【-医 イノリ 療-】
諦めるな、諦めるな……!
必死に声をかける。それでも集中の乱れぬ医療部隊の整然とした手付きはさすがだった。
本当は震えたいほどの気分に違いない。いつも思う。
目の前で息絶えかけた仲間の蘇生行為をする間、どれだけの量の絶望と戦いながら、それを固く払いのけて、精妙な診断と治療を行っているのだろう。
そしてそれを断行するために発揮されているものは、間違いなく、『勇気』と呼ばれるもののはずだった。
愛は勇気の友、なるほど。
このぎりぎりの際になって痛感する。勇気がなければ、愛は力を発揮しえないのだ。
そしてまた、愛がなければ勇気の立ち向かうべき困難も見出せはしない。
がんばれ、がんばれ……!
既に目一杯がんばってるはずの仲間達に、それでもかける言葉が他に見つからない。
振り絞るような祈り。
ゲームを楽しむだけの仮想飛行士にも、織り成す想いは仮ならざることだって、ある。
往々にして、ある。
少しでも邪魔にならないよう、遠巻きにしながら、絞り出すように喉が枯れるまで祈りをこめて呼びかける。
まだ行っちゃ駄目だ、まだ消えちゃ駄目だ。
一緒にいよう、これまでみたいに、これからも。
専門ではなくとも知識はいろいろ蓄えてある、ほんのちょっとの手助けぐらいなら、そう、雑用レベルのお手伝いなら、俺にだって……!
唇も歯も噛み締めない。それをしてたら喋る速度が遅くなる。必要な会話がコンマで遅れる。
急いでる時ほど、力を抜いて。
ああ、なんて難しいんだ。そしてなんて難しいことを、この人たちは普段からやっているんだ。
息の詰まるような思いで、それでも死に抗い、その吐息を吹き払うべく、必死に勇気という名の酸素を吸い込み絶望という名の二酸化炭素を息吹く。
駄目だ、包帯とかそういう基本的なものしかわからん。
何の薬使ってるのかとかさっぱりわからん。
がんばれ、がんばれ…!
―The undersigned:Joker as a Liar:城 華一郎
最終更新:2007年04月14日 11:25