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オアシスの果樹園


「西の都」を中心としたレンジャー連邦西部では、昔から農業が盛んであった。
西の都は街よりも広い面積を持つオアシスに面した、レンジャー連邦西部最大の街である。
都に置かれた大学では農業と地質学の研究が盛んであり、その研究成果は西部の農業の発展に寄与している。

レンジャー連邦における農業の中心は穀物と野菜である。観光地でもあるレンジャー連邦のオアシスでは草花や果物は観賞用として使われており、それらは少数の農家が観光客のために細々と栽培していた。

だがしかし、レンジャー連邦にある果物全てが観光用というわけでは、もちろん無い。
オアシスの周囲にはナツメヤシがぽつぽつと自生しており、子供達がよじ登って遊んだり、付近の住民たちが食用としてナツメヤシの実を持って帰ったりしていた。

そして、戦争に備えて国家を挙げての食糧増産計画を進めるにあたって注目されたのが、このナツメヤシである。
西の都の大学の研究チーム(チーム名:藩王様に愛の果物を!)の面々は、幼い頃からナツメヤシの木で遊び、その実を食べて大きくなった生粋のナツメヤシっ子であった。
彼らはナツメヤシを心から愛しており、様々な角度からこの果物を検証し愛でて食べ続けた。
そして、レンジャー連邦では食糧としてあまり注目されていなかったこの果物が、実は糖分やミネラル、繊維やビタミンが豊富でありカロリーも高く、食糧として非常に優秀である! という主旨の報告書を連邦政府に提出したのであった。
また、自生している事からもわかるように、この果物はレンジャー連邦の気候に合っており栽培が比較的容易である、という特徴があった。

この報告を受けた連邦政府は、食糧増産計画の1つとしてナツメヤシの栽培を行うことを決定。
そこで連邦政府は西の都に面したオアシス付近で、まだ農地や観光地として使われていなかった土地を新たにナツメヤシの果樹園として用いることにして、広く国民に呼びかけ農家を募った。

藩王様の「みんな! 食糧増産の鍵は果物よ! フルーツよ! 愛よ!」という台詞に導かれ――果物とフルーツって同じじゃん、とか、愛は喰えないヨ、とかいうツッコミも少々あったが――果樹園を作るための人員はさほど時間をかけることもなく集まった。

これはもちろん藩王直々の愛あるお言葉の効果もあったが、この時期、国民が増えてきたことも影響している。
果樹園ができることにより自然のままの風景がなくなることに市民からの若干の反発はあったが、その反発以上に、労働人口の増加に対応した新たな働き場所が求められていたのである。
かくて、藩王への萌えと溢れる労働意欲と藩国への愛の3つを完備した国民達によって、大規模なナツメヤシ果樹園の作成が始まった。

さて、果樹園を作るのは良いものの、各農家が勝手気ままに作れば問題が起きるに決まっている。
そこで計画的・効率的に果樹園造りを進めるため、技族にして摂政・砂浜ミサゴが陣頭指揮を執る事になった。
摂政が直々に指揮を執っていることからも藩国の食糧増産に賭ける熱意がわかろうというものである。

彼女は大学の研究者たちと幾度にも渡る綿密な打ち合わせをし、詳細な計画を立て、完成予想図を描き、国民一人一人に丁寧な説明をして回った。その努力は涙ぐましいを通り越して既に聖人もかくやという域に達していた。

なお、彼女の副官をやっていたアスカロンが「何故そこまで頑張るのですか?」と聞いたところ
彼女は「これが藩王様への、私の愛の証明です!」と答えたという。
まこと、忠臣の鑑と言うべき人物であろう。決して百合の花が背景に咲くような怪しい意味ではないので、誤解の無いようお願いしたい。

ともあれ、摂政の奮闘と国民の頑張りもあって、西の都にレンジャー連邦最大の果樹園が完成した。
各農家に計画的に割り当てられた土地に、整然と並べられたナツメヤシの木々。
力強さと雄大さを感じさせるその果樹園の名は「蝶子様と私とナツメヤシの愛の園」!
おお、なんたるネーミングセンスの無さよ! しかも意味わからんし!

命名者であるミサゴ嬢は、後にこの名前について問われたとき、こう語ったという。
「いやだって眠かったし」
ご苦労様であった。しかし、まだ苦労の時間は終わっていなかった。ここがUターン地点だったのだ。

果樹園完成の報告のため藩王様のもとへ戻った摂政が見たものは、
「オレンジ食べたい!!オレンジ!!」と駄々をこねる藩王様のお姿であった!
これがまた、激烈に可愛い駄々のこね方であった。甘え上手であった。
人の心の間隙を突くことに長けていた。つまり一言で言って、萌えた。

というわけで、摂政の次なるミッションはオレンジ果樹園造りであった。

これはもちろん藩王のお願いを叶えるためだけのミッションではない。
現実問題として、ナツメヤシの果樹園だけでは食糧増産計画を達成するには不足であったのだ。
ナツメヤシの果樹園をさらに広げるという選択肢もあったが、単一の果物に頼ることは、何かの理由でそれがダメになったときに取り返しがつかないことも意味する。
また、オレンジの栽培については以前より西の都の研究チーム(チーム名:オレンジ畑で捕まえて)が執念深く研究を続けており、既に栽培可能な段階まで研究を進めていた。

聡明なる摂政はそこまで考慮した上で新たな果樹園の造園に踏み切ったのだ。

かくて、ナツメヤシ果樹園から少し距離を置いた場所に、新たにオレンジの果樹園が作られた。
こちらも藩王様直々のお達しということで農家の集まりも良く、順調に完成に向かっている。
またナツメヤシ果樹園もさらなる拡大が推し進められており、レンジャー連邦の食糧増産体制は着実に整いつつある。

さらに将来の事を見越して、東部と南部のオアシスでも果樹園を作る計画が立ち上がっている。
こちらはまだ計画・実験段階であるが、将来的に東部・南部にも果樹園が作られることになれば、レンジャー連邦の農業はさらなる発展を見せることになるだろう。

(2418文字 文章:アスカロン)