コロマル&アサシン ◆devil5UFgA
「……うるさい」
新月の夜の事だった。
岳羽ゆかりが自室で勉学に励もうとしていた時だ。
静かな夜、の、はずだった。
突如、階下から激しい怒声――――いや、怒『音』が響いた。
鳴き声だ。
犬の鳴き声が、ゆかりの自室まで響いている。
この建物内に犬は一匹しか居ない。
しかし、聡明な犬だ。
余程のことがなければ、慌てふためきはしない。
「……うるさい!」
だから、ゆかりも最初は何か事件が起こったのかと思った。
駆け出すように外へと出て、コロマルへと駆け寄った。
コロマルは、空へと向かって遠吠えをあげていた。
皆が空を見上げ、その宇宙が何の変哲もない新月の空であることを確認し、首を傾げた。
動物の言語を解することが出来るアンドロイド、アイギスに翻訳させれれば『紅い月』が見えるというのだ。
当然、誰一人として新月の空に紅い月を見ることはなかった。
誰もが怪訝な顔をしながら、しかし、遠吠えを続けるコロマルを尻目に自室へと戻った。
それから、一時間、未だにコロマルは遠吠えを続けていた。
「……あー、もう!」
ゆかりはついに堪忍袋の緒が切れ、先程よりも乱暴に廊下と階段を叩きつけながら駆け下りた。
そして、コロマルへと怒声をぶつけた。
「コロマル!アンタちょっと――――」
そこで、言葉が途絶えた。
正確に言えば、怒声をぶつける相手を見失っていた。
「……コロマル?」
そこから、ゆかりの仲間であるコロマルは姿を消していた。
ゆかりは首を傾げた。
コロマルは賢い犬だ、ひょっとすると、ある一部では自身よりも。
そのコロマルの異常行動は、不気味以外の何者でもなかった。
ゆかりは空を見上げた。
月は出ていなかった。
◆ ◆ ◆
諸君らはニンジャをご存知であろうか。
そう、平安時代をカラテによって支配した、もはや神話存在へと化した超常の者たちである。
諸君らにとってニンジャとは、もはやお伽噺のような存在なのかもしれない。
しかし、ニンジャは実在する。
古事記に記されている通り、言葉にするのもおぞましい手段を持って人間を支配した半神存在は、実在するのだ。
『ドーモ。お困りのようだな、マスター』
突如、真昼の都会に放り出され、呆けていたコロマルへと語りかけた声もまた、ニンジャだ。
コロマルはその声の主が同種であることに気づいた。
なにせ、人間の言葉ではない。
意味こそ同じだが、それは決定的に違う音だ。
コロマルは、周囲を見渡した。
老若男女、様々な人間が歩いている。
ここは大通り、人間が居るのは自然だ。
しかし、同種――――シバ犬の存在は見当たらない。
『マスターの名は?』
「クゥーン……」
『コロマル、虎狼丸――――トラとオオカミの強さと気高さを持つものか……良き名だ』
コロマルの、通常の柴犬とは比べ物にならない知能。
その知性すらも大きく上回る、圧倒的な知性。
しかし、同時にその声はコロマルの心を揺さぶった。
恐怖で、だ。
コロマルは喉を鳴らす。
姿の見えぬ、威圧者への警戒だけが募る。
「グゥゥゥ……!」
『道理だ、すぐに姿を見せよう』
それは向かいの交差点に、突如として現れた。
コロマルと目が合う。
コロマルは震えた、恐怖に震えた。
『ドーモ、アサシンです』
原初の恐怖だった。
突如現れた狼犬とも呼ぶべき巨大な犬は、しかし、コロマルと同じシバ犬であった。
コロマルとの大きな違いはその巨躯と、身体中についた無数の傷痕だ。
その全てがコロマルの恐怖を誘った!
それはコロマルが体験のしたことのない、犬種に刻み込まれた支配者の恐怖だった!
「アオォォォォォン!!!?!??」
ストライダーは空気振動を起こし、同種の犬とニンジャ聴覚の持ち主にのみ聴きとる事のできる言語を操っている。
一方でコロマルは、当然、ニンジャアニマルではない。
残念ながら、コロマルの鳴き声を翻訳することは叶わない。
我々に動物の言葉を解する能力はないのだ!
「アオーン!?ゥグゥ……アオーン!」
突如として行動が乱れたコロマル。
聡明な読者諸氏には想像がつくだろう。
そうだ、NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)症候群だ。
ニンジャは人間だけでなく動物をも支配していた、古事記にもそう書かれている。
コロマルの中のニンジャに対する恐怖が心中を暴れまわっているのだ!
『落ち着け、コロマル=サン』
「アオオオーーーン!」
遠吠えを続けるコロマル。
これがNRS症候群であることは、聡明なアサシンも理解できた。
故に、ただ静かに待った。
コロマルの雄叫びは続き、続き、続き――――やがて、収まった。
荒く息を吐くコロマルへと、アサシンは静かに言葉を続けた。
『私はアサシン、真名はストライダー。マスターも承知の通り――――』
アサシンのサーヴァント、ストライダーは小さく言葉を切った。
コロマルは喉を鳴らし、アサシンの言葉を待った。
『ニンジャだ』
「アゥオォォォォオーーーン!!!?」
『落ち着け、コロマル=サン』
「アゥオ、オオオォォォォォォォオーーーン!!!?」
『私は敵ではない、コロマル=サン、わかるか、コロマル=サン!』
再びのNRS症候群!
ストライダーもまたこれは想定外だった。
コロマルの鋭い瞳から、ニンジャに抗えるドッグであると見抜いたからこその吐露であるというのに……
「アオ、グゥ……ゥ……」
そんな中で、コロマルは小さく、何かを零すように息を整える。
コロマルの内側から、仮面の力が漏れだす。
ペルソナ――――己の中の己を、普遍的無意識、あるいはコトダマ空間に沈んだ己を、神や悪魔の姿で顕現させる御業。
コロマルはそんな技を身につけていた。
だからこその、異常なまでのニンジャソウルへの忌避があった。
『そうだ、コロマル=サン。コロマル=サンは詳しい、知能指数も実際高い。だからこそ落ち着け』
ストライダーは何処からか手に入れてきたらしきズバリドリンクをコロマルへと渡す。
コロマルは息を整えながら、浴びるようにズバリドリンクを口にした。
「アー……クゥーン……」
『聖杯戦争については理解しているな、コロマル=サン』
さながらズバリ中毒者のように、コロマルは息を吐く。
ストライダーはコロマルへと語りかける。
コロマルは頷くが、顔をしかめた。
我々にはわからないが、少なくとも、ストライダーはコロマルの顔の変化を見ぬいた。
『願いはあるか?』
「……」
『なければ、良い。帰巣本能が揺さぶられているのならば、帰巣しよう』
「クゥーン……」
『私はニンジャアニマル、超常の犬。この力を持って、マスターの願いに尽力する。
帰ろう、『家』へと』
家。
その言葉に、コロマルは揺れた。
仲間が待っている。
家族と呼べるかはわからないが、大事な仲間だ。
「オンッ!」
短く吠えた。
ストライダーは、笑った。
【クラス】
アサシン
【真名】
ストライダー(タロウイチ)@ニンジャスレイヤー
【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力E 幸運C 宝具-
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
気配遮断:B-
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【保有スキル】
縮地:B
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。
単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
つまりは、カラテだ。
気配察知:B+
周囲の気配を察知する超感覚、同ランクまでの気配遮断を無効化する。
犬のニンジャアニマルであるストライダーは高い気配察知スキルを所持している。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
一度は敗北した状態から復讐を成し遂げたストライダーは仕切り直しのスキルを持つ。
【宝具】
『猿神退治(ストライダー)』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
ストライダーに憑依したニンジャアニマルのソウルであり、厳密には宝具ではない。
憑依したニンジャアニマルとしての意識はすでに消滅している。
ストライダーはこの宝具によって超犬的な身体能力を所持している。
また、世界各地に残る『猿神退治』の逸話によって、邪悪なモンキーのニンジャに対して強いアドバンテージを得る。
【weapon】
己の牙と爪を武器にして戦う。
また、ニンジャソウルの昂ぶりによって、マフラーめいた襤褸布を生成する。
【人物背景】
ニンジャに飼い主を殺されたシバ犬、タロウイチ。
彼自身も死の淵にあったその時、謎のニンジャソウルが憑依。
一命を取り留めたタロウイチは『ストライダー』、動物であるニンジャのニンジャアニマルとなり。
復讐の戦いに身を投じる。
近未来都市『ネオサイタマ』を舞台に、ストライダーvsニンジャの死闘が始まった。
【マスター】
コロマル@Persona3
【マスターとしての願い】
なし、高い察知能力と知性を持つがために紅い月を発見してしまい、半ば強引に参加させられた。
【weapon】
首輪が『ペルソナ』と呼ばれる実体を持つ超能力を発動させるためのキーとなっている。
また、苦無を口に加え、相手を切り刻む。
【能力・技能】
召喚器である首輪によって普遍的無意識、あるいはコトダマ空間に眠る己、『ケルベロス』を呼び寄せる。
ケルベロスは炎や呪いの呪文を唱えることが出来る。
【犬物背景】
長鳴神社の神主の愛犬、柴犬のアルビノ。
アルビノであるため、生後間もない頃は体が弱かったらしい。
漢字表記では「虎狼丸」という、ものすごく強暴そうな字が当てられている。
というのも、虎狼丸という名前は飼い主である神主の「せめて名前だけは強くあってほしい」という思いからつけられたものだとか。
義理堅く男らしい性格、忠犬を絵に描いたようなキャラクター。
一時期の自分と似た境遇のノラ犬に対して自分のエサを持ってくるといった、他の犬に対しても面倒見のいい一面も。
【方針】
帰宅する。
最終更新:2014年12月29日 14:21