ヨスガの縁 ◆Ee.E0P6Y2U
夜の街。
そこは騒々しくも平和が保たれているはずだった。
……しかし、そこはまるで嵐が通った後のようだった。
「ああははっははははは!」
多くの血が流れていた。
数多くの死体ががあった。
ある者は脳を潰され、ある者はその身体を裂かれ、ある者はその肉片がぐちゃぐちゃに飛び散ってしまっている。
それは何の罪もない人間であった。
たまたまそこに居合わせただけの、単なる一般人。
しかし彼女にとって、そんなもの塵芥に等しかった。
「馬鹿ねえ、馬鹿ねえ……そんな力で、そんな弱々しい力で、生き残ることができると思っていたの?」
……その中心に、多くの鮮血と骸を踏みつけながら、彼女は居た。
彼女は、アーチャーはその手になにかを持っている。
身体中を殴打され、時節ぴくり、ぴくり、とその身を震わせるそれは、サーヴァントだった。
「本当に思いあがったサーヴァント!
そんな力で聖杯を! 世界を変えようとしていたの?
記録される価値のないゴミみたいな力で!」
その罵倒と共に彼女は己が敵を殴りつけた。
何度も何度も何度も、彼女は殴打した。どん、とか、ばん、とか鈍い音が路地裏に響き渡る。
笑い声に重なる様に響くそれは、どこか滑稽なものがあった。
「馬鹿。どうしようもない屑。こんなものが英霊だなんて、笑わせるわ。
力がない者、喰われるだけのもの、生きてる価値なんてないのよ。分かる?」
そう吐き捨てるように言って、彼女はサーヴァントを放り投げた。
それは綺麗な放物線を描き、鈍い音がしたかと思うとごろごろと転がって誰かの死体と重なった。
泥にまみれて情報の海に沈んでいくその姿は、まるで塵のようだった。
「あははははは! 力がないこと! 夢を見たこと! そして生きていること!
その全てが貴方の罪よ。弱者は泥に還るがいい!」
そう言って彼女は再び哄笑した。
けたけた、とタガが外れたように笑っていた。
「…………」
峰津院ヤマトはその凶行を冷めた目で見つめていた。
聖杯戦争に赴き、そして与えられたアーチャーのサーヴァント。
その真名はベル・アバター。
かつて唯一神に打ち倒された古き神の一柱。
引き裂かれたベル/バアルの力の破片の化身。
『ヨスガ』と名付けられた、弱肉強食のコトワリを啓いた者。
ヤマトが呼び出したのは、そんな魔神であった。
彼女、と呼ぶべきだろう。
白く禍々しいその姿は僅かに女性の面影が在り、甲高い声色も女性のそれだった。
とはいえそれはもう、明らかに人間ではなかった。
弱者をいたぶり、力なき市民など顧みず、己が敵を屠るその様は――悪魔と呼ぶにふさわしい。
最も、ヤマトにとって悪魔など使い慣れた道具であったが。
「おい」
この場に残ったもう一人の生者に声をかけた。
でっぷりと太った男ががくりと跪いている。彼こそ、今しがたサーヴァントを失ったマスターである。
彼は自身のサーヴァントがなすすべもやられたことが信じられないようだ。
放心し、だらしなくその口を開けている。
おい、ともう一度言い放つと、男はびくり、としてヤマトを見上げた。
ただでさえ醜いその顔が、汗と涎がさらに醜くなっている。
その瞳の奥には恐怖が滲んでいた。
ヤマトは冷徹に言い放った。
「お前は魔術師としてそれなりの力があるようだが、その力を俺に役立てる気はあるか?」
と。
男は言われたことが分からなかったようだが、が、それが生きるための一縷の望みであることに気付くと、「はい! はい!」と大仰に頷いた。
まるで犬だ。ヤマトがそう思っていると、後ろから鋭い声がかけられた。
「マスター。それは本気で言っている?
そんな薄汚い、さして力もない塵を使おうと?」
私は厭、と彼女はサディスティックに言い、その巨大な手を男の身体に向けた。
男がひっ、と声を上げる。汗が飛び散り、がくがくとその肩を震わしていた。
震わしながらも、彼はヤマトに頭を下げていた。汚い地べたに額をこすり付け、何とかして彼に取り入ろうとする。
ヤマトは平坦な声色で、
「どんな者であれ力があるのならば登用しよう。私は差別はしない。
役立つのであれば迷いなく登用する。必要なのは実力だけだ」
そう言い放った。
男の顔が歪む。顔の皮膚がぎゅるると皺くちゃになる。
それはあまりの恐怖ゆえに笑みさえも歪んでいた。
そうして灯った希望を――
「だが、お前は駄目だな」
――ヤマトはその一言で切り捨てた。
はっ、と妙な声が漏れた。
それは男が漏らした声だった。何が何だか分からない。そんな感情を表しているかのような、場にそぐわない滑稽な音だった。
「お前の能力は確かにそれなりの見所はあった。さして優れている訳ではないが、劣っている訳でもない。
この状況だ。場合によっては、使ってもよかった。
だが――お前は豚だ。何の意志も持たない。強者のおこぼれをもらうことしか考えていない、屑で愚鈍な、豚だ。
いっそ私に突きかかって来るなり、敵意を滲ませるなりすれば、まだ考えた。
だが、お前は駄目だな。見るべき価値は一切ない。こびへつらうだけの豚は――屠殺されてしかるべきだ」
そう言い放つのと、男の顔が絶望に歪むのは、同時のことだった。
そして次の瞬間には、男の身体は弾け飛んでいた。
豚は赤い塵になり、そして泥となり消えていった。
「あはははははっ! 世界はかくあるべき。
弱肉強食。弱きものに生きる価値はない!」
アーチャー、ベル・アバターは哄笑している。
それを無言で見つめながら、ヤマトは今後について考えた。
彼が望むべき実力社会の実現。その創世の為に、彼は聖杯戦争に赴いた。
手に入れたカードは、なるほど中々強力なようだ。
これならば当面の戦力は問題あるまい。
寧ろ問題は――アーチャーの気質か。
弱肉強食を重んじ、集団に属しながらも個人の力を最上とする彼女は、その有り様が『単独行動』スキルで最も適合したアーチャーのクラスで現界した。
彼女にしてみれば、NPCなど塵と同じだ。気にする気など一切ないのだろう。
ヤマトもそれは同じだが、
ルールに触れる可能性がある。
具体的にどのようなシステムが用意されているかは不明だが、あまり殺させると不都合がありそうだ。
単独行動スキルと併せて、如何に彼女を御するかが今後の課題になりそうだった。
ヤマトは冷静に今後について考える。
既にその頭には、今しがた死んだ男のことなどきれいさっぱり忘れている。
無駄なものにリソースを裂く必要はないし、気もない。
実力主義の美しい世界を創り上げる為、ヤマトは紅い月に惹かれた。
その縁<ヨスガ>が呼んだのは、魔神の力を孕んだ少女。
彼らにとって、力以外は何の意味もないのだ。
【クラス】
アーチャー
【真名】
魔神ベル・アバター(橘千晶)@真・女神転生3 Nocturne
【パラメーター】
筋力A 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運D 宝具A+
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
このランクならば一週間、あるいはそれ以上現界可能。
ヨスガは個人の力を重んじる為、賛同する全ての悪魔がこのスキルを携えている。
コトワリを啓いた本人である彼女は最高ランクのものを持つ。
【スキル】
ゴズテンノウの精を受けた彼女は魔術を操る
破魔系を中心に強力な魔術を放つ。
魔神としての力。
幸運判定に成功すると、相手の体力を現在の半分にする。
魔神としての力。
行動ターンを最大2ターン多くする。
配下の仲魔を召喚するスキル。
が、このクラスでは使用することができない。
【宝具】
『バアルの呪い』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:10人
千晶がその身に宿したベル(バアル)の力。
強者のみが生きる“ヨスガ”のコトワリに応じたバアルの力である。
神話に伝わりし、混沌の軍勢と戦い王権と結びついた魔神の力をその身に受けている。
数々のスキルを得るほか、その幸運に判定成功すると相手をFLY(蠅)にしてしまうことができる。
『縁<ヨスガ>』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
千晶が開いたコトワリ。
強者のみが生きる価値がある。弱肉強食にして徹底的な実力主義。
しかるべき場所にこのコトワリを解き放つことにより、世界を創世することができる。
【人物背景】
『真・女神転生3 Nocturne』のヒロイン……ではない。
元々は何の力もない、勝気なお嬢様だった。
東京受胎によってほんの少しの人間を除いて東京が死に絶えた。彼女は幸運にも生き残る。
そのプライドから主人公の助力も拒否していたが、悪魔が跋扈するボルテクス界で彼女は自身の力のなさを痛感する。
のちにその想いの結果、弱肉強食を至上とする『ヨスガ』のコトワリを開く。
ゴズテンノウからボルテクス界の王(魔丞)としての地位を獲得し、彼女は変貌する。
禍々しい姿となった彼女は王の力を行使して天使を従える。
そして弱肉強食のコトワリの下、弱者に対する虐殺を繰り返すようになる。
ひ弱ながらも寄り添い、生きようとしていた者たちを嘲笑いながら屠る。その姿はもはや人間のそれではなかった。
世界の創世を決める決戦においては、コトワリボスの一角として登場。
その思想故たとえ味方となる『ヨスガ』ルートにおいても彼女とは戦うことになる。
またルートによってはラスボスともなり得る恐ろしいお方。
ただ『ヨスガ』ルートのEDだけ少しだけヒロインっぽいかもしれない。
【マスター】
峰津院大和 @デビルサバイバー2
【参加方法】
ジプスの調査で紅い月の噂を知った。
【マスターとしての願い】
実力主義社会の実現
【能力・技能】
携帯にインストールされた悪魔と契約する為のアプリ。
が、東京に置いて仲魔を呼ぶことができるかは不明。
アプリを通じて自身を強化することができる。
【人物背景】
『デビルサバイバー2』のヒロインではない。
気象庁・指定地磁気調査部、通称「ジプス」の若き局長。
ジプスの創始者一門である峰津院家の嫡男であり、17歳の若さで組織のトップとして局員を統率している。
傲岸不遜な性格で、弱者を激しく嫌うが、悪人ではなく、強者にはそれなりに敬意を払う一面もある。日本守護のためには手段を選ばない冷徹さも持ち合わせる。
現在の日本には守る価値がないと考えており、ポラリスに謁見し世界を作り変え、完全なる実力主義の世界を作り出そうとしている。
そのために一般人には価値を認めておらず、当初は主人公も見下していたが、セプテントリオンを打ち破ってみせた彼の実力を評価し、
それほどの力が市井に埋もれるような世界には価値無しとして強行に走る。
……実力主義を標榜しているが、ゲーム的にはステ振りの関係であまり強くない。
ルートの旗頭キャラであり、彼との関係が分岐に大きく関わってくる。
アニメ版では彼と主人公・響希を除くすべての人類が死に絶え、ポラリスを前にして決戦。
世界の行く末を決める戦いの末、響希は彼を抱きしめ、実力主義でなく世界のやり直しを求めた。
……新生した世界で、ヤマトと響希は再び巡り合う。
互いに記憶はない筈なのに、どこか惹かれるように……
最終更新:2015年01月26日 08:52