【太陽がいっぱい過ぎ-夏のチュニジア】
第8話)シディ=ブ=サイードの小さな罠

《チュニジア旅行記|チュニス|カイルアン|トザール|タメルザ|スファックス|シディ=ブ=サイード》

チュニジアの色といえばブルー。それも、白壁の家を飾る鮮やかな窓の青が有名である。そのイメージそのままの街がシディ=ブ=サイードだ。

午前中カルタージュ遺跡をふら付き、昼過ぎ僕は、ここシディ=ブ=サイードの駅前に降り立った。するとどうだろう。駅前広場には、欧米のツアー客がぞろぞろと観光バスから吐き出され、ツアーコンダクターの旗の後ろに列を成している。

チュニス近郊で気軽に訪れることができるせいか、シーズンオフとされている夏ですら観光客が途絶えることがない。

シディ=ブ=サイード
観光客を魅了するシディ=ブ=サイード

ここは海辺の丘に広がる別荘地みたいなところで、それゆえ下町の喧騒やごちゃごちゃした雰囲気とも無縁だ。実に静謐かつ、白と青のコントラストの街並みは至る所が憎いほど絵になる。観光客を引き付けて止まないのも道理だ。

猛暑であるのも忘れて散策していると流石に疲れがピークに達した。あ、海辺を見渡せるカフェがあるぞ。おや、長椅子には絨毯が引いてある。僕は少しリッチに松の実入りのミントティーを頼むと、いつしか大胆にも長椅子の上の絨毯に横になって眠ってしまった。

しばし勝手にカフェでシエスタを楽しんだのち、勘定を払う。場所柄多少高くつくだろうなと思っていると、「5ディナール(375円)」と言ってきた! 冗談ではない。いくらツーリスト価格とはいえ、5ディナールといえば、チュニジアでは街中のちょっとしたレストランで定食が食べられる値段ではないか。

 「高すぎる!」

と、文句を言ったらしぶしぶ1ディナール返してきた。この国を旅して約1週間。始めに値段を聞いておかないと吹っかけられるのは、常識として身についてきたはずだったのに、ちょっと気を抜くとすぐまた吹っかけられてしまう。やれやれ。

シディ=ブ=サイード
オーシャン・ビューなカフェでボられる

再び街を散策する。或るお金持ちの私邸を改装した博物館にも寄ってみた。イスラム建築はその外見以上に中庭が素晴しい。また、この私邸内の昔の暮らしを再現した展示も面白い。

ここの中庭では係りの女性がミントティーを振舞ってくれた。なんかサービスいいぞ。この博物館。

 「日本からいらしたのね。」
 「ええ、まあ」

 「ここでゆっくりしたら、どうぞ屋上に上がって景色を楽しんでください。」
 「見晴らしがよいのですね。」

拙い僕の仏語にも辛抱強く付き合ってくれる。おまけに「あなたフランス語上手ですね。」などと、お世辞と分かっていても耳に心地よいことを言ってくれる。

 「じゃ、パノラマを楽しんだら下のブティックに寄ってくださいね。」

で、出た!営業光線。しかもこの女性、相手をいい気分にさせるという営業の高等テクニックで攻めてきた。このまま何も買わないでは済まされないかもしれない。

無料の紅茶も、土産物購入の誘い水か?
無料の紅茶も、土産物購入の誘い水か?

僕は屋上でシディ=ブ=サイードの景色を楽しみつつ、機をうかがった。しばらくするとフランス人の団体客がワサワサと博物館に入ってきた。先ほどの女性は、団体客の対応に追われている。よし、チャンスは今だ。

僕はとっとと階段を降り、何食わぬ顔でブティックを素通りし、無事表にでることができた。

シディ=ブ=サイード。この街はその見た目の美しさとは裏腹に、観光客にお金を落とさせようと至る所に小さな罠が潜んでいる。ご注意あれ。

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そうこうするうち、チュニジアの夏休みは終わりを向かえた。毎日猛暑の中をほっつき歩いて少しバテたが、慣れてしまえばどうということはない。現地では至って元気だったのだが、体が暑さに順応してしまったせいだろうか。帰りの飛行機で風邪を引いてしまった。

ゴホッゴホッ、とやっていると、周りの連中から「鳥インフルだろう」と警戒されたことが、真夏のチュニジア旅行最大のデメリットだった。

=FIN=


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最終更新:2016年08月27日 10:05