【-偵 シタシラベ 察-】

「~♪」

「あら、楽しそうですね華一郎」

おー、愛佳ちゃんか、と、猫士の少女に声をかけられ上機嫌に返すのは室内でも帽子を脱がない黒衣の男。もちろんここが図書館で、誰かと話すための場所ではないからの振る舞いであるが、あまり品がいいとはいえない行為だ。

華一郎は手元にどっさり積まれた本を、ほーら、と開いてみせた。

「父島特集でも組むんですの?」

「冒険行くんだよ、今度。パーティーで一緒になった小鳥遊さんたちと一緒なんだー、いいだろー」

小笠原分校に行くんですのと聞かれたので第五世界に行くんだよと答え、そうしてとうとうと聞きかじったばかりの父島の風土や、地形などを語って聞かせる。

それが、レンジャー連邦の吏族、兼、文族、城 華一郎(じょう かいちろう)の、冒険出発前に交わした印象深い最後の会話であった。

「実際に見てみるのと本とじゃやっぱり違うねー」

現地は危険な状勢になっているかもしれないとのことで、廃墟になってるだのなんだのと聞かされていたが、島がまったいらに潰されてるわけでなし、南洋の空気が毒に犯されてるわけでなし、まずはしみじみと見渡す限りを俯瞰してみる。

…あそこは、足場が悪そうだな。

あそこは影に潜れそうだ。

前にボラーの前に立った時と違って、今は体力(根源力)が落ちてる。

アラダがいると想定すれば、徹底的に視界を遮る遮蔽物と、それを利用した運動戦を仕掛けなければならない。

空を見て、海を見て、前回のように、どこから奇襲のあるかわからないので、とにかく辺りを警戒する。

うん、下調べは大事だなあ。予めマップを把握しておいたから、注意して見るべき点を今から考えて探さなくても大丈夫だ。

省けた分の労力と時間で、より念入りに偵察が行えることを、生の情報を教えてくれた鍋の国の人にも感謝しながら、彼はどんどん仲間と進んでいった。

―The undersigned:Joker as a Liar:城 華一郎

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最終更新:2007年04月13日 21:59