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東京は二度死ぬか ◆lnFAzee5hE


「善なる霊は来たれーーーーー!悪霊は去れーーーーーーっ!」

「教祖ッ!」
「教祖ァ!」
「キャーー教ちゃーーーーん!」

都内――某ライブハウスは今日も異常な熱気に包まれていた。
ステージ上、神官用の白衣を纏ったモヒカンのボーカルが叫ぶ、それに合わせて観客も狂的な叫び声をあげる。
それは何も知らぬ人間から見れば、一風変わった服装を纏ったロックバンドによるライブなのだろう、
しかし見よ、ボーカルが持っているのはマイクではない。
それはどこか心臓に似ていた、あるいは貝殻のようにも見える、鉄と岩と土を混ぜあわせ、押し潰し、捻じった様な形をしていた。
それはヒトならざるものによって生み出されたモノだった、名を天狗の宝器と呼ぶ。
そして、それを持つボーカルもまた、ただの歌手というわけではなかった。

コンビニエンスストアが24時間営業になったのは何故か、便利だからというだけではない。
光が必要なのだ、夜闇に潜む魔が現れぬように――常に夜を照らし続けるものが。

東京は知っている、夜の闇に潜む魔の存在を。
その魔の前で、人間はあまりに脆く儚いことを。

ガイア教、メシア教、ディーバ教、翔門会、幾つもの新興宗教団体がこの東京にあるのは何故だ、
人間は知らず知らずのうちに求めているのだ、文明によってなおも制しきれぬ魔に抗う方法を。

そして、このライブハウスに集まる人間もそうだった。
面白半分、社会からの逃避、真のオカルティスト、理由は様々あるだろう、だが、彼らは皆、知っていた。

「ゴッタクセン!」
「ゴッタクセン!」
「ゴッタクセン!」

新興宗教団体「狂天騒神会」――ここにあるものは本物なのだと。

「ある日ッ!街をッ!歩いていたらッ!神ッ!様がッ!憑いてッ!言ったッ!」
ボーカル――いや、この宗教団体の教祖である岩田狂天がまるで歌うかのように韻を踏んで話す。ラップだ。
この宗教団体に人が集まる一因にはこれもあるのだろう、今、人々が必要とするのは堅苦しい説法ではなかったということだ。
掻き鳴らされるギター、ひたすらに激しさを重視したドラム、自らの胸に神の言葉を刻みつけるベース、
原初の時代――音楽こそが神とのコミュニケーションツールだった、ならば今この時代にあって始まりへと帰っているのだろう。
感極まって泣き出す女がいる、声が枯れていることにも気づかず叫び続ける男がいる。
このライブハウスという狭い世界はただひたすらに、シンプルだった。
そして、この熱狂は中世におけるサバトをどこか彷彿とさせた。

「太陽ッ!紅くッ!満月ッ!紅くッ!さぁッ!恐れるなッ!人の子よッ!願いッ!描きッ!聖杯ッ!掴みッ!世界はッ!紅いッ!求めるは何ッ!止めるモノは無しッ!」

「修羅ッ!」
「修羅ッ!」
「シュラァッ!」

熱狂が頂点まで高まった時、世界が一瞬、ぼやけた。

「■■■■■■!!!!!!!!!!!!」
その雄叫びは、会場内のあらゆる音を切り裂いた。
それは言語ではない、人間の言葉ではない、だが、世界のあらゆる動物と比べても、それと一致するものはない。
それは魔の声だった、会場内の全てが望んでいた本物だった。

「何故ッ!人はッ!神を作るッ!それはーーーーーッ!神など存在しないからだッ!
人はッ!滅びッ!神はッ!失せるッ!しかし魔だけは生き残るッ!ならばどうするッ!それをどうするッ!魔を神にッ!大神にッ!」

全てが嘘であったかのように、世界が静まり返った。
岩田狂天はステージ上で仰向けになって倒れこんだ。
信者たちは託宣を聞き、何も言わず――ただ祈った。


スタッフに運ばれて、岩田狂天がステージから去っていく。
そして、誰かが何か言葉を発し、波紋のように信者間で言葉が広がっていき、
がやがやとした賑わいが戻ったところで、誰かが会場から去り始め、そして今日のイベントは終わった。

「お疲れ様でした」
「おう、おつかれ。俺は帰るから、あとよろしく頼むわ」
「はい」

タクシーに乗り、岩田狂天は自宅へと向かう。
乗る度に彼は思う、教祖という立場はそのままにあるのに、自分の車は持ち込ませなかった紅い満月はどうしてこうも融通が効かないのだと。

「アンタもそう思うだろ」
「えっ、何がですか?」
「あぁ、アンタじゃない」

車内には運転手と岩田狂天の二人だけだ、誰に話しかけたというのだ。
しかし、このような格好をしている人間ということはどこか頭がプッツンしているのだと運転手は思い直し、気にせず車を走らせる。

だが、運転手には見えてはいなかったが、後部座席には確かに、岩田狂天ともう一人が座っていた。

「■■■■■■」
それは人でありながら、人ならざる姿のモノだった。
まず目に入るのは、顔から足先まで全身に入ったタトゥーのような文様だろう、それは心臓の鼓動に合わせてぼんやりと点滅していた。
上半身には何も着ず、ただジーンズとスニーカーだけを履いていた、冬の寒さなど気にならないのだろう。
そして、魔性であることの象徴であるかのように、その目は金色に輝いていた。

「運転手さんさ、アンタ何でも願いが叶う……って言われたらどうする?」
「はぁ……まぁ、やっぱり老後を安心して暮らせるぐらいのお金ですかねぇ」
この質問に何の意味があるだろうか、運転手は訝しんだ。
だが、岩田狂天は特に何かするでもなく、そうかと言って、黙りこんでしまった。
タクシーが目的地へと到着する。

「俺が、あんたの願いを叶えるって言ったらどうする?」
「それはつまり……?」
「まぁ、今は気にしないでくれよ……そのうち、そのうち」
料金を丁度払い、岩田狂天は魔を連れて家の中へと入る。
その後ろで運転手の舌打ちが聞こえた。気にしない。

「そのうち、あんたにも聖杯をやるよ」

冷蔵庫を開き、取り出したミネラルウォーターを飲みながら、
なんとなく、岩田狂天は人修羅との出会いを思い出していた。

その日も夜で、説法の帰りで、冷蔵庫でミネラルウォーターを飲んでいた。
東京を離れて修行に行こうと思ったのに、何故か東京を出る気にならなかったことが、紅い満月を思い出す切っ掛けだった。

「■■■■■■」
突然に岩田狂天の目の前に立っていたモノは、彼を一瞥して、そして興味をなくしたようだった。
そして、岩田狂天もまた、目の前に立つモノが支配出来るようなモノではないことを悟った、
いや、人の身に余るモノが支配できないことは、師匠の顛末を見る以前から知っていた。
ただ、目の前のモノはあまりにも危険すぎた、岩田狂天は宗教家ではあるが魔術師ではなかった、
全てを喰い尽くさんばかりに飢えている彼の乾きを満たす術を知らなかった、鎖から逃れ、東京を殺す恐れがあった。

故に、平将門を東京の守護神としたように、菅原道真を天神としたように、
聖杯によってあらゆる現世利益をもたらす神として、岩田狂天は「狂天騒神会」にて彼を祀った。

あるいはそれは彼にとって最適な取り扱い方だったのかもしれない、
魔の力の源であるマガツヒは、人間の強い感情から生まれる。
ライブハウスでの擬似サバトは魔を満たした。

だが、魔の性質は変わってはいない。
彼はひたすらに破壊を求めている。
全てに裏切られ、全てを失い、何も生み出せなかった彼は、全てを破壊することでその心の空虚を満たそうとしている。

「気長にやるとしますかね、気長に、気長に」
だが、魔とは、神とは、そういうものだ。
あまりにも巨大な力は人の手に余る。

岩田狂天は教祖という立場に飽きていた、だからこそ紅い満月を見た時、彼は決めていた。
手に入れた聖杯は、信者に分けると。

どのような願いを叶えるのだろうか、どのような世界を作るのだろうか、どのような神を生み出すのだろうか、
それを見届けて、旅に出よう、と。

「■■■■■■」
バーサーカーが興味なさげに呟く。
それは神が彼に送った言葉だった。


呪われてあれ。


【クラス】
バーサーカー

【真名】
人修羅

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷B 魔力A 幸運D-- 宝具A+++

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:B
何もかもを破壊した彼は狂っていた。
全てのパラメーターが1ランクアップしている。

【保有スキル】

貫通:A
 始まりのマガタマ、マロガレの最後の力。
 Aランク以下の物理半減、物理無効、物理吸収を無効化し、相手に攻撃を加える事を可能とする。

自己改造:A
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

反撃:B
 デスカウンターによる反撃、相手から攻撃を受けた際、状態を立て直し瞬時に相手への反撃を試みる。

【宝具】
『禍魂(マサカドゥス)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 禍魂(マガタマ)と呼ばれる悪魔の力が結晶化されたもの。
 これに寄生された人間は適性があれば悪魔に姿を変え、無ければ死に至る。
 東京の守護神たるマサカドが生み出した究極のマガタマであり、この土地が東京であるが故に扱うことが出来る宝具。
 A+++ランクまでの物理攻撃と神霊クラスを除く全魔術、呪殺即死、破魔即死、及びあらゆるバッドステータスを無効化する。
 ただし、この宝具は予め、バーサーカーに寄生させておく必要があるため戦闘中に使うことは出来ず、
 また、その使用には莫大な魔力が必要となる。

【weapon】
  • 『マロガレ』
禍魂(マガタマ)と呼ばれる悪魔の力が結晶化されたもの。
これに寄生された人間は適性があれば悪魔に姿を変え、無ければ死に至る。
Dランクまでの破魔属性の攻撃を無効化する。

  • スキル
東京での戦いの中で、バーサーカーが身につけたデスカウンターを除く七つのスキル。
狂化状態で使用するならば令呪を必要とする。

【人物背景】
世界を創成するために、東京を球状にして世界を崩壊させる東京受胎を、
偶然発生の中心である病院にいた事から他数名と共に生き残った少年。
ルシファーに魅入られ「マガタマ」を体内に寄生させられる事で悪魔へと変貌する。
悪魔が巣食うボルテクス界となった東京をさ迷い、世界の在り方を示す様々なコトワリに触れ、
そして、全てのコトワリを拒み、世界創世の可能性を無くした。


【マスター】
岩田狂天

【マスターとしての願い】
聖杯を信者に与える

【能力・技能】
師から「天狗の宝器」を与えられ、「自分の神」とそれによる霊感を得た。
信者に対し、託宣を行う場合はトランス状態になり、自分で何を言ったかは覚えていない。

【人物背景】
出典は『稗田のモノ語り 魔障ケ岳 妖怪ハンター』
宗教団体「狂天騒神会」の主催。モヒカンにサングラスという出で立ちで、
説法をライブ会場でラップ調で行うという独特の手法で若者に人気を得ている。

【方針】
まずはバーサーカーを鎮める

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最終更新:2014年12月25日 19:54