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MEIDEAの改修4」を以下のとおり復元します。
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<p align="center"><img alt="" src="http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu?cmd=upload&amp;act=open&amp;pageid=443&amp;file=ras10.jpg" /></p>
<p> </p>
<p> </p>
<h3 align="center"><font color="#000080"><strong>巣立ちの空</strong></font></h3>
<p align="center"><font color="#666699"><font color="#993366" size="2">●妃烏に託くす想い</font></font></p>
<hr /><p><font size="1"> /*/<br /><br /><font color="#666699">理想としての存在だった燕姫を、<br />
リアルという観点で見直したら、色んな事が見えてきた。<br />
あの人と仲間と作った娘が 変わってしまうのは寂しいけれど<br />
だけどそれがリアル<br />
私たちは戦争と動乱のNWを生きているのを忘れてはいけない。</font><br /><br />
/*/<br /><br />
「なんか凄い事になってますね…。」<br />
技術研究所の一室で、レンジャー連邦に2人しかいないエンジニアの片割れへと差し入れのコーヒーを渡しながら、一人の大柄なフィクションノートの青年が呟いた。<br />
コーヒーを渡した相手、彼女…むつきが作業の為に借りた部屋は、研究者が寝泊まりする用に作られた簡素な作りのもので、朝日の入る窓際に置かれたデスクの他には、衣類を仕舞う小さなクローゼットだけである。<br />
そんな所で毎日作業をしていたものだから、徐々に増えていく資料と素材サンプルがデスクの上だけでは間に合わず、備え付けのベッドの上をも占領しているという状態に、彼は思わず顔をしかめた。<br />
「体に良くないですよ、ちゃんと寝て下さい。」<br />
「あー、ありがとう真さん。一応寝てる、というか気づいたら寝て…ゲフンゲフン」<br />
双樹の小言に、一つにまとめられた銀の髪を誤魔化す様にかきかき、えへーと彼女は笑う。<br />
良く見るとデスクに突っ伏していたのだろう額の辺りが赤く、それに気付いた青年は肩を落とした後、<br />
「寝落ちしてるだけじゃないですかー!」<br />
と拳を振り上げ声を上げた。<br />
「あはは、…でもまあ今日はちゃんと寝るよ、改修プランが出来上がったんだ」<br />
むつきはけろりと返事を返すと、ノートパソコンに繋がれたプリンターの出力用トレイに出された紙の束を取り、データを納めたCD-Rと共にファイルケースへと丁寧に入れた。<br />
「あ、じゃあベットの上片すの手伝いますよ」<br />
青年…いや改修に関して彼女の手伝いをする事が決まっていた双樹真は、そう言いながら働き過ぎの仲間の為に笑顔で腕をまくり、ダンボールで塞がったベットを開けようと体の向きを変える。<br />
「いやいや、向こうで宿でも取るし」<br />
「へ?」<br />
が、背後で彼女の立ち上がる気配とその言葉に固まり、ぎぎぎと首だけを彼女の方に向けた。<br />
昨日用意したのだろうか、小さな旅行カバンに、図面や必要なサンプルが詰まったケース、そしてプランの納められたファイルケースをカバンに突っ込んでいるのが見え、彼は口を開けたまま目を点にする。<br />
「え、あ、むつきさん!?」<br />
「ちょっと、無名騎士藩国と、宰相府に行ってくるね☆」<br />
前に…ちょっとそのへん散歩してきまーす、と言った時と同じ口調だった。<br />
「はい、っていやいやそんなに急がなくても、一休みしてから…。」<br />
双樹は普通の反応として、このところ働き詰めの彼女を心配して言うのだが、技術屋の彼女にはその常識は通じない。<br />
「GENZ王忙しい方だから会える時にお話聞いておきたいし、宰相府にはうちの人が良くしてもらった整備士長さん達がいるんだ。」<br />
「はい…」<br />
「今回、前の様な摂政と夫からのサポートが無いから、私が独自で動く事になるのね、」<br />
もちろん逐一藩王と摂政に報告しながらだけど、と繋げてむつきは微笑んだ。<br />
「私、エンジニアとして一人立ちしないと駄目なんだけど、まだまだ勉強が足りなくてね…。」<br />
「はい……」<br />
「だから、プランも見てもらいがてら勉強して来る。」<br />
しょぼしょぼとなる彼と対照的に、純粋に楽しそうなむつき。<br />
滅亡寸前からの自国の復興に追われながらも、鋼の王とその仲間達のメカへかける情熱と造詣の深さを彼女は尊敬していたし。航空機にかけて先端を行く宰相府で、その技術を学ぶ事は彼女に取ってとても良い機会になるからだ。<br />
これは以前なら出来なかった事であったが、現在整備士達の全国を上げた技術向上が行われ、国境の無い交流を推奨している事を幸いとばかりの行動であるが、非常に有益な事なので青年が止める理由も無く…<br />
「ええと、気を付けてくださいねー…」<br />
双樹はやっとそれだけなんとか言い、だったらせめて彼女の荷物を空港まで運ぼうと顔を上げ、資料を収めたカバンをむつきの手から取って、ため息つきつき先を歩き出したのだった。<br /><br />
/*/<br /><br /><font color="#666699">立ち上る火葬の煙を見たあの日、大切なものと引き換えに、<br />
ようやくNWの地に両の足が着いた気がした。<br />
私に足りなかったものってなんだろう?<br />
本当に守りたいものは何だったのだろう?<br />
私は独り考える。</font><br /><br />
/*/<br /><br />
「GENZ王、ラスターチカの改修で望む事ってありますか?」<br />
無名騎士藩国の王城、謁見の間らしき部屋に通されたむつきは、お土産の菓子折を渡して挨拶を済ませた後に、示されたテーブルの席に着くなり開口一番そう言った。<br />
下手な変化球は持っていないので、直球である。<br />
ターバンを巻いた下にある王の顔はたいそう疲れを滲ませてはいたが、彼女のその言葉に目を輝かせ身を乗り出した。<br />
「攻撃力ですね。対空の能力に問題はないので近~遠の何らかの攻撃力。」<br />
普段は共和国大統領の下、ARパズルやら試算などに頭を悩ませ、戦術に関る事を彼の友人達と共にやっているが、本来はメカを愛する技術屋の魂を持つ男であり、ありがたい事に燕姫を好いてくれている一人でもあった。<br />
「あとはエンジンのチューンとかですかねえ…エンジン強くなれば、その分をあらゆる性能向上にまわせるので、エンジンが最重要です。」<br />
「エンジンは大事ですからね、後はどうでしょう…」<br />
「他は…そうですね…」<br />
がりがりと次から次へと摂政が出して来る自国と共和国の仕事をやりながら、バージョンアップするラスターチカの事を楽しそうに話す彼の様子にむつきは微笑んだ。<br />
このお礼は自分がこの国の大学で航空機関連の技術自動を行う事でしっかり返そうと思いながら、ファイルケースから持ってきた図面とプラン、素材サンプルを幅広のテーブルに広げると、本格的に話し込む事にする。<br />
そうして足りない部分を話し合いで埋めながら、これでおおよそいけるだろうという所まで持って行った所で、鋼の王との長い謁見は終ったのだった。<br />
王城の外に出て西の空を見れば茜さす夕暮れ時になっていて、振り向くとひっそりとした夜の帳が徐々に街へと降り、街灯が灯り始める。<br />
午前中にレンジャー連邦の空港を出て、王と謁見できたのは午後のお茶の時間ごろ。それからずっと話し込んでいたのか、とむつきは苦笑いながら王城の門を潜り、外は物騒だからと付けてくれた寡黙な護衛と共に、むつきは宿泊先へと向かう道を歩いた。<br /><br />
パイロット達の命を乗せるのは 人が生み出した鋼のとり<br />
巨大なエンジンが生み出す膨大なエネルギーと<br />
緻密な計算で作り上げられたパーツの一つ一つが<br />
地へとどめようとする重力を振り切り空を飛ぶ<br />
それは一つの奇跡ではないだろうか…、むつきはそう思いながら又上を見上げる。<br />
「綺麗だなあー」<br />
赤い、赤い夕焼けの空…あの人もこの空を見ているのだろうか…。<br /><br />
/*/<br /><br /><font color="#666699">この空の下には大切なものがたくさんあるのに<br />
全部をこの手ですくい上げる事はかなわないことだった<br />
だけど何もできない訳じゃない<br />
私は風を切り飛ぶ鋼の翼に想いを託し<br />
愛する人の命と 大切な人達の笑顔を守ろう…そう思った</font><br /><br />
/*/<br /><br />
「元が小型機なので、結構厳しい、と?」<br />
「はい」<br />
宰相府空軍空港の整備士長は、航空機仲間の奥さんの来訪に仕事を部下に押し付…託して人の出払った詰所にやってきて、彼女が持ってきた手土産を早くももぐもぐさせながら、渡された図面をしげしげと眺めていた。<br />
ちなみにお菓子はレンジャー連邦特産のオレンジと干しナツメの入りの焼き菓子である。<br />
「確かにラスターチカは宇宙機としては小型ですからな」<br />
「エンジン部分に関して、小型化して搭載兵器スペースを確保したかったけど…燃費が悪くなって航続距離が落ちてしまい、かえって性能が落ちてしまうんですよね」<br />
「ご主人はなんと?」<br />
むつきは整備長の問いかけに肩を竦め、出されたコーヒーを口にする。<br />
「…今回は助力無しです。」<br />
難しい、と言ったのは、国のもう一人のエンジニアであるむつきの夫なのだが、彼の方はというと現在スクランブル部隊訓練指導官の任に着いていて、忙しい日々を贈っていた。<br />
「まあ…色々理由はありますが、いつまでも彼に甘えてばかりじゃ駄目ですし…。」<br />
「そうでしょうな。」<br />
「はい。」<br />
彼女は摂政が見せてくれた彼の部隊指導報告書の陳情部分を思い出す。<br />
今の任で必要とするもの項目に、丁寧な文字で書かれていたのは「燃料搭載量の増大」。<br />
現行飛ばしているのは燕姫の方だから、これは改修への遠回しな助力…なのだろうか?と首を捻ったが、エンジン周りで悩んでいた時だったので、感謝しながらプランの中に組み込ませてもらっていたのだ。<br />
「エンジンは性能が上がった分燃料を消費するので、胴体ちょっと伸ばして燃料タンクの容量を増やし、増槽をオプション装備できるようにします。」<br />
「それが良いでしょう。」<br />
整備士長は彼女の言葉に頷いた後、笑顔を見せた。<br />
「さて…そろそろ自分は現場に戻らねばなりません。」<br />
「あ、長々とすみません!」<br />
多くの整備士達を束ねる彼は多忙のひとである。むつきは広げていたものを仕舞うと話し込んでしまった事を詫び、席を立つと「よろしくおねがいします」と頭を下げる。<br />
実の所、彼女がここに来た理由は彼に会うだけで無く、この国で腕と知識を磨く為なのであった。<br />
航空機に明るいこの国で学ぶ事は、彼女にとって大きな意味を持ち、短い日数ではあるが、それは後々彼女は進めるMAEDAの改修で生きて行く。<br />
「ここにいる間、多くを学んで行かれると良いでしょう。整備士同士の交流が盛んな今ならできる事です、前なら簡単にできる事では無かった。」<br />
「ええ、ありがたいことだと思います。」<br />
「しかし、熱心で良い事ですな」<br />
「守りたいものがあるから、必死なだけです。」<br />
「ははは」<br />
笑いながら二人並んで詰所を出る。<br />
ふと、強い日差しがそそぐ窓の外へ視線を向ければ、見えるのは遥か先まで白い砂の世界…その奥そびえる水の塔の姿が水蒸気の雲の中幻のようだ、と彼女は思いながら砂の感触がする廊下をその足しっかりと踏み締めた。<br /><br />
/*/</font></p>
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