時間が…
思いが…
一瞬が無限する矛盾の中に
ほんのひとひら
黒雲の隙間からもがくように漏れる光

てるてる坊主

てる坊主

明日天気にしておくれ

てるてる坊主

てる坊主

てるてる坊主

てる坊主

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これは…
この世界は…
この体は…
この景色は…
ゲームに過ぎない
どこまで行ったって仮想にしか過ぎやしない

でも…

違う
違うよな…

この気持ちは仮想じゃない
何かを信じて待つ心も

何かに立ち向かい歩いて行く事も

必死に相手を思い涙する事も

別れを恐れる気持ちも

仮想じゃない

この気持ちはデータなんかじゃない

これが仮想だとしても

これが仮想だって言うなら

仮想もリアルも同じじゃないか

/*/
息が切れる
いつの間にか走っていた
走れていた
拗ねてひねくれて駄々こねて
人を泣かせて何が強くなるだ
いや、猫を泣かせて…か
意識的に避けていた場所
喧嘩した後にいつも居る公園に向かう
謝らなければいけないと判っていた
でも怖かった
答えの無いまま、気持ちがあやふやなままもう一度顔を合わせる事が
答えがあるわけじゃない
正解が見えたわけでも無い
でも、ただ俺は甘えていただけなのだとそれだけは判ったから
/*/
夜星はそこにいた。
いつものなんでもない喧嘩の時と同じように。

「夜星…」

流れる噴水を眺めるように背を向ける黒猫に声をかける。

「どうした…また殴られに来たか?」

双樹を見ないまま精一杯の皮肉を込めるように言う夜星。

「そうだ。殴られに来た」

少しの沈黙。

「バカか?お前は」

「馬鹿だな。俺は。無論、悪い方の意味で」

双樹は即答する
数分、沈黙が流れる。
意を決したように双樹は口を開く。

「…慣れない事をさせちゃいました。ごめん、心配かけた」

夜星の尾が揺れる。

「…鰻」

「え?」

「鰻で許してやるにゃ」

ちらりと双樹を見てまた噴水を見る夜星。

「わかった。約束するよ」

「特上にゃ」

「上じゃ駄目?」

「特上にゃ」

「…わかった」

ふぅと軽くため息をつく夜星。

「仕方がにゃいから許してやるにゃ」

すたたたたと双樹の頭に駆け上がる。

「まったく…駄目な子分を持つと困るのはいつも僕なんだにゃ。」

「うん…ごめん」

「謝る暇があるにゃらきりきりあるくにゃ!」

「うん」

頭に垂れる夜星を乗せて双樹は歩き出した。

―お前は大事な仲間なんだ
もうデータなんかじゃ語れないくらい

そんな気持ちも何もかも食ってる最中に並べ立ててやる。

特上の腹いせにそんな事を誓って。

【雨のち曇り時々晴れ:終】

(文責:双樹真)

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最終更新:2007年03月30日 23:16