時間が…
思いが…
一瞬が無限する矛盾の中に
ほんのひとひら
黒雲の隙間からもがくように漏れる光
てるてる坊主
てる坊主
明日天気にしておくれ
てるてる坊主
てる坊主
てるてる坊主
てる坊主
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これは…
この世界は…
この体は…
この景色は…
ゲームに過ぎない
どこまで行ったって仮想にしか過ぎやしない
でも…
違う
違うよな…
この気持ちは仮想じゃない
何かを信じて待つ心も
何かに立ち向かい歩いて行く事も
必死に相手を思い涙する事も
別れを恐れる気持ちも
仮想じゃない
この気持ちはデータなんかじゃない
これが仮想だとしても
これが仮想だって言うなら
仮想もリアルも同じじゃないか
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息が切れる
いつの間にか走っていた
走れていた
拗ねてひねくれて駄々こねて
人を泣かせて何が強くなるだ
いや、猫を泣かせて…か
意識的に避けていた場所
喧嘩した後にいつも居る公園に向かう
謝らなければいけないと判っていた
でも怖かった
答えの無いまま、気持ちがあやふやなままもう一度顔を合わせる事が
答えがあるわけじゃない
正解が見えたわけでも無い
でも、ただ俺は甘えていただけなのだとそれだけは判ったから
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夜星はそこにいた。
いつものなんでもない喧嘩の時と同じように。
「夜星…」
流れる噴水を眺めるように背を向ける黒猫に声をかける。
「どうした…また殴られに来たか?」
双樹を見ないまま精一杯の皮肉を込めるように言う夜星。
「そうだ。殴られに来た」
少しの沈黙。
「バカか?お前は」
「馬鹿だな。俺は。無論、悪い方の意味で」
双樹は即答する
数分、沈黙が流れる。
意を決したように双樹は口を開く。
「…慣れない事をさせちゃいました。ごめん、心配かけた」
夜星の尾が揺れる。
「…鰻」
「え?」
「鰻で許してやるにゃ」
ちらりと双樹を見てまた噴水を見る夜星。
「わかった。約束するよ」
「特上にゃ」
「上じゃ駄目?」
「特上にゃ」
「…わかった」
ふぅと軽くため息をつく夜星。
「仕方がにゃいから許してやるにゃ」
すたたたたと双樹の頭に駆け上がる。
「まったく…駄目な子分を持つと困るのはいつも僕なんだにゃ。」
「うん…ごめん」
「謝る暇があるにゃらきりきりあるくにゃ!」
「うん」
頭に垂れる夜星を乗せて双樹は歩き出した。
―お前は大事な仲間なんだ
もうデータなんかじゃ語れないくらい
そんな気持ちも何もかも食ってる最中に並べ立ててやる。
特上の腹いせにそんな事を誓って。
【雨のち曇り時々晴れ:終】
(文責:双樹真)
最終更新:2007年03月30日 23:16