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2月13日
この日はレンジャー連邦の乙女達にとって、特別な日である。
義理や本命、三倍返し狙いなど、上質なチョコレートを求める多くの乙女達の間でも噂されるとあるモノがこの日のみ解禁になるのである。
そしてこの日、それを手に入れるその為に集結する乙女達。
これはそんな乙女達の戦いの記録である。
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2月13日0730
一人の少女がナイフを磨いでいる。
にゃんだりうむ合金製のコンバットナイフだ。
あのグリップの独特な曲線はMTTB社製のNYAシリーズだろう。
とある国の軍でも正式採用されている程の実践モデルだ。
「はぁ。なんであんな事言っちゃったんだろ」
思わずため息が漏れる。
どーしても素直になれない。
輝くナイフをガンベルト後方に付けられたナイフホルダーに収納する。
「そもそもあいつが私の事を料理下手なんて言うから…」
弾倉をベストに、1、2、3、4。
ガンベルトの弾納にも4つ。
愛用の銃、ニャーKR―2の動作チェック。
油を差す。
「見返してやるんだから。」
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バレンタイン特別SS
乙女達の聖戦(ジ・ハード)
     ~生きカカオを狙え~
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2月13日0900
L島南部。
隠れ砂浜。
迷彩服に多数の武器類を装備した2人の少女がそこには立っていた。
長い髪を結上げた少し冷たい印象の少女が、広がる森を見上げながら呟く。
名を愛香と言う。
「ここに…ここにアレがあるのね。」
それに答えるように肩までの髪の少女が言う。
名を鈴といった。
「ここまで…。ここまで来たんだもん。絶対、絶対手に入れてやるんだから!」―きゃー!
―こないで!こないで!
―え?うわぁいやぁぁぁあ!
アレを手に入れるために多くのライバル達がすでに森の中に入っているらしい。。
「大丈夫?鈴。怖じ気ついてない?」
愛香が後ろを見ながら言う。
「任せておいてよ愛香ねぇ!絶対ごめんなさいって言わせてやるんだから!」
鈴はニャーKR-2に弾倉を込める。
「絶対アレは手に入れる!料理下手何ていわせない!!」
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蔦を、根を、枝を。
鈴はナイフで切り刻みながら道を作っていく。
「愛香ねぇ!アレは?アレの位置、補足できる?」
後ろを見る事無く鈴は尋ねる。
「数は、多いわね。まだ、集まっても居ない。単体のうちに仕留めないと勝ち目はないわよ。」
「わかってる!一番近い奴を教えて。一撃で仕留めてやる!」
「ならここから直進!接触まで5、4、3、2、1、今!!」
言葉に合わせて急停止、ニャーKR―2を構える。
と同時に枝葉を揺らして飛び出す異形の怪物。
全長1メートル。
黒いラグビーボール状の大きな固まりの下から生えた冗談のように太い蔓。
ラグビーボールの先から林檎を8等分するように線が入る。
みしみしと言う音を立てて開いていく。
そこに覗くのは牙牙牙牙牙!!
ぴぃぎぇぇぇぇぇぇ!
奇声を上げながらそれは現れた。
レンジャー生きカカオ。
学名カカリアス・ニャ・チョコレウス
L島の南部の森にのみ生息する食人植物で、毎年2月13日のみ、完熟、行動を開始するという。
その巨大な体とは裏腹にわずか一人前のみ採取できるカカオで作られたチョコは食べるものすべてに至上の幸福を与えるという。
ついでに恋も実るらしい。
「こ、これが、生きカカオ。」
トリガーを引くのも忘れて唖然と生きカカオを見る鈴。
「何やってるの!!死にたいの!!」
愛香がその手のニャーKR―1カスタムを連射しながら叫ぶ。
ひるむ事無く直進する生きカカオ。
「効いてない!?」
鈴は叫ぶ。
「良いから一度引きなさい!態勢を建て直さないと!」
「でも!?」
「いいから来なさい!!」
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息も荒くへたり込む二人。
「はぁ…はぁ…あれが…生きカカオ…。」
始めてみた生きカカオにショックを隠しきれない鈴。
「そう。あれが生きカカオよ。」
百戦錬磨のカカオハンター愛香が頷く。
その手はニャーKR―1カスタムを組み替えている。
「はぁ…ねぇ愛香ねぇ。」
「ん?」
カチャカチャと作業を続ける愛香。
「あれって本当においしいの?」
鈴の脳裏に先程のグロテスクな生きカカオが浮かぶ。
「それが美味しいのよ。物凄く。」
作業が終わったのか動作チェックを行なう愛香。
「ふーん。ねぇ、もいっこ聞いていい?」
「何を?」
「何でそんなに美味しいチョコを毎年作ってるのに彼氏居ないの?」
愛香の動きが止まる。
前髪の影でその表情を伺う事ができない。
「ねぇ。鈴?」
恋に全敗のカカオハンター愛香はゆらりと鈴を見る。
「何?」
「この状況………一人くらい死んでも生きカカオの所為よね。きっと。」
手に持った銃に弾を込め始める愛香。
鈴、滝汗。
地雷に触れたらしいその事にやっと気付いた。
「ねぇ…鈴?」
抜き足刺し足でその場から逃走を計る鈴。
「死になさい!」
轟音とともに吹き飛ぶ木。
「ちょっ!ちょっと愛香ねぇ!?待って待ってぇ~!」
「問答無用!」
吹き飛ぶ木。
―鬼ごっこが始まった。

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爆発、爆発、爆発。
次々と吹き飛ぶ木。
音に誘われたのか、無数の生きカカオに数人の乙女達も巻き込んで、L島大運動会。
カカオ→愛香→乙女s→鈴の順で走り抜ける。
阿鼻叫喚の鬼ごっこ地獄と化していた。
爆発、爆発、爆発。
吹き飛ぶ木。
自然破壊も猛々しいが誰もそんな事気にしていなかった。
みな逃げるのに必死である。
その内、弾が切れたせいかふと正気になる愛香。
足を止める。
「あ、あれ…私…。」
あまりの怒りに記憶も飛んでいたらしい。
「あ、愛香ねぇ!ごめん!もう聞かないから!」
きょとんとする愛香。
「だから走ってー!!」
「え?」
振り向く愛香。
その目前まで生きカカオの群れは迫っていた。
「きゃ…!」
愛香がその群れに飲み込まれようとした。
その時!
「シ・〇・ル・ド・突撃ぃぃぃぃい!!」
それこそ雷鳴のごとき掛け声と共に吹き飛ぶ一部の生きカカオ。
「こうでござるか!青海殿!」
地面に降り立つダンディなおじさま。
「まだまだだな!見ていろフェ猫殿!」
高い樹の上から響く声。
見上げる乙女。
ハダカにびきにぱんつ。
深紅のネクタイをなびかせた小太りの男。
その足にはイカナを思わせる赤い靴下。
「とう!」
樹のしなりを利用してジャンプする男。
7回転ひねりで群れの上空まで飛ぶ。
そのふくよかな体からは想像もできない身軽さである。
「これが俺の愛!!銀河お好み焼きマンホール越し反重力仕上げ!!」
黄色い臭気を吸引し鼻血を吹く男。
もう技名だか何だかよく判らない事を叫びながら、深紅の光を纏って生きカカオの群れに突撃する男。
吹き飛ぶ群れ。
「これがハンターと言うものだ。フェ猫殿。」
セクシーポーズを取りながら高速で腰をグラインドさせる男。
なんか今更どうでも良いが鼻血塗れである。
「さ…さすがでござる!さすがでござるよ!青海殿!」
滝のような涙を流しながらダンディなおじさまはしきりに頷いている。
「俺はまだ厳しいぞ。ついてくるか?フェ猫殿。」
腕を組み沈み始めた夕日を見る男。
頷くおじさま。
二人は目をあわせると頷いて夕日の向こうに跳躍していった。
死屍累々。
山のように詰まれた元生きカカオ。
乙女達は半ば放心状態になりながらも、目的のモノを入手し帰路に着くのだった。
そんな中、夕日をみながら愛香は放心している。
「………青海さま…。」
「Σ愛香ねぇ!?」
鈴は愛香の独り身の訳をひしひしと感じると、生きカカオのカカオを採取に向かった。
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2月14日0800
いつもあいつが通る道。
あいつが料理下手なんてゆーから!料理下手なんてゆーから!
だから…
だから…頑張ったんだから…。
聞こえる足音。
どんどん近づいてくる。
鼓動が早まってしょうがない。
どきどきが、胸が…!
あぁぁぁぁぁもう!
走ってあいつの前に飛び出す。
「ねぇ!これ…」
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2月14日1000
政庁の物見台。
空を見上げる虹ノ七色と青海。
ふるふると身を揺する。
「なぁ虹ノ。」
「ん、どうした?」
「なんか寒くないか?」
「そうか?どっちかっつーと暑いくらいのような気がするが。」
「そうかなぁ…?」
そーっくしょん!
くしゃみをする青海。
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2月14日1000
政庁の門付近。
すらりとした髪の長い冷たい印象の女性が胸に小さな小包みを抱いて何かつぶやいている。
「…青海様……。」
恋に全敗のカカオハンターは何かを決意したように頷くと歩きだした。


(文責:双樹真)