悩み
苦しみ
あがいて
あがいて
それでも成果を得られない
何の力にもなれず
何の力にもならず
ただただ俯き涙する
心の闇夜に浮かぶのは
ただ一体のてるてる坊主
それは夜明けを呼ぶ御供
昏い心を生け贄に光輝纏いし闇払うもの
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コレはゲームで
見えてるものも感じる事も
すべて仮想でまやかしで
現実なんか一つもないのだ。
双樹は廊下を歩いている。
走れるほどには回復していなかった。
心も、体も。
でも、この苦しさはなんだ?
この悲しさはなんだ?
仮想が仮装するこのアイドレスで感じるこの想いはなんなんだ?
所詮ゲームだろう?
所詮遊戯だろう?
なのに……。
なのになのに。
仮想飛行士も猫士も国のみんなも。
どうしてこんなに俺の心を揺らすんだ?
日を追う毎に。
戦いを経る度に。
すべてに気持ちが流れていく。
思いは想いに変わってゆく。
なんなんだろう…これはいったい
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「あれ…どうしたんですか?」
廊下を曲がったそこには摂政である砂浜 ミサゴが立っていた。
その手には金の龍と灯台をかたどった飾り物。
「いや、俺は別に…そ、それよりミサゴさん。それは?」
ミサゴが手に持つ飾りを指差す。
「あぁ、これですか?」
ミサゴがふわりと笑う。
何かを信じきるものにしか浮かべる事叶わぬ笑み。
「ドランジさんお帰りなさい祭りの飾りですよ」
その笑みに双樹は怯む。
己すらまだ信じきれない自分がひどく矮小に思えたのだ。
「…信じて…いるんですね…」
苦しげに双樹は言う。
「えぇもちろん。あの人は…ドランジさんは…強い人ですから」
揺らがない眼差し。
「…強いんですね。ミサゴさんは」
眩しかった。
「私が?まさか!」
ミサゴは微笑む。
「そうありたいとは思います。いつも。いつでも」
脳裏に浮かぶのはあの時のこと。
最後に見せた優しげな笑みと、戦地へと駆けるあの人の背中。
力があれば。
あの人の隣を行くだけの力が私にあれば。
「でも今の私は弱い。オーマと戦うどころか近づく事すら出来ない。」
あの時の事を思い出したのか悔しげに俯く。
頭を軽く振り顔を上げた。
「だからと言って落ち込んでいる暇はありません。あの人は必ず帰ってくる。どこまでも誠実なあの人なら、私たちを悲しませるような事はしません…絶対に」
上げられた顔に映るのは陽だまりのような笑顔。
「…やっぱり強いですよ…ミサゴさんは」
双樹は微笑む。
「そうですか?」
ふむーと考え込むミサゴ。そうですよ。と言う言葉を飲み込んで双樹は歩きだす。
「あ、そうだ!ミサゴさん、夜星知りませんか?」
ふむーふむーと考えるミサゴに双樹は聞いた。
「夜星くん…ですか?私はみてませんけど」
「そうですか。ありがとうございました」
「いえいえ。それでは私、飾り付けの続きがあるので失礼しますね」
軽く会釈をするミサゴ。
それに返礼し双樹は歩き始めた。
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ぶうらりぶらり
ぶうらりぶらり
無力が首に縄をなう
ぶうらりぶらり
ぶうらりぶらり
【続く】
(文責:双樹真)
最終更新:2007年03月29日 22:38