剣の淫らとは、主を求めるがゆえの恍惚でありまた渇望なのだろう。
だから俺は、剣の民だと名乗るアスカロンに、初見から惹かれたのだろう。俺もまた、自らを剣の民だと思うがゆえに。
「…どうした?」
「いや、フレンチトーストがばかにうまいと思ってな」
「今日は愛佳が作りましたよー」
朝のシリアス思考なんてのは一人没入してる間だけ保っていればいーもんである。夜星くんがにゃふにゃふと一緒にテーブルを囲みながら、これも同じように嬉しそうに冷たいミルクに浸したフレンチトーストをぱくつきながら、そう告げた。
「…えらい美味そうな食べ方だな、夜星くん」
「僕たち猫舌ですから、できたてのは食べれないんですよー」
あつあつもひんやりもどっちも楽しめるのと、最初から迷いなくひんやりだけを求められるのとはどっちがしあわせなのだろうかと考えるよりも先に、まずは空腹を満たす方が先だった。
「俺もやろーっと」
「あ」
ざぶざぶプレートに牛乳を流すと、まだ自分の分をすべて引き上げきっていないアスカロンが小さく声を上げた。
「あ」
華一郎も、それに気付いて声を上げた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
じ…と視線が絡み合う。
「さあさあ遠慮せずに食べようじゃないかアスカロン、僕らは友だ」
「一方的になれなれしく友と認定されてもな…」
それにこれはないだろうこれは、と、せっかくの焼きたてこんがり香ばしい風味のフレンチトーストの食感がなくなってしまったことについて抗議する。
「いやー、たまにはいいもんだと思うよ?
それにほらこうしてミルクびたしにした方が甘すぎなくて食べやさしいし」
「む…」
それは、確かにと思ったのか、一瞬黙るがしかし問題はそんなことじゃなくて人の同意を得ずにそういうことをするのがいいのかどうかであって云々怒られる。
「愛佳ちゃーん、おかわりもってきてあげてくれないかなー」
「はぁーい、自分でちゃんと取りに来てねー」
もきゅもきゅ食べながら取りに行く。
今日もやっぱりレンジャー連邦のお城は平和なのであった。
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-The undersigned:Joker as a Liar:城 華一郎
最終更新:2007年10月26日 17:23