【-感 ソウジュウカン 覚-】
何の因果か、よもやわんわん系のI=Dにまで乗ることになろうとは。
元々は護民官という言葉の響きだけで着用アイドレスを選んだ男は、奇妙な感慨に耽りながらコンソールとにらめっこ。操縦系は、ううん、微妙にアメショーと違うような、同じような……
「こちら城、感度良好ですよ、双海さーん」
コ・パイ席で計器をチェックしながら声に出す。連携は声出し基本でしょーとの発想だった。特に、見通しを立てて情報を頃合よく先出しできるのはデータには出来ない、人間だけの強みだ。
情報を取得するための膨大な計器という名の新たな感覚器官。この自然界には本来存在していなかった数字と文字の塊から、何をすれば、何が起こるか。ずっとずっと先まで読めるのが、人間の人間たる抽象機能の強み。舞踏子の未来を読む能力など、その最たるものだ。
「宰相もなかなか粋ですね、ゲームの報酬にゲームというのは」
「楽しみは自分で勝ち得てこその充実ってことでしょうね」
先日のドランジ探しの折りにはいろいろとお世話になりましたー、と、その舞踏子であるいわずみ子さんと雑談。
普段は自国においてあるアメショーをしか見たことがなかったので、コパイ能力を持つとされる猫士であっても、空飛ぶんじゃ陸戦型のアメショーと大分勝手が違うよなあ、とか思いながら、対アラダ用に、なるべく計器だけ見るようにして進んでいく。
のし、のし、のし。自分たちの手でより大きなものを動かし移動する、この感覚。
ああ…
操縦感。
人が人たる由縁。自分の肉体が持つ性能以上のことを、肉体の延長線となるものを見つけ出し作り出し支配し一体化する、これこそは、脳の感じるもっとも馴染み深い幸せの一つ。
ましてPCはいつもキーボード上から描き出される存在だ。その自分がキーボードで情報の軌跡を描く。
実に、冴え冴えとした感覚だった。
―The undersigned:Joker as a Liar:城 華一郎
最終更新:2007年04月14日 11:11