【海あり山ありエアコンなし-南インド・ケララの旅】
第4話)数学の国での戦い=1ルピーの攻防
《南インド ケララ
旅行記|トリヴァンドラム|アレッピー|クミリー・テッカディ|コーチン》
インドを旅して他の国とは違うな、と感心したことが一つある。
露店の親父でも食堂のボーイでも、皆算数がキチンとできるということである。
例えば43ルビーの商品を買おうとして50ルピー札を出すと
「あと3ルピーないか?」
と言われてしまう。無論10ルピー札でお釣りを渡すためだが、実は日本以外でこのようにとっさに返しやすい金額のお釣りを計算してくる国というのは少い。欧米などでは「お前、引き算できるのかい?」と思わず疑ってしまう人がフツーに商売しているので驚くのだが、さすが0を発見した数学の国インド。二桁の掛け算九九まで教えるくらいだから、単純な引き算など庶民でも朝飯前なのだ。
そんなすぐれた数学力を活かして、やつらは「ちょこっとくすねてやろう」と旅行者を虎視眈々と狙っている。
「アレッピーまでバス代260ルピーだよ」
と言われ、後で切符を見たら259ルピーと印字されていた。ま、車掌に1ルピー(約¥1.9)くすねられたということだが、こんなのかわいい方だ。
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「入場料とカメラ持込み料の合計で225ルピーです」
博物館の職員にそう言われ、1000ルピー札1枚を手渡すと、コインと小額のお札を不自然に取り混ぜてお釣りを返してきた。怪しいと思ってその場で確認すると15ルピーほど足りない。
「お釣り、足りないゾ!」
と抗議すると「Sorry」と言いながら、博物館職員は15ルピーを返してきた。
本当のことを言うと、実際のお釣りは16ルピー足りなかった。だが流石に「もう1ルピー足りないよ」と抗議する気力もなく、結局1ルピーはその博物館職員の小遣いとなってしまった。
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1ルピーでも儲けを追求するインド人の商魂はまだまだ続く。
インドと言えば紅茶の国。至るところにチャイ屋があるのだが、まだ値段の相場が分からないときのことである。
一杯のチャイをすすり終えて、
「How much?」
とチャイ代を尋ねながら10ルピー札を差し出すと、店主は前の客が置いていった代金の中からお釣りとして1ルピー硬貨2枚を僕に渡した。つまりはチャイ一杯8ルピーということになる。
だが、ちょっと待て!!
前の客が置いた金は5ルピー硬貨1枚と1ルピー硬貨2枚。つまり本当のチャイ代は7ルピーではないか!! しまった、一瞬のスキを衝かれてまんまと1ルピーをぼられてしまった。
1ルピーに対するインド商人の執念は尽きることがない。
最終更新:2016年08月24日 10:58