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ジャラジャラジャラ─
─ついに始まりました…─
テレビの音と洗牌の音が響く一室で彼らは集っていた。一見ただのサラリーマン風の男に強面の男やチャイナを身に纏う女に深々とフードを被る謎の人物。フィクションノート達の麻雀大会の裏でもう一つ麻雀の試合が行われようとしていた。
「なかなか楽しそうじゃないか。」
「私達も始めましょう。」
卓のボタンを操作して牌を並べさせる。賽子もボタン操作で振る。
昔は牌は手積み、賽子も手で振る。バイニンと呼ばれた人種はそこに技(イカサマともアートとも言う) を用いて麻雀を生業としてた。そしてその技を封じるために発展したのがこの自動卓だった。
ならば、この現代に、その手の人種はいなくなってしまったのか?
いいや。彼らは今も確かに存在する。
東一局。
強面の男のダブルリーチから麻雀は始まった。
─ テェケテェン!─
─違うの~…─
麻雀が強い人間はまず牌の流れを読むのが上手い人間だと思う。こう来たらこれを切る。あれが来たらこれを切る。これが出来てくると麻雀は強くなってくる。でもこれは全体で言えば2割~3割程度だろう。残りの7割以上の【何か】に麻雀の強さはあるのだ。
【強運】筆者が足りないモノ。以前筆者はとある社長と打った事がある。結果は手も足も出なかった、と言うのが的確だ。天和(テンホー)を初めて見た日だった。自分の運とはモノが違う。この男はそんな男だった。
結局、4順目でツモあがり。ただのダブルリーチのみの手が、裏ドラが乗り跳満となった。
「いまいちだ。」
(十分だと思います)
「飛ばすなぁ。」
「次、次~」
【計算力】相手の捨て牌などから待ちを予想する。これはだいたい皆できるのだが、相手の役や手牌を計算で予想するのは非常に難しい。しかも三人分。だが、これが出来るようになったら自分の所に来る牌の確率が見えてくる。攻守共に強くなるのだ。ただし、意図的に捨て牌などで騙す人間もいるので注意が必要だが。
東3局
─おーっとここでなにやら悠さんが注射器を、プー…─
─しばらくお待ちください…─
「なーにやってんのかしら?」
「私、ヒロポン初めて見ました!」
「おっとツモ。ごっとー(500点、1000点)」
「あっ、流されちまった」
強面の男の運の流れを遮るようにフードの男が早アガリで場を流した。強面の男が伏せた手はすでに高めでテンパイしていた。
【観察力】一見わからないが、牌の細かい傷や汚れ、牌の大きさ等でガン牌が出来る。卓上以外からの情報はたくさんある。表情や仕草、声のトーン、捨て牌の強さ、そして場の流れ。自分がどう立ち回るかを決めるヒントになるのだ。自動卓になったとは言え、ぶっこ抜きやツモずらしなど技を使う人間への対処にもなる。
「突っ走るのは許さないよー」
「ちっ」
「あたしの親来た♪」
チャッ、チャッ、チャ…
─南斗乱れる時、北斗は…─
【勘】少しオカルト的な所もあると思うが、勘が異常に鋭い人間がいる。待ちを選ぶときに大抵残り枚数の多い方を選ぶ。だが、【なんとなく】残り1枚の方を選んだりしてそれが当たる時がある。三色同順を【なんとなく】で崩して振り込みを回避したりすり。【なんとなく】来そうな牌を集めてたらノーミスで四暗刻をあがったりする。後ろで見ていて一番不可解でそれでいて驚かされる。
南1局
「ロンだ。24000」
カンドラが乗り裏ドラまで乗ったリーチW南ドラ8がフードの男に直撃した。
「あちゃぁ!ドラ爆かっ!ハコでーす。」
「ドラまでは計算でませんね。」
「降りててよかった☆」
結果としてはサラリーマン風の男とチャイナ服の女は特には無理をせず、フードの男が強面の強運を変えようと四苦八苦するが運に飲み込まれてしまった形だった。
ここで切り良く(無理やり?)半荘終了したが…
─…怒涛の最終回に続くのか!?────
(空馬)
最終更新:2010年04月25日 16:13