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速水ペルシャ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc




 上野動物園の閉園の時間は、午後五時であった。
 遊園地や動物園の閉園時間というのは寂しいもので、時間を告げる音楽を聞きながら、両親に手を引かれて帰っていく時には寂しさを覚えるものである。
 多くの子供は、あと一時間でいいからパークをもっと楽しみたいと思った経験があるだろう。
 逆に、もう一時間いたとして、ほとんど見つくし、遊びつくしてしまったために、やる事がない子供もいるが、それでも去る時には不思議と寂しさが胸に湧きあがる。
 しかし、我儘も言えないので、そのまま、他の家族たちが門をくぐって出ていくのを見て、自分たちも帰るのだ。
 時に、後ろを振り向いて。
 一日楽しませてくれた夢の場所にさよならを告げる。

 ──今日は、楽しかったね。

 ああ、だからこそ、もっとそこにいて楽しい時間を続けたいと思うのだ。
 それは、妖精の夢のように、儚い思い出となっていく。
 生きていけば、やがれ両親とこうして遊園地に連れて来られる事もなくなる。
 大人になり、やがてまた来るこの場所は、もっと狭く、つまらない場所になっている。
 それを心のどこかでわかっているのか。

 ──また来ようね。

 しかし、そんな言葉を告げたとしても、もう二度とそこには来ないかもしれない。
 永久の別れかもしれない。
 それが大人の階段。

 しかし、子供であるうちは、誰も妖精の夢を見続ける。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 月上にも、まだ妖精の夢を見続ける少女がいた。

 当然ながら、真夜中には上野動物園は、人っ子一人おらず、動物も殆ど休んでいて鳴き声一つ聞こえない。 
 明日の朝になればまたこの門が開くはずだが、それまでの僅か九時間の退屈を待てないのが子供である。
 しかし、この夜遅くに平然と起きて外出できるのは、その子供がまた特殊な境遇にあるからだといえよう。

 速水ペルシャ。十一歳。
 幼少期をアフリカで凄し、ライオンたちと共に生きてきた……。
 その境遇は、全く嘘偽りがない。この後、彼女は魔法少女になるのだが、魔法少女になるという出来事よりも、生まれてすぐアフリカでライオンと生きてきた境遇の方が遥かに異常なのだ。
 野生児として培った驚異的な身体能力は、この小さな少女には不釣り合いな次元に達している。
 計測された限りで、100メートルをなんと8秒台で走っている。

 これは、言うまでもなく、世界新記録を大きく塗り替え、永久に記録保持者の座を彼女のものに出来るレベルである。
 参考までに挙げておくと、今日までの100メートルの世界記録は、ジャマイカのウサイン・ボルトによる9.58秒という数字である。
 それは世界に衝撃を与えた超人的なタイムであった。
 そのボルトの半分ほどの身長もない少女が軽々と乗り越えてしまうのだから、人間の身体構造はいまだ謎だ。

 そして、そんな彼女は律儀にもこの上野動物園の門の前で、開園を待ちわびていた。
 門を飛び超えてしまう事も容易な事だが、それはいけない事だと承知している。


「うう~ん、待ちきれないですの~」

 ペルシャは、足踏みを止めない。
 この門の前で、我先に動物たちの世界に飛び込むのを待ち続けたい。
 今入っても、お休みの真っ最中には違いない。
 だから、待ちたい。……朝まで。
 あと9時間。気が滅入ってしまう。

 ペルシャ一人ならば、特別この動物園に行く事もなかっただろうが、今日は新しい友人がいる。
 そう、ペルシャ自身が、この聖杯戦争で呼び出してしまった「友人」が。

「……ウウッ、アウッー」

 サーヴァント、≪バーサーカー≫である。
 その現在の姿は、ペルシャと同じく、野生の中で生きたようにさえ見える少女であった。
 髪は自然と長く伸びきっており、様々な方向にぼさぼさと跳ねている。更には、時に四つん這いになって声を発する事まである。
 ペルシャと決定的に違うのは、人間の保護者がいなかったか、あるいは「教育する事ができなかった」ように思われる事である。
 無教育、無教養、ではなく、こう呼ぶ。
 ……知的障害、と。
 年齢相応の知識を吸収する事ができず、彼女の場合は野生動物のように這って歩いてしまうのだ。

 名前は、エレイン・リードと言った。しかし、真名として登録された別の名は、「ジェノサイバー」。
 かつて、彼女たちの世界で「神」となった最悪の兵器である。

 地球最後の大戦で、彼女は世界の敵となり、地球全土を滅ぼした。
 人間の醜さを知り、人間に敵対し、エレインの持つそのあまりに強すぎる力を行使した結果であった。
 精神的に幼く、──しかし、誰より中立的に世界を計れる少女が世界を滅ぼせる力を持った時、世界は滅び、また、「ジェノサイバー」も滅んだ。
 やがて、生き残り、また新しく文明が築かれた頃、僅かな人類は、前時代の遺産を目にして、ジェノサイバーの姿を神と称えたと言われる。

 しかし、彼女は神などにはなりたくなかった。

 人間として、友達を作り、ささやかな幸せを享受しながら生きたかったのだ。
 死んで神となり、転生し、身ごもった子供を産めないままにまた殺された。
 彼女は何度輪廻を超えても幸せになれない。
 再び世界を滅ぼす力となった後、その世界に存在するのをやめた。
 再び眠りにつき、誰にも見えないところで朽ちていく。
 それは、エレインにとって、死ぬ事と同義だった。

 だから、こうしてまた最初と同じような子供に戻れた時、エレインは、動物園に入るのを待ちわびていた。

 ああ、自分は、もう一度人間の姿になれた。
 人間という生物はたくさんいる。ジェノサイバーのように、この世にたった一つの孤独ではない。
 ずっと昔。あの時、一緒に遊んでくれた……今はもういないあの男の子のように、友達ができたのだ。
 エレインは思わず、歓喜の声をあげる。
 それははっきりした音声ではなかった。言葉にならなかった。喉から出したい言葉を発する事ができない。

 しかし、その歓喜の声を聞いて、ペルシャは先ほど、一緒になって喜んだ。
 彼女の咆哮が喜びを意味する物だと、ペルシャも知っていたのだろう。
 何故喜んだのかはペルシャも知らないが、とにかく楽しそうだったので便乗したという形だ。
 彼女はそういう少女だった。
 だから、言葉が通じないままに、二人は友達になった。

「……うぅ。でも、このまま待っていてもラチがあきませんの」

 ペルシャは、眉をつなげて言った。
 管理人らしき人もいない。訴えても門を開けてくれる者はいない。
 動物園に真正面から入る事はできないだろうし、9時まで寒空の中で待つというのは辛いものだ。
 友達のために、この中を案内してあげたかったが、そんな事をする前にエレインが風邪をひいてしまうだろう。

「ウゥ……」

「バーちゃん、また今度にしましょう」

 聾唖で真名を告げる事ができないせいで、ペルシャは彼女を『バーサーカー』のバーちゃんと呼ぶ。
 「エレイン」と名乗ったつもりだが、言葉が話せず、「エ・エ・イ・ン」としか言えない。
 どんなに強く発そうとしても、言葉がちゃんと通じるには時間がかかる。特に、固有名詞は誰でも解読が難しい。


「大丈夫ですの。明日になれば、すぐ開園します」

「アゥ……」

「わがまま言っちゃ駄目ですの。さ、行きますのよ」

 ペルシャは、まるで妹ができたような気分だった。
 まだ赤子のような言葉さえ離せず、世界を大雑把な感情だけで見つめるエレインの姿が、途方もなく幼い物に感じたのだろう。
 動物園に入れないだけでひどくしょんぼりするエレインを注意してあげたくなったのは、母性をくすぐられているからだと言ってもいい。

「ウゥゥ……」

 エレインは、ペルシャに腕を引かれながら、真後ろの門を何度も振り返る。
 ペルシャに促されるのを拒絶している。
 それは、久々のワガママであった。

 扉の向こうに行けば、色んな動物がいる。
 それを、友達と一緒に見ながら、駆けまわるのである。

 人がいる場所。
 たくさんの人の笑顔がある場所。
 友達がいる場所。
 しかし、かつて奪われていった平和な世界。

 それが、真後ろの小さな楽園にある気がした。
 無論、それはこんな時間に訪れても見かける事ができないかもしれないが……。

 そんなエレインの我儘を見て、ついにペルシャは少し声を荒げた。

「もう、バーちゃんのうっすらパー!」

「ウッ、ウア、アアー」

「動物園はまた明日! これはもう決めた事ですの。でも、明日になったら色んな動物を見られますのよ。
 今日はペルシャと一緒にもう寝ましょう。……あら、もうこんな時間。こっそり帰らないと怒られますの」

 その言葉で、エレインはペルシャに身を任せた。
 ペルシャに腕を引っ張られ、ペルシャと一緒に寝るのを少し楽しみにしながら歩く。
 動物園に行けないのは少し寂しいが、ペルシャと一緒に寝るのもまた少し楽しみだ。



 だが、エレインはまだ、真後ろにある動物園への未練を捨てきれなかった。
 もう一度、ここに来る事はできるのだろうか。
 これは、甘い白夜の幻で、また彼女の前から大事な人は消えてしまうのではないかと……。
 拒絶され、またエレインは一人になってしまうのではないか、と……。



 ────明日が遠い。



 ────明日が不安だ。



 ────明日が怖い。




『エレイン……私たちは、この世界にいてはいけないの』







【クラス】
バーサーカー

【真名】
ジェノサイバー(エレイン・リード)@ジェノサイバー 虚界の魔獣

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
狂化:C
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 彼女の場合、宝具を使って一時的に発動するものであり、狂化スキル発動後に狂化をし続ける事はない。
 また、素体そのものが元から知的障害を患い、言語能力を持たないエレインである為、どちらにせよ狂化スキルの振れ幅は大きくない。

【保有スキル】
神性:E(A)
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
 変身時に高まる。
純粋:B
 邪心を一切持たない子供のような心。
 大切な存在を殺害された時には強い母性でそれを防ぐ力を発する。
知的障害:B
 彼女の場合、知能の限界が人より狭く、年齢よりも幼い振る舞いをしてしまう障害。
 しかし、純粋な人間とすぐに友人になる社会性を持ち合わせ、感情表現は豊かである。
 また、言葉を発する事はできないが、相手の言葉の意味を何となく理解する事ができる。

【宝具】
『脳奥の神秘(ヴァジュラ)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1~5 最大補足:1~5
 彼女が先天的に持つ驚異的な生体エネルギー。
 超能力や念力に近いパワーを発揮し、最大時には敵を破裂させる事もできる。
 この力を覚醒させれば、空に飛んだり、物体を宙に浮かせたりもできる。

『人の夢(フェアリー・ドリーミン)』
ランク:C 種別:結界 レンジ:1 最大補足:1~10
 エレインは悲しい夢を見る。
 友達になった少年は無残に殺され、娘のように慕ってくれた女性は狂ってしまう。
 虚界の魔獣(ジェノサイバー)となった彼女の孤独な運命も宝具であり、彼女と彼女に関わる存在に悲しい終わりを残してしまう。
 それが、この世界にいてはならない破壊神の宿命であった。

『虚界の魔獣(ジェノサイバー)』
ランク:A 種別:変身 レンジ:∞ 最大補足:∞
 「ダイアナ・リード」とシンクロする事で誕生する、人間より一回りほど大きい巨大な超生命体。
 この宝具の発動と共に、パラメーターは計測不能になる。全身からエネルギーを放出し、それだけで戦車やヘリを撃墜する。
 巨大な羽根で飛翔するグロテスクな異形を持ち、時として天使や神とさえ言われた。
 憎しみによって巨大化した時にはビル群ほどの大きさにもなり、大陸を滅ぼし、エネルギーでタイムスリップする事もある。
 ただ、大きさに関わらず、ジェノサイバーが世界を滅ぼす力を持つのは確かである。
 エレインの意志と無関係に暴走してしまう性質ゆえ、「この世界にいてはいけない存在」でもある。
 しかし、その力自体が通常の魔術師では操り切れない為、決して本来敵な力を発揮する事はできないだろう。

『理性の姉(ダイアナ・リード)』
ランク:B 種別:精神 レンジ:エレインの精神内 最大補足:エレインの精神内
 虚界の魔獣(ジェノサイバー)へと変身した際に、エレインに注意を呼びかける声。
 ジェノサイバーの体はエレインがになっているが、その際に双子の姉であるダイアナも精神融合しており、エレインに呼びかける。
 単独では暴走してしまう危険性のあるエレインに言葉を投げかけ続け、「自分たちはこの世界にいてはいけない」と必死で訴え続けている。
 つまり、感性で行動するエレインに対して、「理性」で彼女を抑える姉なのである。

【Wepon】
 なし

【人物背景】
 神秘の生体エネルギー・ヴァジュラを秘めた双子の少女の妹。
 双子の姉であるダイアナと精神融合し、虚界の魔獣ジェノサイバーへと変身する。
 その強大なエネルギーは、エレイン自身も制御する事ができず、時として暴走し、世界を滅ぼしてしまうほどの力を発動してしまう。
 彼女は、非常に純粋な心を持つが、親しくなった子供たちが戦争で殺されていく姿を見て、彼女は人類に仇なし、世界のほとんどを滅ぼした後で、長い眠りについた。

【願い】
 エレインのままでいい。
 友達や母や娘や姉と生きられるささやかな幸せが欲しい。



【マスター】
速水ペルシャ@魔法の妖精ペルシャ

【マスターとしての願い】
 なし。

【能力・技能】
 様々な職業に変身する魔法を使う事ができる。
 100メートルを8秒台で走る野生の身体能力を持ち、大の大人の男でも腕力で敵わないほどの馬鹿力を持つ。

【人物背景】
 アフリカで生まれ、自然の中で育った元気な少女。
 一応、虎に育てられたとかそういうわけではないので、普通に日本語を話す事ができる。
 11歳の夏に日本に向かう途中、ラブリードリームの妖精から、愛のエネルギーを集めるための魔法を託される。
 魔法の力で様々な職業のスペシャリストに変身する事ができ、言葉遣いも大人っぽく変化する。
 1年以内にエネルギーを集められなかったり変身する姿を他人に見られると、愛する人が女性に変わってしまうという制約がある為、正体を明かす事はできない。
 「やーの」、「わーの」、「うっすらパー」といった奇妙な言葉を使う。

【方針】
 不明。

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最終更新:2015年01月26日 08:56