ベム&ピノキオ ◆devil5UFgA
ピノキオはおじいさんを助け、
まじめに努力し働き、
最後、妖精から人間にしてもらいます。
めでたしめでたし。
◆
世界は人間でないもので溢れている。
誰かが人間だと思っている隣人も、実は人間ではないのかもしれない。
それは鬼や魔、あるいは、妖怪などと呼ばれたりする。
誰もが隣に妖怪に居ることに気づいていない。
気づいているのは、妖怪だけだ。
人間は数が増えすぎて、人間がそばにいることが当たり前だと思ってしまっているのだ。
例えば、総髪の髪を黒い帽子で隠し、暗色のジャケットを纏った中肉中背の男。
多少変わってはいるが、誰もこの男が人間でないとは思わないだろう。
だが、この男は妖怪だ。
不気味な泡の中で生まれた、妖怪なのだ。
「……」
青年は人々に包まれながら、紅い月を見た。
青年は目深に被った帽子を、さらに深くかぶった。
人々の視線から逃れるような動きだった。
暗色の服装をし、手には骨のような杖を持ち、青年は歩く。
孤独が妖怪である青年を包んだ。
周囲の人々が寄り添っているからこその孤独だった。
常に自らの隣を歩いていた妹のような女も、自らの後ろをついてくる弟のような男も、今は居ない。
いや、果たしてその二人は男なのだろうか、女なのだろうか。
自分は男なのだろうか。
いつ生まれたのか誰も知らない。
己ですら、知らない。
暗い音の無い世界で、一つの細胞が分かれて増えて行き、三つの生き物が生まれた。
彼らはもちろん、人間ではない。
また、動物でもない。
だが、その醜い身体の中には、正義の血が隠されているのだ。
その生き物。
――――それは、人間になれなかった妖怪人間である。
妖怪人間――――ベムは総髪の髪を撫でる。
痩せぎすの身体からは妖気を発していた。
ベム自身が消したいと思っても消せない、人とは異なる、不可思議な妖気を。
現に、今も勘の良いのであろう少女が、振り返ってベムを何度も見ていた。
孤独を覚えたベムは、再び紅い月を見上げた。
「……ようやく死ねる、か」
呟いた言葉は、決してベムの言葉ではない。
空に輝く紅い月を見て、一人の男を連想したために出た言葉だ。
紅い月のようなどす黒い赤さを持った肌をした、自らの同類が口にしていた言葉だ。
ベムではない、別の妖怪人間が言った。
『正義だけでなく、悪の心を持つことで、妖怪人間は人間に成れる』
不気味な肌も、緑の血も、永遠の命も消え去る。
そして、人間と仲間になれる。
「……ピノキオ」
ベムは呟く。
すると、空気が蒸気を浴びたようにゆらめく。
その中から、ギターを背負った少年が現れた。
彼こそが、ベムのパートナーであるサーヴァント。
――――エクストラクラス、『ピノキオ』のサーヴァント。
ピノキオは『人形』だが、『人間』だった。
良心回路<ジェミニィ>だけでなく。
服従回路<イエッサー>だけでなく。
善悪両方の回路を持つことで、人間になり得たお人形。
ピノキオのクラスはそんなクラスだ。
人間になった人形の英霊。
「ピノキオは――――」
ベムはピノキオを見据えた。
ピノキオは視線を逸らさない。
ベム自身、高い戦闘力と不死身の身体を持っている。
死によって孤独から逃れるも出来ない身体を持っているのだ。
だからこそ、ピノキオに問いかけた。
自らと同じく、人間とは異なる身体を持つ人形へ。
「ピノキオは、人間、なのか?」
「……難しい質問だね、マスター」
ピノキオは答えあぐねているようだった。
ピノキオはすでにベムの正体に感づいている。
そして、ベムの視線の中に人間を羨む色を含んでいることに気づいている。
「マスターの求める人間ではないけど、聖杯は僕を人間と認識した。
ロボットではなく、人間として。
だから、ピノキオのクラスで現界したんだ」
人間が事故によってその身体の全てを機械に置き換えたとして。
果たしてその人間は人間なのだろうか、ロボットだろうか。
ベムは人間だと答えるだろう。
ピノキオも人間だと答えるだろう。
身体の問題なのだろうか。
ベムの解決を望む問題は身体の問題だが、同時に、それだけでないことも理解していた。
「聖杯は俺を人間として認識するのか?」
「また、難しい質問だね」
ピノキオは誤魔化すように背負ったギターを引き始めた。
誤魔化す、はぐらかす、という行為がピノキオの人間性の証明だった。
「それは聖杯のみぞ知る観測結果。
大事なのは、マスター自身が自分のことをどう思っているのか、さ」
ピノキオは嘘をついた。
平然と、嘘をついた。
実際のところ、大事なことはベムのベム自身をどう思うか、ということではない。
大多数の人間がベムのことをどのように思うか、だ。
ベムが人間に受け入れられるならば、ベムは喜んで自身を人間として観測する。
しかし、そうではない。
悪の心を拒絶したベムは、一生、人間のために生きる。
人間を羨み、人間を愛したために。
悪の心で妥協せぬまま、人間の悪を正す存在であることを選んだ。
「ピノキオ」
「なんだい?」
ピノキオはギターを引き続けた。
優しい音色だった。
ベムは目を細める。
これからの問いが、ピノキオに対して行っていい質問か躊躇った。
しかし、せずには居られなかった。
「ピノキオは、幸せだったのかい?」
音色が一瞬だけ乱れた。
悪意はなかったが、ベムは質問を悔いた。
触れてはならないものだったのだろう。
あるいは、ピノキオ自身が最も知りたいことだったのかもしれない。
音色が元に戻った。
ギターを引きながらピノキオ――――ジローという名のサーヴァントは口笛を吹いた。
「……さあね」
はぐらかすように応えた『人造人間』キカイダーは、
嘘をついていた。
◆
ピノキオはおじいさんを助け、
まじめに努力し働き、
最後、妖精から人間にしてもらいます。
めでたしめでたし。
でも、ピノキオは。
人間になれて。
――――本当に幸せだったのでしょうか。
【クラス】
ピノキオ
【真名】
ジロー@漫画版人造人間キカイダー
【パラメーター】
筋力C 耐久D+ 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具E
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
人間:C
人間証明、あらゆる判定においてジローは人間として扱われる。
例え、どのような身体や精神構造していようが、キカイダーは人間である。
【保有スキル】
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の機械を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
変身:D
ジローは人間としての身体と機械としての身体を持つ。
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
ジローは自らの気配を偽ることが出来る。
【宝具】
『不完全証明(ジェミニィ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ジローを人造人間キカイダーたらしめる宝具、良心回路とも。
常時展開されており、魔力の消費を必要としない。
本来の完全な良心回路はあらゆる善と悪を判別できるが、ジローの良心回路は複雑であるために善と悪に心を悩まされる。
『完成証明(イエッサー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ジローを人造人間キカイダーたらしめる宝具、服従回路とも。
常時展開されており、魔力の消費を必要としない。
本来、嘘をつくことのできない創造物であるジローに嘘をつかせる悪の回路。
ジェミニィとイエッサーが常時解放されているジローは、もはやロボットではなく人間である。
【weapon】
腕に電磁波をまとわせ、敵を斬り裂く。
兵装というよりは必殺技。
キカイダーの最大火器、眼から強力な破壊光線を放出する。
その威力はキカイダー01、キカイダー00を一瞬で破壊するほどである。
その破壊力を恐れたジローは使える事は知っていたものの、あえて使用しなかった。
だが、服従回路を埋め込まれた後、その影響でためらい無く使用し、一瞬で01達を破壊している。
【人物背景】
人間態の名前はジロー。
息子であった一郎の死を受けて、光明寺博士が制作した人造人間。
プロフェッサー・ギルなどの悪人に利用されないように、光明寺博士によって良心回路が付属されている。
だが、その良心回路は不完全なため、ギルの笛やハカイダーの口笛などにロボットを操作する道具によって操られることがある。
初めは人体の構造なども理解していない様子だったが、その後学習していき、人が傷付くことや死ぬことをさけるようになる。
一度ハカイダーに倒されるが、ハカイダーに光明寺博士の脳の影響が見られたために、ハカイダー(光明寺博士)によって修理され、『ダーク』のアジトを破壊することに成功する。
だがハカイダーから脳を移植しなおすことで助け出した光明寺博士は記憶を完全には取り戻していない。
また、ダークアジト爆破によって菌に侵された人間との遭遇、キカイダーとの戦闘で脳をハカイダーへ移植することとなったギルとの再会で、自責におわれることとなる。
その後偶然もあり、自身のプロトタイプであるキカイダー01(イチロー)と出会う。
新たな敵『シャドウ』との戦いに身を落としていく。
しかし「誤解」や「嫉妬」によりイチローと離れてしまい、その「寂しさ」を紛らわすためにキカイダー00を制作。
後に、シャドウやハカイダー(ギル)に立ち向かうが、ジャイアントデビル(アーマゲドン)の前に捕らえられ、服従回路を取り付けられてしまう。
こうして、ジローは人間と同じ「不完全な善」と「完全な悪」の二面性を持った、「心」を持つようになった。
【マスター】
妖怪人間ベム@ドラマ版妖怪人間ベム
【マスターとしての願い】
人間になりたい。
【weapon】
凄まじい強度を持つ、骨のような杖を持ち歩いている。
【能力・技能】
超人じみた身体能力と不死身の肉体を持つ。
【人物背景】
人間形態は帽子を被った銀髪の青年。
寡黙で無愛想な性格だが、どのような人間にも優しく接し、いつか人間になれる日を夢見て流浪の旅を続ける。
助けを必要とする人間を見過ごすことは出来ず、それを忘れてしまうと本当の妖怪になってしまうと語る。
人間になった時に困るからと、箸の持ち方など人間の行儀作法をベロに教える。
アニメ版のような重厚な人格はなりを潜めている。
だが、自身の存在や他者との関係に思い悩んだり敵対する相手に熱く語りかけたりするなど、常に超然としていたアニメ版より若さを逆手に取った人間味の強い人物として描かれている。
自分達の正体を知りながらも受け入れてくれた夏目に強い信頼と友愛を寄せる。
東郷への復讐を果たそうとする夏目を止めるため、「ただの妖怪になっても構わない」と夏目の代わりに東郷を殺そうとする。
人間になる方法とは、すなわち悪を受け入れること。
ベム達が正義だとするならば、『悪』である『名前の無い男』を受け入れることで人間へとなれる。
しかし、人間になる事を悩んだ末にベムは拒否する。
人間が悪の心に負けそうになった時、死ぬことのない自分たちが止めてやるために。
廃研究所で名前の無い男を倒し、夏目の眼前で燃え盛る炎の中にベラ・ベロと共に消えていった。
【方針】
人間になりたい。
最終更新:2014年12月29日 14:07