失われた世界。私達は…… ◆S8pgx99zVs
――赤。
身体を溶かしどこかへと連れ去ってしまいそう――そんな茜色をした光の中にその青年はいた。
地上223メートル。日本の首都である東京のひとつの象徴であり、また霊的な要の一柱でもある東京タワー、その特別展望台。
彼の姿は西から射し込む夕日で真っ赤に染まったフロアの上にあり、そして彼はただひとりだけだった。
赤い光景の中で足元から背後へと細く長い影を背負ってる姿はどこか寂しい。
青年は片手に煙草を燻らせ、じっとガラスの向こう見つめている。
地平線の向こうに姿を消そうしている鎔けそうな赤さの太陽。その手前にはいくつものこの世界の“要”がシルエットを浮かび上がらせていた。
皇居、国会議事堂、サンシャイン60――遠くには新宿副都心。そして一番遠くには美しく日に染められた富士山。
なにを、思うものでもない。
思考はあっても情動はない。どのような光景を目に写そうとも、いかなる謀の中にあっても、心はいつも灰のようでしかなかった。
ただ、その中で、その奥で燻っているものが、それは希望の欠片と呼べるのか、それともただ思い浮かべるだけの幻か、
そんなことはもう本人にもわからない。ただただそれだけしかなく、いつもそれをどこかに追い続けるだけ。
青年は瞼を閉じるとゆっくりと煙を吸い込み、そして目を開きながら時間をかけてその煙を吐き出した。
長い睫毛が揺れる。青年の面立ちは細く、ひどく儚く美しい。彼には同じ顔をした姉がいた。その姉はもういない。
その姉を殺した仇が彼の心に残るたったひとつだった。それまでと、その時からの、ずっと変わらない唯ひとつ。
そして――。
青年は東京の風景から顔を背け、背後を振り返ると“それ”を見た。見て、僅かに訝しげな表情をその端整な顔に浮かべた。
そこにあったものは“朽ちたモノ”だった。伝説の成れの果て。物語の最後に天より堕ちた勇者。誰も知らない、誰も理解する者もいない終わりの姿。
展望台の中で狭苦しそうに犇めくそれはなんであるとも形容し難い。一言で言えば、黒い。そして醜い。
巨体は全身がささくれ立ちあらゆる所が煤で汚れ、ところによれば炭化し、その罅割れから濁った血を細々と床へ垂らしている。
「…………当てが外れたか?」
“それ”がしゃがれた声で口を利いた。そこで青年は目の前のこれが一体の生き物であることと、自らに与えられた“僕”であることに気づく。
「だが、お主も死んでいるようなものだ」
青年は否定しない。その通りだったからだ。
「そして、我もまた変わらぬ。……放っておけばこのまま朽ち、ただ消え去ることができよう」
パキリと音を立てて炭化した身体の一部が床に落ちる。落ちたそれは床を黒く汚すと、微かな魔力の粒子として空気に溶けた。
言葉の通りに、目の前のこれは召喚されたばかりだというのに朽ちる寸前なのだ。
「だが、微かでも生きて叶えたいと想うものがあるのなら、……我と『契約』するがよい」
大きな裂け目のような口の上で、なにかがきらりと光を反射する。それは眼だった。片目だけが瞼を開き、青年のことを貫くように見つめていた。
願うように、全てを見透かすように、助けの手を差し伸べようとするように、哀れを訴え導きを請うように、あらゆる感情をこめた視線。
いや、それは少し違う。目の前のこれがそう思っているのではない。その視線は青年の想いを跳ね返しているだけなのだ。
青年は迷った。いや、一切迷わなかった。彼にはもうそれを追い求めることしか生に意味を見出してはないのだから。
この、もうなんの価値もない生にただ一点のピリオドを打つ、それだけを追い求めて空虚な生を長らえているだけなのだから。
だから青年は迷わなかった。無言で首肯する。それだけで全ては通じ、『契約』は開始された。
そして――。
変化は劇的だった。まず空気が大きく震えた。小さな雷のような音が立て続けに鳴り響き、桶一杯の銅貨を床にぶちまけた様な音が連続した。
それは目の前にいる“それ”の脱皮だった。口を大きく開いて咆哮し、巨体を揺するたびに炭の欠片が床へと大量に零れ落ちる。
足元へと床を滑ってきたそれを見て、青年は炭の欠片の様に見えたそれが黒く煤けた鱗だということに気づく。
そして……、ともすれば永遠に続くのではと思われたそれがぴたりと止むと、そこには一匹の“竜”が姿を現していた。
青年の大きな瞳が見開かれ、手から煙草が零れ落ちる。そこに現れた竜は、神秘の世界に身を置く彼からしても夢幻の様な美しさを持つ存在であった。
襤褸であった名残はもう一切なく、綺麗に揃った鱗は夕日を反射し赤く輝き、一対の角は力強く、長く伸びた尾はしなやかで、その存在は幻想。
「……『契約』は成った。互いの願いが成就するまで、我とお主はその身をひとつと考え、忠を尽くすことを誓おうぞ」
竜の言葉にまた無言で首肯する。
そして一時の興奮が過ぎ去ると、青年はそこでようやく自身の変化にも気づくことができた。
力だ。これまでにない“力”が自らに宿っている。全てを超越したのではとすら錯覚しかねない強大な力。竜の気が全身の霊脈に満ちていた。
青年は一度二度と拳を握ると余る力に肌を震わせ、そして何かを察すると自らの右目へと指先を触れさせた。
「竜の力に震えるか人間よ。……右目(それ)は、『契約』の代償だ。その眼の代わりは我が果たそう」
悪びれることもなく、当然だという風に竜は言う。契約の代償――そういった理由で青年の右目から視力は失われていた。
得られた力を考えればこれほどのことはなんでもない。むしろ、与えられた力は両目を失ってもお釣りが出るほどに強力なものだ。
しかし、ひどい喪失感があった。僅かな望みの、その半分を失ったのだから。
涙は――出ない。涙を流す機能も失われたのかもしれない。涙を流して拭えるような種類の哀しみではないからなのかもしれない。
「此処は狭い。空(そと)へと出るとしようぞ」
展望台の中に突風が吹き荒れる。竜が畳んでいた羽を伸ばしただけでこれだ。そして次の瞬間に展望台を囲っていたガラスが全て砕け散った。
もう一度突風。竜が羽を床へと打ちつけると、その姿は空にあり、青年はその背の上にいた。
赤い世界の中、冷たい風が頬を打つ。展望台よりも高く、遮るもののない雄大な景色に、やはり感慨はなく心は動かない。
だが、心の奥底にある期待は大きく膨らんでいた。今こそ自分の願いを叶えられるのではないかと。
青年――皇昴流(すめらぎすばる)は左手の甲にある逆五芒星を見る。
今こそこの印が意味を果たしてくれるかもしれない。
「では、往くぞ――――」
竜は羽を羽ばたかせる。加速し、その姿は暮れ行く街並みの中へと、彼らの願いがある所へと滑り込んでゆく。
そして――。
――物語は終わりを求める。
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【クラス】 ライダー
【真名】 アンヘル(Angel)
【属性】 秩序・善
【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:E 宝具:A
【クラススキル】
レッドドラゴン自身はクラススキルを持たない。それは『契約』によりマスターへと付与される。
【保有スキル】
飛行:A
空中を自在に飛行する能力。
レッドドラゴンは地上から上空数百メートルまでを自在に飛び回ることができ、飛行しながらの攻撃にペナルティを受けない。
ブレス:A
口から火炎の息を吐く能力。
レッドドラゴンは全てを焼き払う高熱の火炎をその口から吐き出すことができる。
この火炎は対魔力で防御することができる。
念話:B
『契約』を果たした人間とのみ、言葉を発さずとも頭の中で自由に会話することができる。
この『契約』を果たした人間とは、自分と直接契約した者だけでなく、他のなにかと契約した別の人間も含む。
【宝具】
『契約』
ランク:A 種別:対人 レンジ:--- 最大捕捉:1人
強いエゴを持つ人間と心臓を交換しあうことで互いの能力を飛躍的に高めることができる。
契約を果たしたもの同士は運命共同体となり、どちらかが死ぬか契約が解除されるまで離れることは許されない。
『浄化の炎(エル・フィーシオ・デ・ディオス)』
ランク:B 種別:対人/対軍 レンジ:20~150 最大捕捉:20人
口から魔力で編みこんだ帯状のブレス(火炎)を一斉に吐き出す。
これは狙いをつけた対象へと命中するまで追い続け、特別なスキルやレジストを持たない限り避けることはできない。
【weapon】
『竜』
レッドドラゴンの爪は人間が鍛えた如何なる剣よりも鋭く切り裂き、尻尾の一撃は人間が築いた如何なる砦さえも易々と破壊する。
【人物背景】
出展は「DRAG-ON DRAGOON」
物語の主人公であるカイムと『契約』し、彼女の妹であるフリアエを救うべく帝国と戦い東奔西走したレッドドラゴン。
最終的には封印が破れたことにより現世への干渉を始めた『女神』と戦うことになる。
その最中、戦いの場は何故か次元を超えて東京新宿上空へと移る。
カイムとレッドドラゴンはそのまま女神を撃破するも、緊急発進した自衛隊の戦闘機F15-DJにより撃墜され、その躯は東京タワーに突き刺さった。
《 本当に、本当にありがとうございました 》
上位種である竜であることにプライドを持ち、自ら以外を見下す傾向があるが、人の業や営みのことをよく理解してもいる。
普段は冷静であり争いごとを諌める立場を取ることが多いが、いざ敵対して戦闘となれば激情的なところを見せ容赦なく敵を撃滅する。
竜に性別はないが、どちらかといえば女性寄りの性格を持っている。
真名はアンヘル(Angel)であるが、真に心を許した者にしかその名は名乗らない。名前からわかるが、実は神の使いである。
【サーヴァントとしての願い】
再びカイムと会う。
【基本戦術、方針、運用法】
猪突猛進や見敵必殺などということはなく、上位の精神を持ち知識と経験もあるのでまずは目的に即した作戦立案をする。
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【マスター】 皇昴流(すめらぎすばる)
【マスターとしての願い】
桜塚星史郎と会い、彼に殺される。
【weapon】
『霊符』
五芒星の書かれた霊符。幾枚も懐に忍ばせたこれを無数に使用し、陰陽術により攻撃する。
【能力・技能】
陰陽術:A
皇家当主として身につけた様々な陰陽術を使用する。
霊障や霊そのものを払うことから、霊符を用いて結界を張ったり、火炎を吹きつけたり、霊符を鳥へと変じさせ突撃させる等々。
契約:A
レッドドラゴンとの『契約』による超人化。
皇昴流は元より超人じみた運動能力や類稀な霊力を持つが、それが英霊クラスまで引き上げられ、行動や判定も英霊と同様に扱われる。
契約中の皇昴流のステータスは以下の通り。
【筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:A 幸運:E 宝具:---】
契約の代償として右目の視力を失っている。
騎乗:EX
レッドドラゴンとの契約により授けられた騎乗スキル。
契約したレッドドラゴンに対してのみ、幻想種をも乗りこなすEXランクの騎乗スキルが発揮される。
【人物背景】
出展は「東京BABYLON」及び「X」
陰陽師を生業とする皇一族の13代目当主。
双子の姉と瓜二つの可愛らしい顔をしており、将来の夢は動物園の飼育員と、その内面も実に穏やかで可愛らしいものであった。
陰陽師としての仕事をしている中で桜塚星史郎と出会い、付き合いの中で彼に惹かれてゆく。
だが、彼の正体は『桜塚護』と呼ばれる陰陽術を使う暗殺者であり、最終的には彼に姉を殺され、その姿を見失ってしまう。
その後、高校を中退した昴流は、陰陽師の仕事を続けながら桜塚星史郎の行方を追っていた。
傍から見ると、姉の敵討ちをする為に桜塚星史郎を追っているように見えるが、実は彼に殺される為に彼を探している。
その理由は、愛情や執着を持たないとする彼に、せめて殺す(排除する)価値のあるものとして認められ、僅かでも記憶に留めてもらう為。
終始煙草を吸っているヘビースモーカーだが、吸っているのは喫煙を好むからではなくそうすると霊力が高まるから。
なので、好みの銘柄などはなくその時その時で手に入る煙草を適当に吸っている。
【方針】
この世界に桜塚星史郎が存在するのなら彼を探し出し、そこで願いを叶える。
そうでなければ聖杯を求め、聖杯に彼との再会を願う。
最終更新:2015年01月26日 08:54