楠瀬さんの「ぱんにゃ」にまつわるエトセトラ
知ってる者と知らない者。
時にその差は筆舌に尽くしがたいものが生じる。
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猫士からあがってきた調査報告書らしきものを確認しながら、楠瀬はため息交じりに同僚である冴木に問いかけた。
「あー。結構強いぜ、あいつ」
「へー、そうなんだ・・・って、悠さん見たんスか!?」
「見たっつーかほら、俺まーにゃんランドよく行くし。あいつとは何回か打ってるぜ」
「・・・(マジかよ!?)」
こともなげに言う冴木。
唖然としている楠瀬を尻目に冴木はなおも続ける。
「あいつはよく鳴くくせにあがらなかったり、突然リーチかけてきたり。しばらくだんまりだと思ったらいきなりあがったりで打ち筋が面白いし」
「へ?なく?りーち?・・・そいついったい何者なんだ」
「なんでもふらっとやってきた流れモンらしいよ?行き場が無いってんで大抵はあそこで人数合わせに打ってるってハナシらしいぜ」
「・・・すまん悠さん、あまりの展開に俺の脳がついていけない」
さも当然のことのように話す冴木に対し、楠瀬の頭は混乱していた。
メガネの奥の目がぐるぐるし始めている。
「ええとつまり、端的に言って『ぱんにゃ』は最近その存在が騒がれ始めたが、まーにゃんランド常連にとっては大して珍しくも無い状態まで浸透している、と」
「そそそそ」
「え、じゃあいつごろからいるのかを悠さんは知ってるの?」
「んにゃ、知らん」
あっさり答える冴木。
「俺もちょい前に仲間から『面白い奴が居る』って紹介されただけだし、何より最初は客寄せの着ぐるみ芸人かと」
「パンダだけに客寄せパンダだ、と・・・?」
「そうそれ。うまいこと言うなぁ(笑)」
冴木はけらけらと笑う。
「いやでも悠さん、パンダが麻雀打つって聞いたこと無いよ俺」
「そこはほれ、『ぱんにゃ』だから。麻雀くらい打つっしょ」
「・・・悠さんがなにを言ってるのかよくワカラネー・・・何かとんでもねーモノの片鱗を・・・」
反対に楠瀬は混乱の極みに陥ってしまったようで、頭を抱えぶつぶつと何事かつぶやいていた。
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なんでもない、政庁での一幕。
最終更新:2009年07月28日 20:50