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東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE



彼女は以前から存在していたのか、あるいはその病ごと、この聖杯戦争のために造られたのか、真実がどちらかはわからない。
ただ、彼女はひどく憔悴していた。
毎夜毎夜、赤い月の夢を見るのである。
夢の中で彼女は一面の夜の砂漠の中に立っている、星一つ無い夜空にあるのはただ赤く妖しく輝く月のみ。
だが、その月はよく目を凝らして見れば、月では無い。球の形に押し込まれた幾億もの内臓なのである。
それは果たして心臓なのか、膵臓なのか、胃袋なのか、肺なのか、原型がわからなくなるまでに圧縮されたそれらは、見ている内に砕け、彼女に降り注ぐ。
そして、彼女は壊れた月の破片に押し潰され、死ぬことも出来ずにもがき続ける。

「夢など見るのではなかった」

そして誰ともわからぬ声を聞き、彼女は覚醒する。
現実世界の彼女に肉体的な痛みも疲労も一切存在しない、ただ夢の中での超現実的な痛みは彼女の心を確実に蝕んでいた。
その治療のために最近開業した精神科を訪れることにしたのだ。
新宿駅を出て、徒歩十分。
ビル群の中にひっそりと、しかしはっきり異質な物として建つ巨大な洋館こそが、彼女の目的地である。
そのデザインはとても病院とは思えない、郊外のレストランとでも言われた方がしっくり来るだろう。
だが、その一見病院とは思えないデザインが目的であると彼女にこの病院を薦めた母親は言った。
一見して病院とわからないデザインが精神科に行くというストレスを和らげるらしい。

「うわぁ……」
扉の前に立つと、玄関の扉はギイと音を立てて児童で開く。
中に入り、一瞬彼女は夢のことも自分が精神科に来たことも忘れていた。
まず、目に入ったものは高級感を漂わせるアンティークの調度品である。
彼女にはその価値がどれほどのものなのかわからなかったが、少なくとも自分には一生手の届かないものであることだけは理解した。
敷かれている赤いカーペットもきっと高級品なのだろう、彼女は二回程その場で飛び跳ねた。
正直なことをいえば、タップダンスを踊りたいほどにこの高級感溢れるカーペットを堪能したい。
それと同時に耳に入るのは、奥の部屋から聞こえるピアノ演奏だ。録音ではなく、生の音のようである。

「こんにちは、お嬢さん」
「わっ……」

これ以上驚くことはあるまいと思っていたが、奥の部屋から現れた老医師を見て、彼女は再び驚いた。
外国人である、彼女が判断するにはおそらくはヨーロッパ系。
その両目は知性の輝きに満ちており、口元は薄く微笑んでいた。

ぞくり――と、彼女は寒気を感じた。
邸内が寒いわけではない、一生をこの館で過ごしたくなるぐらいには丁度良い室温である。
そうだ、目の前の老医師の目が――

「予約をされた方では?」
「そ、そうよ……」

何を考えているのだろう、と彼女は己の頭を小突きたくなった。
きっと、相手が外国人だから変に緊張してしまったのだろう、そうに違いない。
彼女はそう判断し、部屋へと促す老医師に付いて行く。

「わぁ……」
診察室だからといって、館の雰囲気が変わったわけではない。
中央には貴族がパーティーに使うようなテーブルが置かれており、その上でキャンドルがゆらゆらと妖しい光を放っている。
隅にはピアノが置かれている、先程まで弾かれていた形跡がある、やはり目の前の老医師が弾いていたのだろうか。
そして、壁には幾つも絵が掛けられている。一見して上手いとわかる、だが誰が描いたかを判断できるほど、彼女には画家の知識はなかった。

「えっ……」
「何か?」
どこかの大聖堂、どこかの海、どこかの塔、そんな絵の中に、彼女は見た。

「あ、赤い……赤い月!何で!?ちょっと説明しなさい!!アンタ!!」
夢の中で彼女を何度も殺した紅い満月、その絵が何故ここに。
掴みかからんばかりの勢いの彼女の様子を見て、老医師はああ、と得心し、言う。

「あれは何時のことだったか、夢の中に一度だけ、紅い満月が現れた。
牢獄内は、酷く退屈で……新しい出会いというは気晴らしに最適だ。どうした……?座れよ」
「…………ッ、早く説明してよね」
老医師に促されるままに、彼女は椅子に座った。
同じ夢を見たのか、いやそういうわけではないらしい。
話の意味がよくわからない。牢獄。
目の前の老医師の雰囲気が変わったような気がする。
動物園のライオンは檻に入っているから安心だ、でも逃げ出して、目の前にライオンが立っていたら、そんな幼いころの疑問がふと、蘇る。

「このまま、私のことを話そうか。それとも……君のことを話してもらおうか。
酷く汗をかいているね、緊張している?目の下の隈も酷い……それに、君の服から焦げ臭い匂いもする。料理を失敗したかね?」
「えっ、はっ、かっ、関係ないでしょ」
「香水は……使い慣れていないようだな、嘔吐の臭いを消そうとしたなら失敗だ、余計に臭う。香水ではなく、バニラエッセンスでも使っていたほうがマシだ。
それに、過食症になる可能性もある。嘔吐に快楽を覚えているね。腹が膨らみすぎている、だが……吐かなかった、君の倫理観が働いているな」
「あっ……わ、私、帰るわ!二度とこんな所来ない!馬鹿!死ね!変態医師!」
咄嗟に席を立ち、彼女は出口に向かって駆け出す。
彼女ははっきりと老医師に対し恐怖の感情を抱いていた。

「レディーの振る舞いをしたまえ、マドモアゼル」
だが、いつ現れたか――扉の前に突如現れた長身の男が道を塞いでいる。

「君が紅い満月を見てここにいる"人間"なのか……」
「それとも違うのか……ンッ!どうでもいい!」
首にかかる圧力が、長身の男の両腕によるものだと気づいた時には遅すぎた。


意識の覚醒と同時に、生きていると感じる間も無く彼女は激痛に襲われた。

「アッ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
自分に何が起こっているのか、確認したい。
だが、目が開かない。
いや、彼女は知る由も無いことだが、その両目は刔られていた。

耳から得られる情報は、ナイフとフォークの動く金属音と、静かな咀嚼音。
そして。

「ムッシュハンニバル……本日のメインディッシュは?」
「活造りだ」

今の状況を想像させる最悪の会話だけ。


終身囚であるハンニバル・レクターはある日、夢の中で紅い満月を見た。
そして、それを描いた。
夢の中の記憶を頼りに紅い満月を紙に再現することは、彼にとって難しいことではない。

書き終わり、完成した紅い満月の絵を目視した瞬間。
彼は東京にいた。

「Ah……ムッシュ、君が僕のマスターかい?」
「そういうことらしいな」

洋館の一室、ディナーを待ち望むグルマンディーズのように、彼らは向かい合って座っていた。

瞬間移動――ありえるはずのない現象を、彼は自然に受け入れていた。
向かい合って座るサーヴァントという存在も、そして聖杯戦争もだ。

「さて、ムッシュ……Ah……」
「ハンニバル・レクターだ」
「オウケィ、ムッシュハンニバル……まず、どうしようか」
「……日の光を浴びて、食事にしよう。気心の知れた友人と摂る食事は何よりも美味しい」

「oops、先程も言ったが、僕は喰種……人間と同じ食事はノー」
「食事にしよう、アサシン。」



「君も私も大好きなものを食べに行こう」





【クラス】
アサシン

【真名】
月山習@東京喰種

【パラメーター】
筋力C+ 耐久B+ 敏捷D+ 魔力E 幸運C 宝具D

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
自身の気配を消す能力。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
美食家として活動していた彼を喰種対策局は討伐することは出来なかった。

【保有スキル】
喰種:B
喰種という種族としての特性、水と人体、珈琲以外の食事に対し拒否反応を起こし、無理に摂取すれば体調不良に陥る。
また、飢餓状態に陥ると激しい頭痛や判断力の低下に陥り、飢えを満たすために親しい友人であろうと構わず襲いかかるようになる。
しかし、人体を摂取していれば筋力増強、回復力強化、機動力推進などあらゆる恩恵がもたらされる。

【宝具】
『捕食器官(ナイフにしてフォーク)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
Rc細胞によって構成されており、硬化と軟化を繰り返しながら自在に動く。喰種の捕食器官である赫子。
肩甲骨の下あたりから現れる金属質の赫子であり、高密度のRc細胞の凝縮で赫子の中で随一の頑丈さを誇るが、重量のせいでスピードで劣り扱いづらい。
その形状は螺旋を描いている。

【weapon】
三日月のマスク
彼の素顔を隠す三日月の仮面

【人物背景】
東京二十区で美食家(グルメ)として恐れられた喰種。
その名の通り、捕食対象の特定部位を選り好みして食べるなど食事にはこだわりを持っており、ある青年に対しても食材として異常な執着を持っていた。
ランサーとしての適正もあり、その場合は騎士としてその青年に関する宝具を持っていた可能性がある。


【マスター】
ハンニバル・レクター@ハンニバルシリーズ
(時期としては羊たちの沈黙でクラリスと遭遇する前)

【マスターとしての願い】
不明

【weapon】
ナイフ
スパイダルコ社製のSPYDERCO - Harpy C08
何らかの思い入れがあるようだ。

【人物背景】

レクターとの面接のルール

ガラスの仕切りに近づかない
鉛筆やペンは渡さない
ホッチキスやクリップも渡さない
書類は食事の差し入れ口から
彼からは何も受け取らない
個人的な話はしない
まともな人間だと勘違いしない

 チェサピーク州立病院ボルティモア精神異常犯罪者診療所 より

【方針】
不明

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最終更新:2014年12月21日 15:17