相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg
――そうだ、俺が殺した!! さぁ憎め!!
嘲るようなその声に背中を押され、相良宗介は窓から身を躍らせた。
直後、背後から爆発が押し寄せてくる――ということはなく、宗介は着地を失敗して強かに背中を地面に打ち付けた。
痛みに悶絶する。だが、立ち上がる気力が湧いてこない。
何故か。理由などはっきりしている。
「ちど……り……」
彼女が、死んだからだ。
ミスリルのエージェント・相良宗介の護衛対象である少女、千鳥かなめ。
同じクラスに通うクラスメイト。何度も共に視線を潜り抜けてきた戦友。
そして、あるいは、宗介にとってただ一人の――。
「……あ……」
改めてその事実を認識し、身体から力が失せていく。
告げたのはガウルンだ。宗介にとっての仇敵、腐れ縁と呼ぶのも忌々しい最低のクソ野郎。
何度も戦場で殺し合い、誰よりもガウルンを知る宗介だからこそ、その言葉が嘘だったとは到底思えない。
やると言ったらやる。あの男はそういう奴だ。
ガウルンが本気で千鳥を殺そうと思い、手勢を差し向けたのなら、宗介が傍にいない千鳥など赤子の手を捻るが如くだ。
宗介に変わって千鳥の護衛についた情報部のエージェントなど宛てになるはずもない。
千鳥かなめは間違いなく、疑いなく、ガウルンによって殺されたのだ。
宗介は何も出来ず、この地で無様を晒している。
千鳥のいる東京から遠く離れた、この香港の地で――。
「どうした、若いの。立てないのか?」
その時、背後から聞こえてきた声に驚き、跳び起きた。
生きる意思のない身とて、身体に染み付いた動きまでは消えない。
一瞬で銃を引き抜き背後へと向ける。そこには壮年の男がいた。
手を伸ばせば届く距離に立っていたその男に、宗介は全く気づかなかった。
気力がないとはいえ、そこまで腑抜けていたつもりはなかったのに。
片目を眼帯で覆ったその男は、面白がるように宗介の目を覗きこんだ。
「ほう、いい動きだ。よく訓練されているな。だがどうにも気合がない。
若いの、自分が置かれている状況が理解できているか?」
宗介は再び愕然とした。
しっかりと男をポイントしていたはずの銃は、瞬きの間に男の手の中へと移動していたからだ。
何をされたか、はわかる。
男は無造作に銃を掴んだ。宗介は反射的に発砲しようと指に力を込めたが、その瞬間足を払われ転倒した。そして銃を奪われた。
宗介とて最精鋭たるSRTのウルズ7を務める身だ。生身での格闘戦も熟達している。
しかしこの隻眼の男は、そんな宗介を子供をあやすように翻弄してみせた。
「何だ、貴様は!?」
「何だとは何だ、自分のサーヴァントに向かって。それともまだ寝ぼけてるのか?」
男からの三度目の問い。この時になって宗介の意識はようやく明瞭になってきた。
この男が何者なのか。
宗介の置かれている状況とは何なのか。
そうだ――ここは香港ではない。
「紅い月……聖杯戦争……!」
ガウルンの仕掛けた爆弾から逃れようと窓から飛び出したあの瞬間、宗介は確かに見ていた。
未だ夜に遠い時刻でありながら、夜天に輝く紅き満月を。
――――ねえ、知ってる。紅い満月の話
――――その満月を見た、どうしても叶えたい願い事を持ってる人はさ
――――月に運ばれて、月が願いを叶えてくれるんだってさ。
そんな噂話を聞いたのはいつだったか。
平凡な日常に退屈していたクラスメイト達が語る、他愛もない都市伝説。
しかし今、現実に。宗介はその紅い満月を見て、この東京の地に立っている。
「願いが、叶う……?」
「そう、それが聖杯戦争の報酬だ」
呟いた言葉が現実になるように、隻眼の男――宗介のサーヴァントが肯定する。
ドクン、と心臓が早鐘を打つ。
くだらん、迷信だ、何の根拠もない、ただの集団妄想だ。平常な相良宗介であれば疑いなくそう判断しただろう。
しかし、今の宗介は。今の相良宗介には、縋るものが必要だった。
千鳥かなめの死を否定する、奇跡という可能性が。
可能性の実在を証明する鍵は今、この手にある。
刻まれた紋様。令呪。サーヴァントへの絶対命令権。
戦って、勝ち残れば、千鳥かなめは生存する。
揺れ動いていた宗介の瞳がピタリと定まった。
「……あんたは、俺のサーヴァントなのか」
「さっきからそう言ってる。なんだ、やる気が無いのか?」
「否定だ。何としても聖杯を獲得する。それが俺の任務だ」
「任務? いやそうじゃないだろう」
サーヴァントは葉巻を取り出し、煙を吹かす。
「若いの、ここでは誰もお前に命令などしやしない。だからこそ重要なのは、お前自身の意志(センス)だ。
見たところどこかの兵士なんだろうが、誰に命令された訳でもなく、誰かの道具としてではなく。
お前は、自分の意志で引き金を引くんだ。それが出来ない奴は戦場に立つべきじゃない」
「俺の……意志?」
「そうだ。俺はマスターに仕えるサーヴァントだが、道具の道具になる気はない。
お前はどうだ? 誰かの道具か、それとも自分の足で立って戦う戦士か。どっちだ?」
問われ――宗介は思考する。
どこか、長い付き合いのある信頼する上官と、似た雰囲気を持つこの男。
「俺もそう暇じゃない。これが最後だ、若いの。お前は戦士か?」
この男の前では、己を偽れない。
ありのままの自分を曝け出し、背中を預けたい。そう思わせる男だ。
ならば、宗介の答えは決まっている。
「肯定だ、少佐。俺は、俺の意志で戦う。
千鳥を護るためなら、俺はミスリルのSRTではなく、陣代高校2年4組のゴミ係でもなく、相良宗介として引き金を引く。
そのために、力を貸してくれ……少佐!」
肯定。
誰かの道具としてではなく、相良宗介自身の願いを叶えるために、自分だけの戦いを始める。
宗介は決意と共に背筋を伸ばす。
「……よし、いいだろう! いい目になったじゃないか、若いの。
いや……名前を教えてくれ、マスター。これから共に戦うんだからな」
「ハッ、相良宗介軍曹であります、少佐!」
染み付いた敬礼の動作。
何故だか、この男に敬礼するのに全く躊躇いはない。
「相良……宗介な。しかしソースケ、さっきからその少佐ってのは何だ?」
「ああ、いや。なんとなくあんたはそう呼ぶのがしっくり来るんだ」
「そうか? まあ真名を隠すためには有効かもしれんが……しかし、少佐かぁ。どうにも昔を思い出すな」
「不快なら別の呼称を考慮するが」
「いや、構わんよ。その呼び方ではどうあっても俺には繋がらんしな、不都合はない。俺もお前を軍曹と呼ばせてもらおう」
「了解だ、少佐」
にやりと笑い、サーヴァントが敬礼を返す。
肩を並べて歩き出す。
それが何とも頼もしい。本当に、少佐と――アンドレイ・カリーニン少佐が隣にいるようだ。
が、決して少佐ではない。
「では行くか、潜友よ! たまにはコンビでの潜入ミッションも悪くない」
「肯定だ……と、そういえばあんたの本当の名前は何というんだ?」
「俺か? そう言えばまだ名乗っていなかったな。俺の名はな……」
サーヴァントがバンダナを締め直す。
ゆっくりと振り向いたその横顔は不敵に笑っている。
「アサシンのサーヴァント。裸の蛇――ネイキッド・スネークだ」
紅い月が輝くその日。
九龍を殺し、蛇と出会った。
【マスター】
相良宗介@フルメタル・パニック
【マスターの願い】
千鳥かなめを生き返らせる
【weapon】
コンバットナイフ、拳銃(グロック19)+予備弾倉
【能力・技能】
高度に訓練された軍人。格闘、狙撃、爆破、AS操縦と、あらゆる破壊工作に通じる。
【人物背景】
都立陣代大高校2年4組に在籍する高校生兼、対テロ極秘傭兵組織「ミスリル」作戦部西太平洋戦隊に所属する傭兵。
全世界から優れた人材を登用するミスリルの中でも最精鋭とされる特別対応班(SRT)の一員。コールサインはウルズ7。
人型兵器アーム・スレイブの操縦にかけては世界屈指の実力を誇り、生身での戦闘力も高い。
オーバーテクノロジーを記憶する特殊な人種「ウィスパード」とされる少女・千鳥かなめを護衛する任務を受け、陣代高校へと転校・潜入する。
幼少の頃から戦場で育ったため、平和な日本の一般常識に馴染めず、たびたび破壊行動を実行し周囲に大損害を振りまいている。
【クラス】
アサシン
【真名】
ネイキッド・スネーク@メタルギアソリッド3 スネークイーター
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力D 幸運A+ 宝具C+
【属性】
中立・善
【クラススキル】
気配遮断:A++
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となる。
通常このスキルは攻撃態勢に移るとランクが大きく下がるが、宝具と組み合わせた初撃に限り、完全な隠密攻撃が可能となる。
【保有スキル】
CQC:A
スネークが師と共に開発し、生涯を掛けて鍛え上げた技。格闘のみならずナイフや拳銃、壁や地面など様々なオブジェクトを利用した極近距離での戦闘技術体系。
接近戦を行う際、一時的に敏捷・幸運の値が1ランク上昇する。
サバイバル:C
物資のない状況であっても、周囲の環境から生存に必要な要素を見つけ出す。山・林などの自然環境の中にいると魔力が急速に回復する。
【宝具】
『現地調達(スネーク・ハンド)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
無手で潜入して武器装備を現地で入手する手腕。
手にした武器にEランク相当の神秘を付加し、宝具として扱える。
この宝具自体に攻撃能力は皆無であるため、魔力消費も極小である。常時発動型の宝具。
『潜入工作員の友(ダンボール・ボックス)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
スネークが段ボール箱をかぶっている時、あらゆる他者は目の前にダンボール箱が近づいてきてもそれを当然のことと認識し、不審に思わなくなる。
使用中は気配遮断スキルがEXランクにまで上昇し、初撃のみ完全な隠密先制攻撃が可能となる。
マスター・サーヴァントを問わず生物はこの認識操作から逃れられないが、実体を消す訳ではないので監視カメラなどには効果が無い。
使用後に存在が露見した際は、敵を振り切って安全を確保するまで再使用は不可能となる。
『愛国者(パトリオット)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:10人
スネークが師であるザ・ボスから受け継いだ、弾倉が∞の形をした短機関銃。
装填数は無限であり、弾切れはない。しかし消音はできないため、この銃を使う時は気配遮断スキルが一時封印される。
この銃を使用していた人物は世界でザ・ボスとスネークの二人だけに限られるため、使用すればほぼ確実に真名が察知されてしまう。
宝具としても最低限の神秘しか備えていないため有効な宝具とは言い難いが、スネークにとっては何よりも頼りにする相棒であり、師への誓いの証でもある。
【weapon】
コンバットナイフ…激しい格闘戦の最中でも破損しないよう、耐久性が重視されている。
45口径ハンドガン…入念にカスタムされたハンドメイドモデル。
【人物背景】
大戦の英雄ザ・ボスよりボスの称号「ビッグ・ボス」を受け継いだ伝説の傭兵。
単身でソ連領に侵入、師であり戦友であり親であったザ・ボスを自らの手で抹殺。
その後も世界各地で様々な紛争に姿を表し、ビッグ・ボスの名を全世界に轟かせていく。
やがて米軍特殊部隊FOXHOUNDの司令官として活動する一方、武装要塞国家アウターヘブンを創設、その指導者となる。
自らの遺伝子から生み出されたクローンであるソリッド・スネークと対決、彼の手にかかって死亡する。
なお、このスネークの肉体は全盛期のネイキッド・スネークのそれである。
【サーヴァントの願い】
相良宗介のサーヴァントとして「忠を尽くす」。
最終更新:2014年12月29日 14:09