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続・悪乗り編 摂政さんにご褒美の一日


―ところでお前、真面目に文士仕事しなくていいのかよ?
―なぁに、城の大将や双樹くんがいるからな。俺はどんどん悪乗りしていく所存だ。
―いや、普通に使えるものかけや。
(2日目朝、藩都にて着替えつつ)

「 2日目 朝 北の都郊外 ニャーロード北都→東都線 」

レンジャー連邦が誇る萌え摂政・砂浜ミサゴは怒っていた。
詳しく心情を分析すると、ハッピー・羞恥・混乱・睡眠など、隔壁封鎖もかくやとうほどごちゃごちゃしているのだが、今の段階では怒りが一番上である。

(2人まとめてレンジャー諸島の実測に行かせてやるんだから・・・!!(

2人とはもちろん今頃藩都でクダを巻いているに違いない、青海と虹ノである。
連邦内でこのようなイタズラを考えつくのは・・・藩王はじめかなりいるだろうが、実際に実行に移すようなクレイジーボーイは青海くらいしか考えられなかった。

(・・・それと藩城のトイレ掃除、図書館最深部の古文書整理と解読作業、そういえば東都大学からテストパイロットが欲しいって要請もあったわね・・・・。)

後でみっちりと課す予定の罰を指折り心の中で数えながら、ふと顔をあげたミサゴは、上げた顔を慌てて下ろした。

おりしも朝の漁に行っていた北の都の漁船団の帰港時間となっていた。朝日にキラキラと照らされた水面をゆっくりと割り進む船団を、優しげに細めた目で見つめているのは他ならぬカール・T・ドランジその人である。

(・・・・ま、まぁ西都の新型食物の実験試食くらいで許してあげるわ・・・)

一瞬で真っ赤に染まった顔を手で隠す摂政。どうやら怒りは2番手以下に交代したようである。

「 2日目 朝 ドキ☆2人だけの連邦エスコートツアー 」

摂政・砂浜ミサゴは意を決して顔を上げた。紳士らしくじっと待っていたドランジ氏の微笑みにくらくらしつつも、全力を振り絞って声を出す。
「・・・お、おはようございます。」
(まずはそう、挨拶、からよね!うん。声裏返ってなかったかしら?あぁ、昨日もっと早く寝とけば良かった・・・。)

またもやクルンクルン状態に突入していく摂政。
ドランジ氏はちょっと困ったような表情を浮かべつつも微笑みは絶やさず、ゆっくりと口を開いた。

「おはようございます、摂政殿。」
「は、はい!!」
「今日は、この国を案内してくれるそうだね。」
「え、いや、その・・・はい!」

思わず返事をしてしまう摂政。自分の声の大きさに驚きつつも、声を出して少し落ち着いてきたようだ。

「青海くんの話によると、1日、私に付き合っていただけるようで、光栄です。」
「そんな光栄だなんて・・・。」

もじもじする摂政。

「それでは行きましょうか。」
「・・・・・・・・・ひ、ひとつ、お、お願いしたいんですが・・・。」

まっすぐにドランジ氏の瞳を見つめる。
思えば連邦に来てから、こんなまっすぐに見つめたのは初めてではないだろうか。
胸が高鳴る音が外まで聞こえそうだ。

「どうしました、摂政どの?」
「・・・・・そ、その、摂政じゃなくて・・・ミサゴ、って呼んでもらえますか・・・?」

口の中がからからで息が詰まりそう。きっと顔はリンゴより赤いだろう。でも、ドランジさんの目を見ながら言えた。

「ふ・・・・。」

リラックスした笑みを浮かべると、ドランジ氏は手を差し出した。

「それでは、ミサゴさん。今日一日、よろしくお願いします。」
「はい!!」

慌てて手を握り返す。大きな手だ。
ゆっくりと上下させるとドランジ氏が言った。

「さっそくですが、あの水平線に見える山はなんという山なのですか?」
「え、はい。あれはですね、LOVE諸島と言いまして・・・。」

急な質問にドギマギしつつも、訪ねられたことが嬉しかったのかミサゴ摂政は笑顔でしゃべりだした。手を繋いだままのことはふっとんでしまったようだ。
摂政の話を聞きながら生き生きしだした横顔を見てドランジ氏は微笑むと、2人はゆっくりと歩き出した。一日はまだまだ長い。
ニャーロードを歩く2人を、道端の猫だけが見送っていた。

  •  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「・・・・・・・・それで続きは?」
「にゃん。これっぽちじゃ足りないにゃん。」

北都の歓楽街は今日も大盛況である。特に明日、急遽開催が決定された仮装パレードに参加すべく、人々は準備に余念がない。
そんな街を尻目に、いつもの屋台に座って青海は一匹の猫と話していた。

「なに!?まだ食うのかよ・・・。というか本当に見てきたんだろうな?」
「にゃんと!このリコさまを疑うのかにゃん!!」

この茶色の猫こそ、連邦一の情報屋として裏の世界で有名なリコである。
あらかじめ青海と虹ノはリコにドランジ氏と摂政の尾行を依頼し、夜になって酒を片手に成果を聞くつもりだったのだ。
ちなみに、虹ノはフライパンの打ち所が悪く、今日一日は絶対安静のため自宅療養中である。

「ホントにおごる価値あるんだろうな?こう、俺はもっと、アダルティックで、アレな展開を期待してるんだぜ!!」
「にゃん。地獄の沙汰もイカ次第にゃん。」
「ち。しょうがねぇな、親父、リコにイカゲソをもう一本・・・あれ?」

顔を上げると今の今までそこにいた親父の仏頂面が消えていた。
それどころか、視線を戻すとリコの姿まで消えている。ちなみにイカゲソもちゃっかり消えている。

そして青海は気づいた。既に自分が地獄の一丁目にいることを。

「・・・おうみくん♪」

背後の気配から妙に優しい声が掛けられる。吹き出る脂汗。青海は助けを求めるべく辺りを見回したが、既に気配を察してか猫の子一人いなくなっていた。

「・・・す、すいましぇーーーん!!!」
「待ちなさい!この不敬ものー!!今日という今日は許さないんだからー!!」

青海の座っていた縁台が飛んできた鉄球によって粉々にされる。一瞬早く飛びのき、脱兎のごとく逃げる青海。摂政のモーニングスターはしばらく止まりそうにもなさそうだ。
とはいえ狙いは若干、甘くされているようなので、青海も明日のパレードには参加できるであろう。

祭の夜は更けていく。明日もレンジャー連邦は良く晴れそうである。

(文責:青海正輝)
最終更新:2007年01月29日 05:03