神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw
――駿河先輩は知っていますか? 赤い月の噂話を。
これは僕もつい先日、友達から聞いた話なんですけどね。
え? 友達がいたなんて初耳だって?
いやだなぁ。いくら僕にだって、友達くらい1人や2人はいますよ。2人と言わずたくさんいます。
例の悪魔様の話だって、その友達経由で知ったくらいですから。
友達の友達の話です。友達の友達は皆友達で、世界は友達の輪で広がってるんですよ。
ああ、でもその話を最初に言い出した人は、好きな女性タレントに会いたいがために、ツテを辿っていったのがきっかけだったんですって。
随分と私欲まみれの輪もあったもんですね。知らなきゃ美談で済んだのに。
それで何の話でしたっけ。
ああそうだ、願い事の話だ。よかった、なんとか最初の話と繋がりましたよ。
ともかく友達から聞いたところによると、近頃新月のはずの夜に、赤い満月が浮かび上がるって、そういう現象があるんですって。
月イチの現象が近頃っていうのも、また杜撰で笑える話ではありますけど。
でもってその赤い月なんですけど、それを見た人は月の都へ連れていかれて、願いを叶えてもらえるんだそうですよ。
なんともまぁ最初から最後まで、突拍子もない話ですよね。
かぐや姫じゃあるまいし、そもそもその話の結末にしたって、悲しい別れ話だっていうのに。
でもアレですよね。願いを叶えてもらえるっていうのは、偶然にしては面白い一致ですよね。
え? ほら、アレですよ。悪魔様の話ですよ。
アレも悪魔様にお願いすると、願いが叶うっていう話だったじゃないですか。
違いました? 悩みを解決してくれるって話? ああそういえばそうだった気もしますね。
紛らわしいけど願いと悩みだったら、厳密には全く別物の話だからなー。そうなると関係ないのかなー。
まぁ僕はこんな与太話、全然信じちゃいませんから、別にどうってことはないんですけどね。
だって無理ありすぎるでしょう? 徹頭徹尾むちゃくちゃだらけでしょう?
そんなものを信じるくらいだったら、まだ悪魔様の方が信憑性はありますよ。
まぁでもアレもアレで、もう出なくなったって言ってましたっけ。
だったらいいや。話はそれでおしまいです。
もし今後クラスのお友達に、赤い月の話題を振られたとしても、本気で信じちゃダメですよ。
あんなもの信じ込んだらバカを見ます。鼻で笑っちゃえばいいんです。
聡明な駿河先輩だったら、こんな幼稚極まりない都市伝説に、振り回されることなんてないって、僕は信じてますからね。
◆
なんてわざとらしく言うもんだから、こんなことになったんじゃないのか?
それが赤い月に魅入られ、気付いたら見知らぬ街へと飛ばされた、私――神原駿河の感想だった。
◆
真っ当な形で願い事を叶えてもらうには、どうにも複雑な試練をクリアしなければならないものらしい。
有名なドラゴンボールだって、集めるべき個数は7つもある。
そう考えると今回の話も、なるほどそれくらいのプロセスは必要だろうなと、納得ができる部分があった。
あくまでも部分があった程度だが。
その他概ねに関しては、そういった論理的な意味よりも、感情的な意味合いで、受け入れられないと思った。
・今私がいるこの街は、アーサー王伝説の聖杯の力で、赤い月の中に用意された空間である。
・聖杯は伝承に謳われている通り、手にした者に奇跡をもたらし、願い事を叶えることができる。
・しかし聖杯を手にできる者は1人だけで、そのためには他に欲しがっている人間を、皆殺しにして勝ち残らなければならない。
・戦いを進めるための手段として、聖杯はその候補者に対して、サーヴァントと呼ばれる使い魔を貸し与える。
・サーヴァントとは人類史上に名を残す英霊のコピーであり、その力をもって殺し合う儀式を、聖杯戦争と呼称する。
・サーヴァントには大まかに分かれて7つのクラスが存在し、自分のそれと戦闘スタイルが異なるサーヴァントが、最低6種類はいると考えていい。
要約するとこんな感じだ。
今しがたこんなろくでもない説明を、槍騎士(ランサー)なるサーヴァントから受けたというのが、私のここまでのハイライトだった。
「ここまでは理解したな?」
そう問いかけてきた少年が、私に割り当てられた英霊だそうだ。
身長は結構あるようだし、顔立ちもなかなかのイケメンだが、表情には若さが残っている。どう贔屓目に見積もっても、私と同い年くらいにしか見えない。
この歳で亡くなった短命の英霊だったのだろうか? はたまた英霊として語り継がれた、全盛期の姿で蘇ったのだろうか?
できれば後者であってほしい。その方が何となく強そうだ。
余談として先日購入した、シオン攻め童虎受けの薄い本は、なかなかに良いものであったと付け足しておく。
「理屈としてはな。もう少し人道的な
ルールにできなかったものかと、納得できずにいる部分はあるが」
私はランサーの確認にそう答えた。
聖杯戦争。
争い合い。
すなわち殺し合いということだ。
聖杯とやらが定めたルール下では、確実に誰かが命を落とす。
願いを叶えてもらうためには、他人の願いを踏みにじり、命を奪わなければならない。
私のように偶然巻き込まれた人間が、それは申し訳ないことをしたと、一抜けさせてもらえるようなルールもない。
であれば他の参加者に殺されないよう、迎え撃つ必要性が出てくる。
そうなれば結局生まれるのは死体だ。誰も彼もがルールに従い、殺人者になることを強要されるのだ。
「不服なようだな」
「もうたくさんなんだよ。願いという誘惑に踊らされて、人が不幸になるのを見るのは」
犠牲を伴う願いと聞くと、どうしても思い出すことがある。
今はただ包帯を巻いているだけの、何もない綺麗な左腕を、右手で強く掴んでしまう。
猿の手。
もといレイニーデヴィル。
願いという単語と神原駿河を、関連付けて語る上で、決して欠かすことのできない言葉。
かつて私が願いをかけて、今は奪い取られてしまった、私の弱さと卑しさの具現。
多くの人間を不幸にし、今も不幸を振りまくかもしれない、逃れようのない忌むべき怪異だ。
私が赤い月の噂を気にし、新月の夜空を見上げていたのも、その怪異が要因ではあった。
「かつて私は願いのために、取り返しのつかないことをしてしまった」
足が速くなりたいというだけで、大勢の学友を傷つけてしまった。
拒絶したのは自分だと言うのに、先輩を取られたことに理不尽に怒り、人を殺しかけてしまった。
今もその力に振り回されそうな人間を前に、どうすることもできないまま、無様に立ち尽くしている。
「だから嫌なんだ、こういうのは」
この上願いという言葉につられ、他人を不幸に貶めるのは、どうしても我慢ならなかった。
法規的な意味もある。人道的な意味もある。
何よりそれ以上に、この心が、その重荷に耐えられないと思う。
我ながら自分勝手な正義感だ。駄々をこねる子供のようで、言っている自分が情けなかった。
「つまり、お前に戦う意志はないと?」
「もちろん、黙って殺されるつもりはない。私だって死にたくはないんだ」
ランサーの言外の意図を読み取って、私はそう返した。
別に他人を殺したくないからって、自分が殺されていい道理はない。
沼地蠟花の問題を、未だ解決せず放り出してしまっているのは、間違いのない事実なんだ。
だから、こんなところでは死ねない。自分の命を投げ出すような、そんな真似は絶対にしない。
「できることなら、聖杯とやらの目的が何なのか……何故こんなことをさせているのか。
それを知るために戦いたいし、止めるために戦いたい。それが私の動機だ」
だからこそ、探すべきは第三の道だ。
聖杯の意志に待ったをかけて、この戦争を中止させる道だ。
敬愛する阿良々木先輩なら、きっとこういう道を選ぶだろう。
それがどれほど困難であっても、最良の結末であるというのなら、迷わず突き進むのだろう。
同じようにできるのか――そう問われると、不安ではある。
揺れ動いている私ごときに、その茨の道を踏破できるのかと、どうしても迷いがつきまとう。
それでも、それ以外の道など選べなかった。ならば行くしかないと思ったのだ。
「そうか」
意外にも、ランサーの返事はそんなものだった。
願いがないのかと問うた割には、願いをかけないという選択に対し、それほど不快感を示していないようだった。
無表情な顔を見るに、無論、歓迎もしていないのだろうが。
「だったら1つだけ言っておく。戦いの勝敗を分けるのは、戦うという意志があるかないかだ。
マスターのその想いが半端なものなら、本気で挑んでくる人間には、容易く呑まれて食い殺される……
死にたくないというのなら、それだけは覚えておくといい」
そう言うとその言葉を最後に、ランサーは私の目の前から姿を消した。
霊体化、というやつらしい。英霊とは要するに幽霊だ。生身の肉体を持たないのだから、姿を見えないようにもできるのだそうだ。
「戦う意志、か」
それが一番の不安要素かもしれない。
何物にも代えがたい願いを武器に、本気で挑んでくる人間相手に、私は立ち向かうことができるのだろうか。
包帯をきつく握り締め、私はそう考えていた。
◆
(なんてザマだ)
相羽シンヤは自嘲する。
かつてテッカマンエビルを名乗り、今はランサーと呼ばれる僕は、己が境遇をあざ笑う。
望んで手に入れた力じゃなかった。しかし強者という座から、一度引きずり下ろされた自分の、なんと脆弱で滑稽なことか。
あの神原駿河という少女は、マスターとしては完璧にハズレだ。
魔術師適性を持たない彼女に、アテにできるほどの魔力はない。
その上願い事もなく、自分の戦う動機にさえも、大して自信を持てずにいる。
モチベーションも能力も、全てが落第なマスターだ。
当然その下で戦う僕にも、かつてラダムがそうしたように、誇れるほどの力などはないんだろう。
(なのに何でだろうな)
それでも。
だとしても、不思議と悪くないと思える自分がいる。
神原駿河という在り方に対して、シンパシーを感じている自分がいる。
戦うことを覚えた動機は、兄を慕い憧れたからだ。
たとえ醜いコンプレックスでも、兄より強くなりたいと思い、兄に並びたいと願ったからだ。
その願いをラダムにねじ曲げられ、僕はタカヤ兄さんに対して、取り返しの付かない罪を犯してしまった。
ライバル意識は憎悪へと変わり、何度となく兄の憎しみを煽り、凄惨な殺し合いを演じてきた。
あんな思いをしたくない――その気持ちは彼女と変わらない。
だからあんな弱い娘に対して、共感しているのかもしれない。
(どの道、僕にも大した願いはないんだ)
現世に未練などはない。
この世に残してきた兄は、ラダムの軍団を打倒し、傷ついた後も立ち直った。
だから僕は現状に対して、満足してしまっている。神原がそう言ったように、僕にも聖杯にかけるべき願いがない。
だとしたら、そんなに身構えることもないかもしれない。
ああ言っておいてこう考えるのも何だが、あの危なっかしいマスターの面倒を見てやるくらいの、その程度の意識でいいのかもしれない。
とにかく今のところはそれでよしとして、これからのことはまた後で考えよう。
僕は不安げな顔をしたマスターを、そんな風に考えながら見下ろしていた。
【マスター】神原駿河
【出典】花物語
【性別】女性
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を止めたい
【能力・技能】
運動神経
女子バスケットボールの世界では有名人。
分身や2段ジャンプが得意と申告しており、実際それくらいのことはできそうなだけの運動能力を誇る。
【weapon】
なし
【人物背景】
かつて猿に願った少女。直江津高校の3年生である。
幼少期にレイニーデヴィルと呼ばれる悪魔の遺体に、願い事をしたことによって、周囲に災いを振りまいた過去を持つ。
レズでBL好きな腐女子で受けでロリコンでマゾヒストで露出狂で欲求不満。
……と、絵に描いたような変態性癖の持ち主だが、常日頃からオープンスケベというわけではなく、
相手がそうした会話にどの程度対応できるかを考えた上で、接し方を変えるタイプ(阿良々木暦に対してのそれは、極端にオープンな状態)。
本質的には人当たりの良い人物であり、後輩からの信頼は厚い。
基本バカだが勤勉で責任感が強く、何かと自分に厳しい人間である。
目上の人間に対してはやたらと褒めちぎる傾向があるが、度が過ぎて時々嫌味に聞こえてしまうことも。
沼地蠟花に悪魔の左手を奪われたため、現在は超常的な能力を一切持っていない(一応、左手を隠していた包帯は、継続して巻いている模様)。
あくまでも人より危ない性癖を持っていて、人より運動ができるだけの、普通の女子高生である。
【方針】
積極的に優勝を取りに行こうとは思わない。とにかく聖杯戦争を中断させる手段を探りたい。
聖杯を悪用しようとする者がいたら、止めたいと思う。
【クラス】ランサー
【真名】相羽シンヤ
【出典】宇宙の騎士テッカマンブレード
【性別】男性
【属性】混沌・中立
【パラメーター】
筋力:E+ 耐久:E 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:E(B→A)
魔術に対する守り。 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
宝具『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』解放時にはBランクとなり、魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
更に宝具『決壊(ブラスターエビル)』解放時にはAランクとなり、事実上現代魔術により傷をつけられることがなくなる。
【保有スキル】
怪力:(-)B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
宝具『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』解放時にのみ機能するスキル。
自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
【宝具】
『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:C 幸運:D
宇宙生命体ラダムの科学の結晶・テッカマン。
異星を侵略するための牙であり、同時に脆弱な本体を守るための殻でもある。
通常時はテッククリスタルと呼ばれる、赤い水晶体の形をしている。
宝具解放時にはシンヤの身体を変異させ、黒と赤に染まった禍々しい鎧のごとき姿となる。
エビルは多目的汎用型のテッカマンであり、あらゆる戦況に対応できるパラメータを有している。
武器は超硬質の槍・テックランサーと、投擲したそれを回収するためのテックワイヤー。
両肩パーツは取り外して、ラムショルダーという名称の斬撃武器として用いることも可能。
必殺技のPSY(サイ)ボルテッカは、変身時に発生した反物質を開放し、敵目掛けて発射する砲撃技。
相手の魔力放出攻撃にぶつけた際、ボルテッカの出力が相手より勝っていれば、
対象の攻撃エネルギーをそのまま吸収し、ボルテッカに取り込んで跳ね返すことができる。
また、変身時に展開されるエネルギーフィールドを利用し、高速形態に変形して突撃する、
クラッシュイントルードと呼ばれる攻撃を行うことも可能。
既にラダムの洗脳下にないシンヤだが、変身制限時間はない。
『決壊(ブラスターエビル)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
予期せぬ状況に適応するため、テッカマンが進化した姿。
外敵を排除することのみを盲目に求めた、性急かつ歪な進化の産物であり、いずれ滅びへ行き着く袋小路である。
宝具『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』の強化形態であり、
この宝具を解放したエビルは、幸運以外のパラメータが2段階上昇する。
テックランサーの先端からは、通常時のボルテッカに匹敵する反物質砲を放つことができ、
ボルテッカは正面方向のみならず、全方位に向けて発射することができるようになる。
ただし要求される魔力量は極めて大きく、同時にシンヤ自身の肉体もまた、急激に崩壊していく諸刃の剣である。
生前のシンヤはたった一度の戦闘で限界を迎えており、文字通り一発限りの最後の手段であると言える。
【weapon】
なし
【人物背景】
かつて宇宙生命体ラダムに取り憑かれ、テッカマンエビルへと改造された少年。享年18歳。
天才肌の双子の兄・タカヤのことを敬愛しつつも、
強い劣等感とライバル意識を抱いており、徹底した努力でその差を埋めようとしていた完璧主義者だった。
ラダムに取り憑かれた際には、その屈折した感情が増幅されたことにより、
タカヤの変身するテッカマンブレードに対して、狂気じみた執着心を抱いていた。
最終的にはタカヤがブラスター化によって自滅する前に決着をつけようと、
自らもブラスター化して真っ向勝負を挑むという、あまりにも不毛な道を選択。
愚かながらも、意地と信念を曲げることなく突き進んだシンヤは、勝利の目前までタカヤを追い詰める戦いぶりを見せた。
その後肉体が限界を迎え、一瞬の隙を見せたことにより敗北したものの、
最期の瞬間にラダムの洗脳から逃れたシンヤは、ようやく本心からタカヤと向き合い、眠りについた。
死後の現在においては、当然ラダムの洗脳による影響はなく、本来の相羽シンヤの人格を取り戻している。
【サーヴァントとしての願い】
特になし
最終更新:2015年01月04日 20:37