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「ドランジ歓迎祭り:悪乗り編の舞台裏」(2007/01/29 (月) 04:59:36) の最新版変更点
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ドランジさん歓迎祭
「1日目 夜 藩都 政庁」
「ええい、こんな忙しい時にあの二人はどこに行ったー!」
ここは夜の政庁。
ドランジ氏歓迎祭の開会式も何とか無事に終了し、明日以降の予定調整および関係各所への連絡と事前準備のため、楠瀬藍は政庁を右へ左へと大忙しである。
そんな中、関係資料を早めに提出してもらおうと青海正輝、虹ノ七色に協力を要請していたはずなのだが、その姿は政庁には無かった。
「…くそ、何度確認しても約束した日は今日だ。明日絶対必要じゃない資料なのがばれたか…?だけど、有ればもっと仕事がはかどるのに…!!」
頭を掻き毟る楠瀬。
自分の立てた完璧な(しかし超過密な)スケジュールを崩され完全に混乱している。
ちなみに、今政庁にいるのは楠瀬藍ただ一人。
藩王と摂政はドランジ氏との会食、吏族の小奴は同席。その他のメンバーには、各自自由にという指示が出されている。
つまり、勝手に自分で忙しくして勝手に空回りしているのである。
…難儀な男である。
「…はっ!?まさかあいつら、まだ北の都に?」
正解である。
というか、こんなときに政庁で仕事をしている楠瀬もどうかしている。
「…仕方ない、こうなったら自分ひとりで何とかしておくか…」
頭の中の計画を修正しながら、机に向かう。
こうして楠瀬藍のドランジさん歓迎祭一日目は過ぎていった。
「 2日目 早朝 政庁内 」
結局徹夜で仕事をしていた楠瀬藍は、朝イチで藩王に挨拶しようと顔を洗い、執務室へ向かっていた。
と、藩王の執務室から摂政、砂浜ミサゴが出てきた。
「それでは早速行って参ります、藩王!」
「よろしくね~☆」
ミサゴはそう言って扉を閉めると、楠瀬に気がついた。
「あ、これは摂政。おはようございます。こんな早くからどうされましたか?」
「ああ、楠瀬さん。おはようございます。実は、昨日のお祭騒ぎで北の都に変質者が出たらしいのよ。実害はともかくかなりの迷惑行為だったみたいだから、早速行って状況を調査してくるわ!頑張れば昼までには帰ってこられるからスケジュール的には問題ないから平気よ!!それまではよろしくお願いしますね!!!」
一気に早口でまくし立てたミサゴは、楠瀬が聞きたかったこと全てに先回りして答えた。
「あ、えーと…じ、じゃあ俺も行きます!そうすれば早く済むでしょう?」
何とか要点のみ理解した楠瀬は、何とかこれだけ言うことができた。
「じゃあ、お願いします。先に正門前にいます。30分後にいなければ置いて行きます。時間が惜しいので」
「はい、了解です。遅れたら置いてってください。それでは!」
そういうと、準備のためお互い反対の方向にかけていく。
が、楠瀬は先に進めなかった。
「まてーい!」
「な、何奴!?」
立ちふさがったのは虹ノ七色。
様子からして、執務室にいたらしい。
「あ、虹ノ、資料は?」
思い出したように言う楠瀬。
「ごめん、明日まで待って?」
釣られて答えてしまう虹ノ。
「しょうがないなあ。じゃあ明日の昼までに頼むよ。おっと、俺は用事があるからこれで」
「ああ、わかった…って、ちょっと待てー!!」
思わず楠瀬を見送りそうになって慌てて阻止する虹ノ。
「何だよ、俺はこれから摂政を手伝いに行くんだってば」
「だから、待てって言ってるじゃん!」
「急いでるのに…用件は何だ」
仕方なく足を止める楠瀬。
ほっと一息つくと、虹ノは言葉を紡ぎだした。
「ええと、そのだな…お前、今回の全スケジュールは把握しているか?」
「ああ、把握している。だから、支障が出ないように摂政を手伝おうと…」
「いやだから…」
こうなった楠瀬は性質が悪い。仕事優先で融通が利かない。
どう切り抜けようかと虹ノが迷っているとき、後ろから声をかけられた。
「空気読め、ってことよ。楠瀬くん。おはよう。虹ノくん、頑張ったね」
藩王である蝶子が執務室から出てきて声をかけてきたのだ。
「「藩王!」」
虹ノはほっとして、楠瀬はビックリして反射的に声をあげた。
「はい、おはよう。楠瀬くん、スケジュール、全部把握してるって言ってたけど、どうなっていたかしら?」
「はい。カール・T・ドランジ氏には、連邦で式典、大学での講演会、軍事施設の視察、一般民向けのイベント…祭中は、これら全てにドランジしに参加していただくことになっております」
「そうね。それで、ミサゴちゃんのスケジュールは?」
「はい、摂政に置かれましては、各種イベントのまとめの為、また移動中のドランジ氏のエスコートになっております」
すらすらと答える楠瀬。
蝶子がうんうんと頷くと、虹ノがこう続けた。
「楠瀬、ドランジ氏がゆっくりできる時間は無いよな?」
「ああ、…そうなるな。だが、ちょっとした空き時間はあるから、それほど窮屈ではないかと思うが」
「それじゃあ摂政殿は?空き時間ってある?」
「…摂政は、今回の祭りの陣頭指揮をとってもらっている関係上、時間の余裕はあまり…それに、摂政自ら空き時間を削って仕事してるし…」
あくまで普通に答える楠瀬。
蝶子はため息をつくと、続きを言った。
「楠瀬くん。今回、ドランジさんを呼ぶのに尽力したのは誰でしょう?」
「…摂政です」
「じゃあ、この国で一番ドランジさんを想っているのは?」
「…摂政です」
「じゃあ、イベントで忙しいドランジさんにゆっくりしてもらいつつ、今回一番頑張ったミサゴちゃんへご褒美をあげるとしたら?」
「…ええと、デートさせるとか…って、ああ!!」
ここまで来て、楠瀬はようやく気が付いたようだ。
とんでもないニブチンである。
「はーやれやれ、やっと気付いたか。北の都の変質者云々は俺の嘘。ドランジ氏には、青海が命がけで話を通してくれた。で、全体の許可は藩王が出してくれたんだ。そこにお前がのこのこついてったら邪魔以外の何者でもないだろ?」
「…たしかに」
もう楠瀬は頷くしかなかった。
そこではた、と気がつく。
「あ、でも昼からのトークショーは…?」
「「それは、大丈夫」」
蝶子と虹ノの答えがハモる。
このとき、勢いで頷いたことを楠瀬は激しく後悔することになる。
「 2日目 夕 政庁内 」
「・・・というわけで、イベント一個変更ね」
陽気にしゃべる青海正輝。
その姿は、なんと言うか…
「お前、その格好…」
「オウ、ドランジさんのコスプレだ。どうだ、決まってるだろ?」
ふん!とポージングする青海。
「こういう風に、明日の夕方国民みんなで仮装パレードだ。もともとのパレードを変えるだけだから、準備は楽だろ?」
「楽って…今から仮装の手配しなきゃならんのだぞ!?お前も手伝えよ!」
切れそうな楠瀬に、青海はにやりと笑って答える。
「俺はほら、お前に頼まれた仕事があるし」
「だからって…!」
「それに、担当はお前じゃん。じゃ、そういうことで!」
「あ、ちょ、おま・・・!!」
言うや否や、ダッシュで離脱する青海。
後に一人残された楠瀬。
「…とほほ。俺の計画が…」
ぼやきつつ、仮装衣装の手配を考えているあたり、楠瀬なりにこの祭りを楽しんでいるようだ。
(文責:楠瀬藍)