【-偵 カンサツリョク 察-】

偵察は、観察力が命だ。事前に仕入れておいた情報から組み立てた予想を華麗に使い潰してあくまで現実をつぶさに拾い見よう。

ぎょろぎょろと、つば広の帽子の下で、見開いた目がひそやかにうごめく。

何か動いているものはないか。動いていないもので不自然な痕跡のあるものは。その逆もまた然り。つまり…敵に気付かれないよう、痕跡を殺して歩くことも、偵察には必須の技能。今回は特に念入りにその作業をやっておかねば。

なぜならば、事前に仕入れた情報では、状況は極めてBAD。手前の体だけでなく、あれそれNPCの身柄を取り扱う必要が出るかもとのこと。そいつは、まあ、要するに、いつもは心強い友軍であるはずの彼らが、あてにならないどころか、作戦行動上は足手まといになるかもしれない、ってことだ。

おっと焦るな、足手まといなんて言葉を使っちゃあいるが、彼らを救うためにこそがんばるぜという人たちもいるし、いつも助けられてばかり、楽しませてもらってばかりの恩をむしろここでやっと返せるかもってことでもあるんだ。何よりNPCが一緒だと士気がすげえあがるしな。ロールプレイとか。

とは、言っても…実際問題、いつもより何倍も慎重に行動しておかなきゃあいかんってことだ。

(元々、そういう事情がなかろうと、全力は尽くすつもりだけどな…)

ぶつぶつ傍白しながら男は偵察を続ける。

現在の状況と来たら、まあ、予想通りというか、ある意味予想外というか…

早いとこ根源種族の目をうまいこと逃れおおせてNPCと接触して、せっかくの父島、一つ最後には楽しんで帰りたいもんだ。

やがて思考の傍白すらも閉じて、彼は視界処理に専念しながら、思考を分割、チーム行動に集中力を完全に割り振った。

この数十の目でもって挑めば、自分の痕跡も、敵の痕跡も、異変の痕跡も、見逃すことはあるまいさ。

―The undersigned:Joker as a Liar:城 華一郎

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最終更新:2007年04月13日 17:26