わせていないのだから仕方ない。
一方、問い掛けられたスーツ(一見した限りでは高級品)を着た男は志々雄に一瞬だけ目を向けると、再び視線を前方に戻してしまう。
お前など眼中にないとでも言いたげな態度だ。
とはいえ志々雄も自分のような反英霊を呼び出してしまう人間に、まともな人格など期待していない。
なので特に反応は返さず、つかつかと男に歩み寄っていく。
ビルの端近くに立つ男の隣にまで行くと、同じように金網越しに広がる眼下の光景へと目を向ける。
サーヴァントの発達した視界に映るのは数え切れないほどの人工の煌めきと建築物、更にNPCという紛い物の人々の群ればかり。
一通りの現代知識は聖杯から与えられているのでさして驚きはないが、それでも実際に聞くと見るとでは大違いだった。
明治の世とはまるで違う街の有り様を、志々雄が興味深げに眺め回していると、
「……どう思う?」
男が始めて口を開いた。
「何がだい?」
「言わねば分からんのか?」
志々雄の問い返しに、男は軽く鼻を鳴らす。
英霊とはそれほど鈍感なのかと暗に言っているらしい。
普通の英霊なら怒りを露わにしてもおかしくないが、志々雄は男の傲慢な態度に面白そうに頬をつり上げた。
ちらりと横目で見てみると、男は相変わらず仁王立ちのまま市街地に猛禽類を思わせる鋭い視線を送っている。
オールバックに撫でつけられた黒髪と深いほうれい線の刻まれた強面の顔付き、更に本物の仁王像もかくやとばかりにスーツを押し上げる筋骨隆々とした肉体。
そして、ただ居るだけで存在を意識せざるを得ない威圧感。
誰が見てもただ者ではないと分かる。少なくとも堅気ではないことは窺えるだろう。
「この東京を見ての感想か? ならあんたと同じだと思うがね」
「ほお、ワシの考えが分かると?」
「分かるさ。あんた、無表情に見えるが明らかに不満たらたらだからな」
「そうか……つまり、キサマもこの街が気に喰わんのだな」
「ああ、心底くだらねえ街、いや国になっちまったなと思うぜ」
もう一度、街中に目を移してみればそこには呑気な顔をして歩く人の顔ばかり。
ある者は笑い、ある者は酔い、ある者は何かに怒り、ある者は泣いている。
バラバラの様相の中でただ一つ共通しているのは、明日も大して変わらない平和な一日を送ると確信しているところだ。
紛い物とは分かっているが、恐らくは元になった東京も大差はないのだろう。
少なくとも弱肉強食を信条とする志々雄にとって、この場には唾棄すべきものしか見当たらなかった。
「生温すぎるな、これは」
「生温いか。確かにな。だが、何よりも腹立たしいのは……」
男は一拍だけ間を開けてから、
「この程度しか発展しておらんということだ」
街のすべてを見回すような調子で、心底憎々しげに言い放った。
その言葉に、志々雄は自分が少しばかり思い違いをしていたと気付く。
人に嫌悪感を抱いた志々雄に対し、男は街そのものに対して不満を抱いていたのだ。
「この程度、ね。繁栄自体はそれなりにしてるように見えるがな」
「足りん。これではまだまだ足りん」
「欲張りだねェ。ならどうする、聖杯を手に入れてこの国を強くするかい?」
薄笑いを浮かべながら問う。
もし肯定的な答えが返ってきたら叩き切るつもりだったが、男は志々雄の問いに冷め切った表情を浮かべていた。
「聖杯だと? 下らん、たかが杯ひとつにこいねがって手に入れたものになど価値はない」
「なら、あんたはこの戦でどう動く」
「ふむ……ああ、そういえば、ここは月だったな」
「一応な」
「なら決まりだ。とりあえずはさっさとこの戦争を終わらせて……次は月を奪うぞ」
つま先で軽くアスファルトを小突いて、男はそんなことを言い放った。
「……なに?」
思わず、志々雄は目だけでなく顔まで男の方に向けてしまう。
「図らずも人類未到の地に居るのだ。ならば先んじて手に入れておくのも悪くあるまい」
先ほどとは打って変わったニヤニヤした顔付きで、男はアゴを撫でている。
まるで愉快なイタズラでも思いついた子供のような気軽さで、本気で月征服を考えているらしい。
狂気の沙汰である。
だが、志々雄は彼の言葉に笑みを深める。
嘲っているわけではない。こうまで予想外の答えを聞くとは思わなかったのだ。
「月征服か。いいねェ、なかなか面白いこと考えるじゃねえか」
「なに、手慰みにするにはちょうどよいわ」
「慰みね。なら本番はなんだい」
「決まっておろう。日本よ」
ますます笑みを深めながら、男は言った。
「あの国をこの手で強くし、自分の足で立とうとせず服従するままの弱国から再生させるのがワシが行うべき戦争よ」
「ハッ……ハ――――ハッハッハッハッ!!」
もう声を抑えられなかった。
たまらなく愉快だった。
まさか、これほどまでに自分と似たような考えを本気で持つ者が居るとは思わなかったのだ。
対する男は志々雄の高笑いに顔をしかめることもなく、こちらを見つめている。
「最高だなあんた。いいぜ、あんたとなら組んでやってもいい」
「たわけ。ワシが貴様と組んでやるのだ」
「どっちでもいいさ。ところで名前を教えてくれよ。誰かをますたー(主人)と呼ぶのはどうにも性に合わねえからな」
「鷲巣。鷲巣巌」
「志々雄真実だ。まあ、よろしく頼むわ」
「うむ、ではいくぞ」
鷹揚に頷くと、鷲巣は背後に歩き出した。
「おい、俺には何も聞かなくていいのかい?」
「貴様の能力などすでに把握しておる。それ以外の出自や性格などにはさして興味はない。そもそもだ」
そこで一度言葉を句切ると、鷲巣は立ち止まって顔だけを振り向かせた。
ニィッとこれまで以上に口端をつり上げて笑う顔を見た志々雄は夷腕坊みたいだなと、配下の一人だった男の姿を思い浮かべる。
「このワシにあてがわれたサーヴァントが最強でないはずがあるまい」
疑問の欠片も持っていない、確信に満ちた言葉だった。
この男がどのような人生を歩んできたか志々雄は知らない。
それでも、たった一つのことだけは分かった。
この男にとって勝利とは太陽が昇るのと同じぐらいに当たり前のことなのだと。
「……そう言われちゃ否定はできねえな」
彼には珍しい苦笑いを浮かべながら、志々雄は再び歩き出した鷲巣の後を追う。
彼にとっては生前、地獄に続いて三度目の国取りがいま始まる。
【クラス】セイバー
【真名】志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。魔術に対する逸話がないので気休め程度の効果しかない。
騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力。大抵の乗り物をある程度は操縦できる。
【保有スキル】
カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能とカリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
Cランクであれば小国を率いるに十分な度量。
戦闘続行:A
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。
勇猛:B
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
地獄の業火の残り火:EX
彼の最大の弱点ともいえるマイナススキル。
全身に負ったヤケドにより発汗機能が失われているため、常人には考えられないほどの高熱を体内に宿す。そのせいで基本的に十五分しか戦えない。
時間が経つごとに動き自体は良くなっていくので俊敏に+が付加されるが、限界を超えると体内の脂肪とリン分が人体発火を起こし自分自身が燃え尽きてしまう。
【宝具】
『壱の秘剣・焔玉(ほむらだま)』
ランク:E 種別:対人宝具
刀の切っ先を点火して斬りつける技。斬撃と火傷を同時に与えつつ、威嚇や目くらましの効果もあわせ持つ。
『弐の秘剣・紅蓮腕(ぐれんかいな)』
ランク:D 種別:対人宝具
相手を手で掴み、革手袋の甲部分に仕込んだ火薬を焔霊で点火して爆発させる。
使用できるのは両の手袋で2回までだが、懐に入れた予備の手袋をはめ直すことで再度使用が可能となる。
『終の秘剣・火産霊神(かぐつち)』
ランク:B 種別:対人宝具
志々雄の最終奥義。
強大な剣気を放ちながら刀身全体を鞘の鯉口にこすり付けて発火能力を全解放し、巨大な竜巻状の炎を発生させる。
その斬撃を受けた者は巨大な業火に全身を焼き尽され消滅する。
【weapon】
『無限刃』
新井赤空の最終型殺人奇剣。
通常ならば刃こぼれで切れ味が鈍っていく刀の発想を逆転し、刃全体をあえて鋸状にこぼすことで切れ味を犠牲にしつつも殺傷力を一定に保つことに成功している。
この鋸目の間には志々雄が斬った人間たちの脂が染み込んでおり、刃を地面や鞘、相手の剣や大気との摩擦によって刀身の一部、あるいは全体を発火させることが可能。
幕末期に剣心から人斬り役を引き継いだ時点で、この発火能力は発現していた。
【人物背景】
幕末、長州派維新志士の新星として刃を振るっていた凄腕の剣客で、緋村剣心(抜刀斎)の後任として幕府要人の暗殺に当たっていた人物だった。
志士の中でも実力は随一であったが、同じ維新志士達にその力と底知れぬ野心を恐れられた彼は戊辰戦争で同志により不意打ちを額に喰らい、
昏倒したところに身体に油を撒かれ火を点けられる。
どうにか生き延びはしたものの全身に大火傷を負ったため体中に包帯を巻いており、和装ながらファラオのミイラのような出で立ちになってしまった。
その後は瀬田宗次郎、佐渡島方治を始めとした同士や配下を引き入れていきながら十年かけて組織を作り上げていく。
この世は弱肉強食を信条としているので組織でも側近や部下を使い暴力による恐怖統制を敷いている。
それでも末端の部下に自分よりも志々雄を侮辱されたことに怒りを覚えさせるほどの忠誠心を抱かせるなど、人心掌握には長けているもよう。
体勢を整えた彼は明治十年に国家転覆を企てるが、立ちはだかった緋村剣心たちとの戦いで組織は壊滅状態に陥ってしまう。
剣心との最終決戦においては一対一でこそ彼を追い詰めるものの、斎藤一たちに邪魔立てされたせいで仕留めきれず、最後は奥義の撃ち合いに持ち込まれた。
結果、志々雄の奥義である火産霊神は不発に終わり、逆に剣心の奥義の直撃を受け、更に体温上昇の激痛が加わった彼は瀕死にまで追い詰められる。
だが、自分の命乞いをした恋人である駒形由美ごと剣心を貫くことで形成を逆転する。
そして、トドメの一撃を放とうとした瞬間、限界を迎えた彼の体は業火に包まれた。
二度目の炎に包まれた志々雄は高笑いを上げながら跡形もなく焼失していき、その生涯を終えた。(作者によると勝負自体は志々雄の勝ち逃げとのこと)
余談だが死後に地獄に墜ちた彼は、同じく地獄墜ちした由美や方治と共に閻魔を相手取った地獄の国取りに向かっている。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を勝ち抜いて月征服。
【マスター】鷲巣巌@ワシズ――閻魔の闘牌
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を勝ち抜いて月征服。
【weapon】
なし。強いてあげるならばその肉体と豪運が最大の武器。
【能力・技能】
豪運
人類としては最高ランクに位置する幸運。
カリスマ
その豪腕と豪運で活路を切り開く姿は良くも悪くも周囲の人間を惹き付け、あるいは畏怖させる。
上流階級の嗜み
絶対音感や東洋医学の経絡の知識で自らの三半規管の内二つを破壊するなど様々な知識や技能に精通している。
【人物背景】
『アカギ』においての赤木しげるの宿敵にして『ワシズ――閻魔の闘牌』の主人公。ワシズでの年齢は五十代後半。
戦前は帝大を主席で卒業し、特高警察にて権中警視にまで出世するほどのエリートだったが、ミッドウェー海戦での敗北を機に日本の敗戦を予見し太平洋戦争中に退職。
戦後は経営コンサルタント会社「共生」を設立し、巨財を築き上げていく。
本編においてはとてもアカギでの彼と同一人物とは思えない筋骨隆々の肉体を誇り、時には米兵、時には巨大亀、時には巨大ロボットとも戦ったりする。(麻雀漫画の話です)
性格は天上天下唯我独尊そのものであり、自分に敵対するものは徹底的に打ち負かす。
とはいえ部下などの身内に対しては冷徹というわけでもなく、窮地において彼のために死を覚悟した部下を諫めるなど一定の優しさも見せる。
余談だがアカギでは閻魔大王と戦ったりもしている。(麻雀漫画の話です)
最終更新:2015年01月25日 16:27