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ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA




ビスケットが砕ける。

『生き残るのは本当に強いものだけでいい。
 豊かな家族や国に生まれただけでクズが幸福な人生を送り、そうじゃない子供は空腹や寒さで震えているような世界。
 そんな世界こそが、そもそも間違いなんだ』

目の前の男は、ビスケットを食べられる。

『幸福とは、その人間の能力だけで得られるべきなんだ!』

僕たちは、ビスケットを食べられない。

『お前は、弱いものには生きている価値がないと言うのか?』

そんなの、間違っている。

『まさに!その通り!』

弱者は死ななければいけない。
弱者は、生きていてはならないんだ。




『例えば――――――――――――――――『君』の妹さんのように?』








   ◆   ◆   ◆


「お帰りなさい」

男がドアを開けると、そこには一人の少女が居た。
若く、美しく、艷やかだった。
緑色の野暮ったいジャージを身を包んでも、なお、色っぽい。
色欲の権化のような少女だった。
当然、彼女は通常の少女ではない。
彼女は英霊、アサシンのサーヴァント。
豊満な女躰と、柔らかなブロンドヘアー。
タレ目がちな瞳は母性を感じさせ、その存在に全てを任せればどれだけ幸福に成れるだろうか。

「ただいま」

しかし、男の獣欲をくすぐる媚体を前にしても、男の前に色欲の色はなかった。
お互いに欲望を感じさせないそのやり取りは、新婚としての生活というよりも家族としての生活だった。
兄と妹の、そんな生活だった。

「あら、それ……」
「これ好きでね」

ハハッ、と笑いながら一つ百円程度のハンバーガーを口にする。
ジオット・セヴェルス。
この紅い月に導かれる前に着込んでいた高級スーツはすでに路銀に変えた。
特別なものではなかった。
少なくとも、ジオットはそう思っていた。
今の彼は日々の生活を日々の仕事で賄うフリーター、住処を得た風来坊だ。

「いつもお疲れ様です」
「いやぁ、でも日雇いのほうが楽だよ」

かつて、誇張なく世界を支配した大グループ『ジャッジメント』の会長だ。
ナノマシンを使って微弱なウイルスをばら撒いて、その年の流行病を仕立てあげて製薬業界をコントロールする。
そんなことばかり続けていた。
後は、順番を待つだけだった男。
なのに、誰も自分の前に立ってくれなかった男。

「世界を支配するのも大変だったよ。
 ウイルスばら撒いて、その年の病気を起こして、イレギュラーが起こらないようにしたり。
 その病気のワクチンがきちんと無駄にならないように在庫を掃けさしたり。
 まだ出来立ての世界支配だから、逆らう奴とかもいるし」

二個目のハンバーガーに手を伸ばしながら、アルバイト求人誌を床に置く。
あまりにも自分勝手な『悪』が世界を支配するための理論に、しかし、アサシンはニコニコとしたままだった。
アサシンは卓袱台へと食事を運んだ。
もやしだけを炒めたもやし炒めであった。

「マスターも大変ですね。
 私も『悪い人』でしたが、どちらかと言えば兵隊さんでしたので」
「いやぁ、君たちも君たちで大変だろう?」
「マスターほどではありませんわ」

アサシンは豊満な胸を揺らしながら、微笑んだ。
それでも、目の前の料理に伸ばす手を止めない。
卑しいまでの姿は、しかし、アサシンに染み付いた貧困の習慣だった。

「友達だけど、その心は決して消えませんでしたわ。
 彼女は友達だけど、私は線の外側に居た」
「線?」
「テレビに映る側と、テレビを見る側ですわ」
「あー、なるほどね」

得心したように、ジオットは頷いた。
ようは、そういうものだ。
現実のはずなのに、フィクションに映る。
そんな本来存在しないはずの線の『内側』と『外側』だ。

「聖杯はどうなさいますの? 使いますか? それとも、使いませんか?」
「使わない理由なんてないよ。遣わないなんて言うやつは、所詮『酸っぱい葡萄』だろう?
 人間が自分自身の力で奇跡を起こせないから、暴力的なまでになんでも叶える奇跡を『いけないもの』だとする」

なんてこともなく呟きながら、ジオットは六畳一間の安アパートの畳に腰を下ろす。
尻もちをついて座ることは慣れていた。
幼少時代では、椅子に座れる機会のほうが圧倒的に少なかったからだ。
そして、コンビニで買ってきたワンカップ酒を、別のカップに注ぎ込む。
聖杯。

「僕らに注げるものが酒で、神様に注げるものが奇跡だってだけ。
 別に、おかしなことじゃないさ」

そう言いながら、グイッ、と日本酒を煽った。
安っぽい甘さがジオットの喉を通り過ぎた。
嬉しそうに顔を綻ばせる。

「使っていいって言うならもらおうよ、やっぱり便利だろうしさ。
 遊んでもいいし、本当に欲しいものをもらってもいいなぁ」

ただ、その言葉だけは、どこか演技がかったものだった。
心の奥底から願うものが、容易く手に入ってしまう可能性に嫌悪している感情を隠そうとしているものだった。
アサシンは何も言わなかった。
己の中で処理できないものは、確かにある。
それを暴力的なまでに解決してしまう、自らよりも『恵まれたもの』に対する嫌悪はアサシンの中にもある。

「マスターは、ここに来る前は何をしていたんですか?」
「僕は、まあ、列に並んでてね」
「列?」
「その列に並んでて、ついに僕の順番が来たかと思ったら……
 なんだか、順番じゃなかったみたいで、ヒーローに追い返されちゃった。
 でも、列に戻る気もなくなってね」
「……列とは、なんですか?」

その比喩表現が上手く掴みとれず、アサシンは問いかけた。
ジオットは言葉を続ける。
どこか優しい瞳をしていた。
その瞳が、自分を誰かに重ねていることにアサシンは気づいた。
恐らく、ジオットは自身を妹に重ねている。

「誰かに牙を向けるってことは、列に並ぶってことなんだよ。
 いつかは、自分の順番が来る」

ジオットは笑いながら言った。
フォークで、もやし炒めに舌鼓を打つ。
悪くはない味だった。
丁寧に調理されているが、しかし、安っぽさが消えない。
チープな味はジオットの舌が好むものだった。

「マスターの言う『列』とは違いますが、列ならば、私も並んだことが有ります」
「へぇ」
「きっと、次は私の番だ。きっと、次は私達の番だ。
 そう考えて、待って、待って、待って――――結局、列なんてないことにやっと気づきました」

アサシン――――悪忍・詠は嘲笑ってみせた。
己を嘲笑う笑みだった。

「私の居た時代、マスターの居た時代。
 人は皆、モニター越しに映る幸福と悲劇を知っています。
 しかし、それは現実ではないのです。
 私達がモニターに映る裕福な生活を現実だと信じられなかったように、富裕層もモニターに映る貧困層を現実だと思えなかった。
 だから、遠くにある貧困へと支援はしても、近くにいる私達にはなにもされなかった。
 世界に見捨てられ気分になり、それは違うことに気づきました」
「そうだね、それは違うよ」

ジオットの言葉に、アサシンは笑った。
かつての嘲笑うように、あるいは、慰めるように。

「施しを待っていてどうなりますか、自らで掴むしかありません。
 『存在してほしい』施しを存在させるためには、自らが誰かに施しを授けるしかない。
 フィクションをどうにかして実在させるしかない」

そう言った後、アサシンは少し表情を歪めた。
苦痛を耐えすぎたゆえの笑みだった。

「そうわかってもなお、憎しみは消えません。
 富裕への憎しみは、決して消えません。
 救ってくれなかった、『善』への憎しみは消えません。
 友情を抱いても、心に染み付いた憎しみは消えません」

詠はジオットの目を見据えた。
ジオットは笑っている。
世界から隔絶された笑みだった。
どこかで止まらなければいけないのに、誰も止めてくれない笑みだった。

「例え、結末がどうなろうとも、私もサーヴァント。
 貴方の『悪』の誇りに舞い殉じましょう」
「誇りだなんて、そんな大層なものじゃないけどね」

ジオットは笑う。
ひとまず、やるべきことは見つかった。
捧げる願いはないが、手段と目的はわかった。
ならば、その後に願おう。

「願いを叶えるってことを簡単に勘違いしている奴らを殴るのは楽しいね」



   ◆   ◆   ◆


誰もが、現実に不満を持っていても世界を変えようとしない。
自らがフィクションを持ってきてやっても、人々は現実を望んだ。
何かが違っているような気がした。
ただ、敗北して、終わることは分かっていたことだ。
納得はできずとも、構わなかった。
赤い男が迫る。

「――――」

そして、そのまま立ち去った。
赤い男はジオットを殺さなかった。
復讐を成し遂げた時から並んだ、復讐されるための列の順番が来たと思ったのに。

敗北したジオットは呼ばれた。
願いもわからなくなったまま、誘われた。

フィクションが消えた後で、なお、紅い月が輝いていた。

ふと、あるオカルトを思い出した。
『どうしても叶わない願いを叶えてくれる、紅い月が存在する』と。

――――願いを叶えるために現れたというヒーローを、『赤い男』を、連想させた。


【クラス】
アサシン

【真名】
詠@閃乱カグラ

【パラメーター】
筋力B 耐久D+ 敏捷E 魔力D 幸運E 宝具D

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。

【保有スキル】
悪忍:B
政府公認ではなく、私企業などの依頼も受けて忍としての任務を行う者。
詠は高いスキルランクを誇っており、周囲を忍以外から隔絶する忍結界を使用することが出来る。
また、忍転身を用いることで、一瞬で衣服を忍び装束へと変化させることが出来る。

貧者の英雄:B
その名の通り、貧しき英雄。
もちろん、例外は存在するが、詠は根本的な部分で富裕層と分かり合うことができない。
恵まれた資金を持つマスターと契約を結ぶと、そのステータスを1ランクをダウンさせる。
しかし、貧者との契約であると筋力・耐久・敏捷を1ランクアップさせる

自己暗示:E
自身にかける暗示。通常は精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
自らは空腹でないと思うことで、通常では考えられない期間無食で過ごすことが出来る。

【宝具】
『裂隙、氷下の国より(ニブルヘイム)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:10人
詠が全身に仕込んだ宝具を一挙に解放させる。
両腕のボウガンと大砲を次々に発射し、忍び衣装の中に隠した爆弾を炸裂させる。

『神よ、何処に行かれたのですか(ラグナロク)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2~20 最大捕捉:20人
詠が背負う、身の丈はある大剣の宝具。
ただでさえ巨大な大剣は真名を解放させることで、さらに巨大な大剣へと姿を変える。
身の丈の倍はあるラグナロクを振るい、全てを一刀に断つ。

【weapon】
両腕に籠手のように装着したボウガンと大砲、及び爆弾。
そして、背に備えた自らの身の丈ほどもある大剣。

【人物背景】
選抜クラス所属の秘立蛇女子学院2年。
お嬢様のような見た目と口調だが、実は恵まれた育ちではなく入学後も日々の食事にも困るほど困窮している。
裕福な生活を送っているお嬢様である斑鳩にはそんな事情から憎悪の感情を抱いている。
好物は安価な食材として知られるもやし。

かつて、貧困で飢えていた時に街頭テレビで自国の富裕層が海外の貧困層への支援を行う会見を目にしてしまう。




【マスター】
ジオット・セヴェルス@パワプロクンポケット14

【マスターとしての願い】
まだ決めていない。

【weapon】
これといって武術の心得などは無いが、2年前にNOZAKI社で回収した『ヒーロー』の遺体を改造し「変身スーツ」として使用している。
これにより生身での戦闘が可能になるほか、光線兵器に対する防御力が極限まで高まる。

【能力・技能】
特殊な能力は技能を持たないが、高いカリスマ性と辛抱強い執着を持っている。

【人物背景】
『ジャジメントグループ』会長。
人間の望みや恐れの具現化を促す装置「ドリームマシン」を用いて人為的にカタストロフを起こし、地球を強者のみが生き残る世界に作り変えようとした。
幼少期を紛争地域で過ごして妹以外の家族を失った後、国際的な支援を受けられない(「戦争で悪者にされた側」の国だった為)環境で極貧生活を送る。

しかし幼少期にその家族共々、旧支配者グループを構成する欧州の巨大財閥『カエサリオン』の一族に踏み躙られ弟を失う。
残った妹も心臓移植のために殺害された過去がある。
守るべきものが無くなって以降はカエサリオンへの復讐のみを生きる糧とし、過激な手段で裏社会をのし上がっていった。
その憎しみはカエサリオンを滅ぼしても消える事はなく、捕獲したカエサリオン一族を殺すことなく苦痛を与えながら「飼育」している。
その様子は、脳髄のみを培養液に漬け込み管理する、といったあまりにも非人道的なものであり彼の狂気を象徴している。

また、強大なカエサリオンに復讐するには人外の存在の力に頼らざるを得ず、妻との合意の上で彼女を生け贄に捧げ、亡霊を呼び出し契約する。
しかし、その後に妻が子供を身篭っていたこと、自分の復讐への決意を鈍らせない為に妊娠を黙秘していた事を知ってしまう。
失ったもののあまりの大きさに、以後の彼は立ち止まるという事をしなくなる。

ハンバーガーを好むのは、彼が生き抜いた地域で最も豪華とされた食べ物だったことに起因する。
現在も奢侈な新作ハンバーガーは好まず、質素なハンバーガーを食べ続けている。
一番好きな食べ物は「母の手製のスープ」だが、既に色も味も記憶の彼方にあり、大好きだったということだけを今でも覚えている。

「カタストロフ」の際は乗り込んできた赤いヒーローと一対一の決闘になるが、カタストロフの頓挫を目の当たりにして戦意を喪失。
赤いヒーローがその場を去った後、ひとり残った自分を呼ぶかのように出現した紅い月に誘われ、この世から姿を消す。

【方針】
世界を壊す。

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最終更新:2014年12月25日 20:10